人工知能は先生にバレずに、小学4年生の作文を代筆できるか? アメリカで専門家による実験

  米オープンAI(人工知能)が開発した「チャットGPT」に、知りたいことを指示すると、まとまった長文を作成してくれる。レポートなどを書いてもらうことができる。

 日本でも同じ問題が起きているだろうが、アメリカでは、大学生が作成したレポートはAIを使ったものかどうかを判定することは難しく、大学側は、頭を悩ませている。AIが作成したレポートであるかどうかを検出するAIの登場や、対面授業の教室内でAIにアクセスできない状態でのレポート作成を検討している教授もいる。AIをどこまで活用すればよいのかを巡り、アメリカの教育界は混乱している。

 ところで、このチャットGPTは、大学生やビジネスパーソンら、大人のレポートや論文を作成するだけではなく、小中学生らの年齢相応の作文も書くこともできる。先生方は、これらの作文を誰が書いたか判断することができるのだろうか。

 昨年12月26日付のニューヨーク・タイムズ電子版がユニークな実験結果を発表した。

 小学4年生のテストに使われている作文のテーマをチャットGPTに与えた。「あなたにとって、学校の昼休みがどのようなものであるかを説明してください。あなたといっしょに昼食を食べたことのない人にも、どこで昼食をとるのか、昼休みはどんな感じなのかがわかるようにしてください」というものだ。そして「小学4年生レベルの読解力で平均をやや上回るエッセイを書く。生き生きとした描写で」と指示を加えた。

  チャットGPTが生成した小学4年生の読解力にもとづいた作文と、実際に小学4年生が同じテーマで書いた作文とをまぜて、児童文学や大学教授ら4人の専門家に、どれがAIか、どれがリアルな小学4年生の作文かを見極めてもらった。これは、正答率が高かったという。

  実際に子どもが書いた作文は「私はブレース(筆者注:歯列矯正器具)をしているので、食べ終わったら、トイレに行って歯を磨く」と表現したり、昼食時間を見守る保護者のボランティアを「ランチママ」と表現したりと、普段の生活の言葉がそのまま書かれていることが見極めポイントになった。

 また、子どもの書いた作文は、書き言葉と話し言葉の使い分けが未熟なため、and やコンマを多く使うという特徴がある。このことから、AIと子どもが書いた作文の違いを見抜いた。

  子どもの心や生活によく理解している専門家の経験と感性のすばらしさといえる。

  もしかしたら、and やコンマの多用や、スペリングミスを含むように指示すれば、見分けにくかったかもしれない。ちなみに、同じ専門家に、AIとリアルな生徒による中学2年生の作文を読んでもらうという実験では、より細かい指示をAIに与えたこともあり、小学4年生の作文よりも見分けるのが難しかったそうだ。

(まいどなニュース特約・谷口 輝世子)

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