愛猫を亡くし1年半、ようやく悲しみから立ち直り始めて出会った運命の子 「お籠もり猫」が今や「ストーカー猫」に
■ガリガリに痩せた野良猫
デヴィッドくん(3歳・オス)は、神奈川県湯河原のへんぴな場所にいた。2021年5月、Aさんが犬の散歩中をしていた時、ガリガリに痩せたデヴィッドくんが助けを求めるように近づいてきた。その近辺に住む人によると、半年くらい前から姿を見かけるようになったという。
その後、Aさんは、犬の散歩をするたびにごはんを与え、6月に入ってすぐに一時保護。猫の保護団体に預けたそうだ。
■2代目の猫を飼おう!
神奈川県に住むKさんは、どちらかというと犬が好きだった。子供の頃、近所に意地悪な猫がいて、Kさんが狭い通学路を通ろうとすると、まるで猫が苦手なことを見透かしたように道のど真ん中に居座った。
「『通れるものなら通ってみなさい』とでもいうような顔で睨まれたので、猫が苦手になったのです」
ところが、結婚後ペット可のマンションに引っ越した時に、友人が「猫カフェに行ってみない?」と誘ってきた。「どんなものかしら?」と思って行ってみると、意地悪な猫は1匹もいなかった。
「みんな穏やかで、なかには擦り寄ってくる子もいてメロメロになりました。夫に話すと、『なら、猫を迎えよう』という話になり、探し始めました」
夫妻は先代猫のロイを見初めて飼うことにした。ロイくんは、2019年の大晦日に病気で旅立ち、Kさんはしばらくひどいペットロスになり、一年半くらい新しく猫を迎える気になれずにいた。
2021年6月、やっと「新しい猫を迎えてもいいかな」という気持ちになり、出会ったのがデヴィッドくんだった。
「ロイの時、後から2匹目を迎えようとしたのですが、うまくいかなかったので今度は絶対に兄弟を2匹一緒に迎えると決めていました。しかし、お世話になろうと決めていた猫カフェでは、なかなか兄弟猫に出会えなかったのです」
そこで、カフェのオーナーが、預かりボランティアのところにいたデヴィッドくんを紹介してくれた。年齢は1歳半くらいだった。夫妻は、2021年8月トライアルを始めた。
■猫アレルギー発症
デヴィッドくんはとても人馴れしていると聞いていたが、家に来るといきなり猫ちぐらにこもってしまい、ごはんとおやつの時以外は出てこなかった。寝る時は預かりボランティアと一緒に寝ていると聞いていたので、寝室に連れて行き布団に入れた。するとデヴィッドくんはKさんの顔を覆うように身体を擦り付けて寝た。Kさんは、デヴィッドくんの最大限の甘えアピール、人恋しさもあるのだろうと思った。しかし、思わぬ出来事が。
「深夜息苦しくなって気がつくと、私の目は腫れ、鼻水が止まらず、ぐちゃぐちゃになっていました。最初は気のせいだと思ったのですが、2日連続でこの状態。医師には『これは猫アレルギー発症の入口だよ。寝室は別にしないと本当に猫と一緒に生活できなくなる』と言われました。先代のロイは私の足元で寝ていたので、こうした症状は出ませんでした」
Kさんはかわいそうだと思ったが、翌日からデヴィットくんにはリビングで生活してもらった。
■ビビりだが、人が大好き
夫妻はトライアルを経てデヴィッドくんを正式に迎えたが、野良猫生活が長かったため、鼻は慢性鼻炎、歯はボロボロ、お腹も弱く回虫もいた。たびたび動物病院に連れて行かねばならず、その度にデヴィッドくんは不信感を露わにした。
「通院後3日くらいは猫ちぐらに籠城していました。その度におやつかおもちゃでご機嫌を取り、なんとかリラックスしてもらおうと必死でした。半年近く経って、やっと私の腕枕で寝てくれた時の嬉しさは今でも忘れません」
デヴィッドくんはビビり!ぐっすり寝ていても、ちょっとした物音にも反応し、部屋中をパトロールする。「大丈夫だよ」と声をかけても聞く耳持たず。納得するまでパトロールを続ける。
「ビビリの猫は人が苦手な子が多いそうですが、デヴィッドは人に興味津々。お客様が来ても隠れることはありません。見えるところから観察して、『この人は大丈夫』と思うと近づいてきます。そういうところがとても可愛いです」
今ではすっかり慣れて、ストーカー猫になったデヴィッドくん。Kさんは、「この子は預かりさんの前にも人と暮らしていたのだろう」と確信しているという。
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)