愛犬を喪い「もう犬は…」と思っていたが「写真を見たら、不思議な力が湧いてきた」 捨てられていた姉弟犬を迎え、幸せな日々

2017年6月初め、とある場所に生後一週間ほどの子犬7頭が、箱に入れて捨てられていました。この7頭はそれぞれ毛色が違ったり、顔つきが違いましたが、いずれも兄弟のようです。この子犬たちは後に保護され、保護犬の譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)に引き取られました。

そして、同団体の譲渡センターを訪れ、このうちの一頭の黒白の毛色のメスのリンちゃんを迎え入れることになったのが、新しい里親の佐和子さん。リンちゃんとの新生活をスタートさせ、楽しい日々をおくるようになりました。

■以前も同じ血が流れる親子+娘ワンコだった

佐和子さんはもともと大のワンコ好きで、過去に、パセンジーという犬種の夫婦ワンコとその実の娘のワンコ3頭を飼っていた経験がありました。この親子ワンコ3頭は、いずれも15年以上一緒に過ごしましたが、やがて3頭とも虹の橋へと渡っていきました。あまりにも寂しい思いをしたことから「もう犬を飼うのはヤメよう」と一時は考えていたと言います。

しかし、自宅近所にピースワンコの施設ができたことをきっかけに、なんとなくネットで保護犬たちをチェックするようになりました。同団体の譲渡情報コーナーにかつて飼っていたワンコと後ろ頭の模様がそっくりなワンコを見つけました。そのワンコこそが、のちに佐和子さんが迎え入れることになるリンちゃんでした。

「写真を見て、不思議な力が湧いてきた」と当時を佐和子さんは振り返ります。佐和子さんはすぐに同団体の施設を訪ね、リンちゃんと対面しました。あれだけ「飼うのはヤメよう」と思っていたのに、接してすぐにその気持ちが吹き飛び、すぐにリンちゃんを迎え入れることにしました。箱に入れられ捨てられてから約1年4ヶ月後の、2018年10月のことでした。

■リンちゃんと仲良しだった弟ワンコに会いに行ってみることに

リンちゃんを迎え入れたことで、再び幸せなワンコ生活をおくるようになった佐和子さん。時間があるときはピースワンコの施設に、リンちゃんと一緒に散歩がてら遊びに行くこともありました。

ある日のこと。同団体のスタッフから、かつてリンちゃんと一緒に箱の中に入れられ捨てられていた弟ワンコ(推定)が、別の関連施設にいるものの「いまだに譲渡先が見つかっていない」という話を耳にしました。すこぶる性格が良い一方で、トライアル先にいた猫と折り合いがつかなかったり、自分より大きいワンコや、気にいらないワンコがいると突進しがちでなかなか良い縁につながらなかったのだそうです。

リンちゃんが同団体の施設にいた頃、この弟ワンコは幼い頃からリンちゃんと一緒に写真に写り込んでおり、7頭いた兄弟の中でも特に仲良しだったと思われます。

心優しい佐和子さんは、リンちゃんの弟ワンコが、半年もの長い期間、新しい里親さんが見つかっていないことをかわいそうに思い、すぐにリンちゃんを連れて会いに行ってみようと思いました。しかし、そこで佐和子さんの旦那さんから「待った」がかかります。

「その場で、リンちゃんの弟ワンコを迎え入れることになったら大変だぞ。リンちゃんは大人しい性格だけど、弟ワンコはそうとは限らないのだし」と旦那さんは冷静でした。

しかし、この日からしばらく佐和子さんは頭を悩ませました。リンちゃんの弟ワンコのことが、来る日も来る日も頭から離れませんでした。

そこで「どんなにかわいくても、現実的に飼うのが難しそうなら、黙って帰ってくる」という相当な決意をもち、旦那さん、リンちゃんと一緒に、弟ワンコに会いに行ってみることにしました。

■リンちゃんの弟ワンコ・ロックくんも一緒に迎え入れることに

果たして、しばらくぶりに再会を果たしたリンちゃんと弟ワンコ。やはり仲良しだったようで「よー、久しぶり!」とばかりに、すぐにじゃれ合っていました。

この仲が良さそうな姉弟の様子を見て、複雑に思いながらも一度は帰ってきた佐和子さん。しかし、熟考に熟考を重ねこの弟ワンコも迎え入れることを決意。弟ワンコを「ロック」と名付け、リンちゃんと一緒に暮らしていくことにしました。

■共通の不思議な動作をするリンちゃんとロックくん

迎え入れた当初のロックくんは結構ヤンチャでした。前述の通り他のワンコに突進したり、散歩中に急に走り出したり……リンちゃんと違った激しめの行動が目立ちます。散歩中のロックくんの「急な引っ張り」によって佐和子さんは転倒し、肋骨を3本も折ってしまったこともありました。

このように同じ血が通いながらも、見た目・毛色だけでなく性格もまるで違う姉弟のリンちゃんとロックくんでしたが、しかし2頭に共通するところもいくつかありました。

まず「臆病で用心深い」ところ。2頭もテレビや掃除機が苦手で、音がすると逃げ出してしまいます。さらには自転車やバイクも苦手で、子ども苦手。散歩の途中などで子どもが「かわいい!」と言って寄ってくると、腰が引けてしまいます。

また、雨の日の散歩の際の「傘」という物が苦手で、逃げまどってしまい散歩になりません。このため、どれだけ豪雨の日であっても佐和子さんは雨ガッパを着て散歩しなければなりませんでした。

さらに、実の「姉弟」であることを感じるリンちゃんとロックくん共通の不思議な動作もありました。公園などでの散歩の際、2頭とも草原の地面にお腹をつけて脚を後ろに放り出し、匍匐前進するというもの。他のワンコではあまり見かけない動作です。

さらにリンちゃんとロックくんが公園でリラックスして遊んでいると、なかなか帰りたがらなくなり、2頭揃って地面でゴロゴロしてゴネ始めます。

そんな、似ているようで似ていなかったり、似ていなさそうでよく似ているリンちゃんとロックくんですが、佐和子さんは結果的に同じ血の複数のワンコを再び飼うことができたことで、「毎日がとにかく幸せで楽しくなった」と語ってくれました。

■「リンもロックも幸せだと感じてくれているといいな」

今年の正月過ぎ、佐和子さんは旦那さんの実家にリンちゃんとロックを連れて遊びに行きました。ワンコが大好きな旦那さんのお母さんに合わせたところ、普段は引っ込み思案のリンちゃんが、お母さんの隣にピタッと座りました。

1人暮らしで寂しい思いをしているお母さんの気持ちを察したのか、リンちゃんはずっとお母さんのそばから離れませんでした。佐和子さんはその様子を見て「犬って本当に尊い存在だ」と感動したと言います。義理のお母さんにとっても、リンちゃん、ロックくんはかけがえのない家族となりました。

佐和子さんは少し前、リンちゃんとロックくんのTシャツを作り販売し始めました。「親バカと言われてもしょうがない」と少々照れて言う佐和子さんでしたが、リンちゃんとロックくんへの深い愛情を持っているがゆえの素敵なTシャツです。最後に佐和子さんにコメントをいただきました。

「保護犬を迎えるのは、簡単なことではありませんが、日々の積み重ねで得られる信頼関係は何ものにも変えがたい大切な宝物です。これからもまだまだたくさんの笑顔の時間を一緒に過ごしていきたいと思います。リンもロックも幸せだと感じてくれているといいな」(佐和子さん)

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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