「鳴いていたのは何かのメッセージだったの?」吹雪の中、ご飯をあげた猫が虹の橋を渡ったとは…最後に会った保護猫写真家の思い
「クロシロちゃんが虹の橋を渡りました」
クロシロちゃんこと、地域猫のテブくん。弱っているところを地域のボランティアさんが見つけ、動物病院に連れて行ったものの、重い腎臓の病気で助かりませんでした。最期は眠るように穏やかだったとか…。
そんなテブくんの死を知らされて「信じられなかった」と話す保護猫写真家の三吉良典さん。数日前に雪が降りしきる中、お腹を空かしていたテブくんにご飯をあげたときのことを、Instagram(Ryosuke Miyoshi@ryostory1124)で投稿したところ、話題を集めました。
■「あのとき無理にでも保護してたら助かったのかな??」と後悔の念…
「あのとき無理にでも保護してたら助かったのかな??
鳴いていたのは何かのメッセージだったのかな??
と…前から腎臓の病気でかなり弱っていたから仕方ない、
あなたのせいじゃないと言ってもらえるけど、
どうしても〇〇した方がよかったんじゃないか等と後悔してしまいます。」
「あのとき保護していたら…」などと、いろいろな感情がわき上がるという三吉さん。その思いに共感するコメントが多数寄せられています。
「気持ちが痛いほどわかります…。
私もよく『助けてあげて』『保護してあげて』と言われますが…
キャパ、お金、お世話の時間…
そして新しい飼い主さんが見つからなければ一生お世話しなければならない責任…。保護受け入れは、安易な簡単なことでは無い…と毎回お伝えしています…。」
「私の家の周りにも沢山の野良猫ちゃんがいて個人的に毎日餌をあげ懐かしては手術に連れて行き、を繰り返しております。
外で生きる猫ちゃんたちは過酷なのでできることならみんなまとめて おうちの暖かい所で面倒をみてあげたいのですが、なかなか難しくて頭を抱える日々です。」
「寒空の中1人でひっそりと亡くなるのではなく、
ボランティアさんに看取ってもらえた事が救いだと思いました。
優しくて凛々しい立派なクロシロちゃん。どうか安らかに…」
保護猫活動をされながら写真家としても活躍されている三吉さん。テブくんが“亡くなる”数日前のことや今の思いを、聞いてみました。
■死の数日前、地域猫にご飯をあげたが…少し寄り添ってきた後、その場を去った
--餌をあげた数日後に虹の橋を渡ったというテブくん。出会いはいつごろ?
「初めて出会ったのは5年ほど前の2018年ごろです。そのときはすでに成猫さん。毛づやなどから見て年は6、7歳くらいだったかと思います」
--亡くなる数日前に雪が降りしきる中、三吉さんの前に現れたとのことですが、どんな様子でしたか?
「1月25日、大雪が降った日です。普段はそんなに鳴いてるところを見たことがなかったのですが、この日は吹雪の中でこちらに訴えかけるかのように鳴いていました。近くに駆け寄ると馴染みのあるテブくんだったのですが、このとき足の上に乗ってきました。普段は側に来てくれたりするものの今回のように乗ってきたのは初めてです…。
とにかくすごい吹雪だったので屋根のある場所に誘導し、ご飯をあげました。通常は地域猫ちゃんを管理されているボランティアさんと漁師さんがご飯をあげますが、大雪など誰も来れない時はできる限り、動ける私がご飯をあげたりします。お腹が空いていたのかバクバク食べてくれ、その後は少し寄り添ってきましたが、一度も鳴かずに秘密の場所に戻って行きました」
--当時投稿された動画では、おいしそうに食べていましたね。元気そうでした…。
「動画ではテブくんに雪が積もっていますが、ご飯を食べた後にはらい落としました。ご飯中に触ったりすると警戒して食べなくなるためです。
初めて見てもらう人のためにわかりやすくSNSなどではクロシロちゃんと言ってますが、皆さんから『テブ』と呼ばれています。『てぶくろ』をしてるような前足から『テブ』とつけられたそうです」
■漁師やボランティアに懐いていた地域猫 子猫に寄り添う穏やかで優しい性格
--地域の方からかわいがられていたのですね。テブくんは、どんな猫ちゃんでしたか?
「性格はおとなしくて穏やかな子でした。漁師さんやボランティアさんのような心を許した人にはすごく懐いていました。猫ちゃん同士では、大体の子たちと仲良くし、特に子猫がいる時にはとても優しく寄り添っていました。
決してケンカが強いわけじゃないけど、若手のイザコザなんかは『ニャー』の一声で収めてしまう、周りの猫ちゃんが一目置く親分的な存在でもあったと聞きます。愛嬌あるお顔でとても人気者でした」
--テブくんの最期は眠るように穏やかだったとか。
「そうですね。あの大雪の辺りから行方がわからなくなっていたそうで、ボランティアさんが懸命に探して弱っているところを保護。動物病院に連れて行ってくださいましたが、腎臓をかなり悪くしていたようで、そのまま回復することなく、息を引きとったとのことです。
その後、ボランティアさんの手に抱かれ、動物の合同火葬により虹の橋を渡りました。私はその連絡を受けた夜にテブくんがいた場所にお花と温かいご飯を添え、お線香をたいて手を合わせました…」
--テブくんを含め厳しい環境の中で暮らすお外の猫ちゃんについて、どう思う?
「お外の猫ちゃんや地域猫ちゃんに対しての意見は人それぞれいろいろな意見があり、正解が何かは分かりませんが、いつかはお外の猫ちゃんたちもみんな温かいおうちの猫ちゃんになる世の中になってほしいと願っています。
最近、コロナ禍により癒しを求めペットを飼う家庭が増えたと同時に、『思ってたのと違った』『大きくなりかわいくなくなった』などの理由で犬猫を保健所へ持ち込む件数も増えているようです。ただ、こういった理由では、保健所も引き取らないようになりました。なので、保健所に引き取ってもらえないからと、山や地域猫が多い場所に遺棄するケースも目立ってきたと耳にします。
そんなあまりにも悲しいことが絶対にあってはならないので、ワンちゃんや猫ちゃんを家族に迎える時はトライアルを踏まえ、いずれは免許制にする方が不幸な猫ちゃんたちが減るのではないかと個人的には思います」
--テブくんの死を通じて訴えたいことは。
「今回の動画によりたくさんの方々にお外の猫ちゃんの生きる過酷さや生きる尊さを知っていただけました。あんな状況を撮影するという行為にすごく葛藤はありましたが、周りにどう言われても『何かを伝える』ことはできたと感じます。
最後にボランティアさんたちがテブくんに伝えた言葉を残しておきます。
『天国でゆっくりして、次はおうちの子として生まれておいでね。テブ大好きだよ』」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)