連続強盗事件の主犯格「ルフィ」はフィリピンから指示?元刑事が、現地事情や防犯対策を解説
昨年10月に東京都稲城市で起きた強盗致傷事件で、警視庁が26日までに、強盗致傷などの疑いで実行役とみられる男8人を逮捕した。一部容疑者に対する捜査から、「ルフィ」などと称する指示役が滞在先のフィリピンからSNSを通じて実行役に指示していた可能性が浮上したことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は当サイトの取材に対し、今後の海外捜査の可能性や防犯対策について解説した。
強盗致傷などの疑いで逮捕されたのは、栃木県宇都宮市の無職葛岡隆憲容疑者(25)、東京都墨田区の職業不詳真坂怜斗容疑者(23)ら男8人。葛岡容疑者らは昨年10月、稲城市内の住宅に侵入し、家族3人の両手首を粘着テープで縛り、暴行するなどして現金約3500万円と金塊など141点、860万円相当を奪った疑い。このうち、葛岡容疑者ら3人は昨年11月の山口県岩国市の強盗未遂事件で起訴されている。
昨年から今年1月にかけて連続強盗事件が全国で広域的に発生。1月19日には東京・狛江市で大塩衣与さん(90)が自宅で強盗に遭った上に殺害された。いずれも、指示役らがSNSの闇サイトを通じて募集したメンバーを実行役とするグループによる犯行とみられている。
■逮捕された実行犯に「主犯格は誰だ」と聞いても知らない
一部の容疑者の携帯電話を解析した結果、「ルフィ」「キム」「ミツハシ」を名乗る指示役が通信アプリ「テレグラム」を通じて指示をしていたことも判明した。この「ルフィ」の電話の国番号はフィリピンに割り振られている「63」だった。
小川氏は「非常に荒っぽい手口で犯行に及んでいるということがいえる。(実行役の)手口を見ると現場で焦って動いていることが見て取れます」と第一印象を語った。
その上で、同氏は「振り込め詐欺への警戒が強くなっている中、それまでの振り込め詐欺グループが考えたのが簡単にお金を手に入れられる強盗。アポ電のようにアンケート等を装って、先に情報を仕入れ、『この家を狙う』という、これまでと同じような準備をして、手口だけが違うということだと思います」と指摘した。
さらに、小川氏は「素人の実行役は簡単にばれて捕まってしまうが、奪った金の大半を実際に手にする主犯格まで捜査がなかなかいけない。逮捕された実行犯に『主犯格は誰だ』と聞いても本当に知らない者が多い」と付け加えた。
「ルフィ」など漫画のキャラクター名を名乗る“黒幕”の主犯格はフィリピンで不法滞在の外国人などの収容所におり、そこで金を払えばスマートフォンも所有できるため、日本の実行役に犯行の指示を出していると一部で報じられた。
国際犯罪事情に詳しい小川氏は「実際にフィピンには『ビクータン』という外国人専用の収容所があり、何年も入っている外国人もいる。お金さえ払えば、エアコン付きの個室を与えられ、携帯電話も自由に使える。それは私が現職の頃からそうでした。実際、ここに入った者から日本の家族に電話があって、『数百万円送ってもらいたい』といったような連絡が入って、捕まっていた者がそのお金を払えば出られるといったこともあるので、あり得る話だとは思います」と見解を語った。
一方で、同氏は「日本の警察がフィリピンに行って捜査することはできません。できるとすれば、ICPO(国際刑事警察機構)ルートを介してになる。あとはフィリピン側がどれだけ協力してくれるか。入管の職員とお金のやりとりをし、容疑者とくっついている(癒着の)可能性は十分にありますが、日本の警察はフィリピンの警察と友好な関係を結んでいるので、そこで、どう、天びんにかけられるか?ということになる」と解説した。
■「防災アンケート」と称して電話をかけ、情報収集する手口か
防犯対策について、小川氏は「宅配業者を装って来る者には誰から誰に届けられた物なのかをフルネームで聞くこと。ドアのカギ部分に防犯シールを貼っておくと、割るのに時間がかかって音も出るので犯人は嫌がります」と説明しつつ、「ただ、今回のケースはターゲットを絞って決めてかかっているので、なかなか対策は難しい」とした。
犯行グループは情報収集をしている。小川氏は「これからですと、東日本大震災の3・11に絡めて防災アンケートと称して電話がかかってきます。最初は『防災グッズは用意していますか』などとお金の話は出さず、徐々に『緊急時に持ち出せる現金をどのくらい自宅に置いてますか。こちらが言う金額で答えてください。『50万から100万円くらいですか?』などと聞いて、家族構成も尋ねられる。そうやって強盗するのに必要な情報をあらかじめ集める手口が多い」という。
室内で強盗と鉢合わせしたらどうするか。小川氏は「絶対に捕まえようとしないこと。ガラスを割って入ってきたと感じたら、何も持たずに外に逃げてください。縛られた時は抵抗しないこと。命より大事なものはないので、その時は相手に従うしかない。そうなる前に、ドアを破るなどの音で異変に気づいたら、すぐ外に逃げられる場所を日頃から頭に入れておくこと」と呼びかけた。