自力で立てなかった犬さん、動物病院の看護師さんが家族に→動けるまでに回復「幸せのバトンつながった」
関東近県の動物愛護センターより、殺処分に送られる犬猫を引き取り、新しい飼い主さんへと繋ぐ活動を行なっているアルマ東京ティアハイムという団体。この保護団体の尽力により、千葉・柏の動物愛護ふれあいセンターから、その命をつなぐことができた小さなワンコがいました。
そのワンコは、チワワのロンちゃん。センターにいた際は、自力では歩けず、立てないほど衰弱していながらも生き延びようと力を振り絞って過ごしていました。
■進行すると、四肢の麻痺・呼吸に影響する病気を抱えていた
同団体が愛護センターより引き取った際、獣医さんにロンちゃんを診てもらったところ、水頭症、環椎亜脱臼(かんじくつい あだっきゅう)という疾患があることがわかりました。首の第一環椎の部分の本来閉じている個所が開いており、その影響で頸椎の神経が圧迫されているようでした。
この圧迫が進むと、四肢の麻痺や呼吸に影響することも考えられ、安静な生活を過ごす必要がありました。
首に負担をかけることがとにかく危険で、散歩は首を上下に振る可能性があるため控えました。もちろん、おもちゃを与えて振り回すようになったら良くないので、これもダメ。
しばらくの間、ロンちゃんは同団体の施設で、「鳥の籠」の中にいるかのような生活をおくることになりました。
また、万一の際には緊急手術を行う必要があり、その費用はおよそ100万円。この手術をもってしても命の保証がないため、同団体ではとにかくロンちゃんの体調が回復するよう、必死にケアをし続けました。
■ロンちゃんも希望を失ったかのように映る日々
同団体は、保護犬の譲渡活動をメインに行なっていますが、こういった持病があるワンコ、シニアのワンコなどは、譲渡先がなかなか見つからないケースもあります。そういった際は、スタッフがケアし続けます。
ロンちゃんも前述のような持病があったことから、当初スタッフは「良いご縁にたどり着くのは難しいだろう」と考えていました。
他方、ロンちゃん自身も長きに続く「鳥の籠」生活の疲れからか、最初は甘えてきたのに、次第に甘えなくなってしまいました。ロンちゃんは人間のことをよく見ているワンコですが、甘えなくなったのは、ロンちゃん自身もこの厳しい生活から、希望を失いつつあったのかもしれません。
■気にかけてくれた動物病院の看護師さんが手をあげた
そんな生活をおくっていましたが、2022年夏、とある方から「ロンちゃんを引き取りたい」と手が上がりました。その里親志望さんは、かつて同団体にいた元保護犬で、チワワの豆福くんを迎え入れた方で、動物病院の看護師さんでもあります。
豆福くんは虹の橋へ旅立った後、ロンちゃんのことをずっと気にかけてくれていた方で、同団体でも安心してこの方に思いを託すことに決めました。
また、この方のお家には、他に2頭のワンコもいますが、いずれも穏やかな性格。このことも、ロンちゃんを譲渡する際の決め手の一つになりました。
■優しい里親さん夫婦、2頭の先住犬との幸せな生活をおくることに
「ロンちゃんを任せてください」……新しい里親さんはそう言い、丁寧に、そして慎重にロンちゃんとの生活を始めてくれました。2頭のワンコも優しくロンちゃんを迎え入れ、そのペースを邪魔しないように努めてくれているように映りました
また、新しい里親さんはロンちゃんの投薬治療を続け、今後ロンちゃんの体調に「もしも」のことがあれば、手術も視野に入れている、と言ってくれました。新しい里親さんとの生活にロンちゃんは安心したのか、次第に食欲も出てきて、以前よりも動けるようになったと言います。
ワンコにとって当たり前の日常ですが、ロンちゃんは長い時間をかけて、この日常を夢見ていたことでしょう。新しい里親さんの元でのロンちゃんは、かつて大事に育てられたワンコ・豆福とも似た名前「丸福」と名付けられ、今日も幸せな生活をおくっています。
同団体のスタッフは「幸せのバトンがつながって本当に良かった」と言い、そして、今後も1頭でも多くの命を紡ぐことに貢献していきたいと希望を胸にしました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)