東京の百貨店で「御座候」を購入→レシートに「今川焼」の印字が…SNS騒然「内戦勃発」「これは対立を煽る工作に違いない」
ほかほかの生地の中にあんこが詰まっている円形のあのお菓子。「今川焼き」「大判焼き」「回転焼き」などさまざまな呼び方がありますが、関西、そして兵庫県民540万人は「御座候」(ござそうろう)一択ではないでしょうか。地元紙記者としては呼び名の天下統一の日を待ちわびていますが、まさか東京の地で今川焼きの軍門に下っていたとは…無念でござる。
ご存じでない方のために、御座候とは株式会社御座候(本社、兵庫県姫路市)の主力商品で、円形の型に生地を流し込み、赤あん、白あんを挟んで焼いた和菓子です。「お買い上げ賜りありがたく御座候」の意味を込めたこの商品は、おやつに土産、来客のもてなしに年間約5000万個を売り上げるそうです。北海道・十勝産の小豆を本社工場であんこにして全国の店舗に直送、お客さんの目の前で手焼き。首都圏に百貨店にも出店攻勢をかけています。それなのに…。
「「御座候」の東京制圧拠点は、今日も盛況であった。ふふふふ…洗脳されるがよい。………って、なんじゃあ、このレシートの書き方は!!!」と由々しき事態を報告したのは、大阪生まれの鉄道ライター、土屋武之さん。自身のアカウント(@twins_tsuchiya)で公開した御座候の店舗や商品写真の後に示された「TOBU池袋店」のレシートには「今川焼2個」。東武百貨店さん、違います。それは今川焼ではありません、御座候なのです。土屋さんに聞きました。
ーやはり東京では苦戦しているのでしょうか
「私はこのタイプの和菓子はすべて御座候と呼んでいます。関西出身者も多く住んでおり、御座候の名前はかなり知られているのではないのでしょうか。ただ東京都内には3店舗なので、それ以外のお店はおおむね「今川焼き」と呼んでおり、皆さんもそちらの方が親しみがあるはずです」
ー「御座候」を買ったのにレシートに「今川焼」と印字されているのに気づいたときは
「レシートを見た感想は、『あ、やはり関東では今川焼きとしか呼ばないのだな』です。関東系の百貨店のテナントですし、経理上も「今川焼き」の方がわかりやすいのだろうなと。店名の「御座候」と商品名が同じなので、そちらを考慮したのかもしれませんね。関東暮らしも長い(約25年)ので、こちらのやり方にも慣れている部分もあります。郷に入れば郷に従え、です」
■地域で呼び名が違うナゾ
大阪ガスのサイト内の「関西のギモン、調べます 炎の探偵社」では調査ファイル95で「御座候?大判焼?地域で違う「回転焼」の呼び名のナゾ」をリサーチしており、回転焼の名称について調査研究したという方言学が専門の奈良大学文学部教授の岸江信介さんの見解を紹介しています。記事では、北海道は「おやき」、首都圏は「今川焼・大判焼が混在」、京都を除く京阪神は「御座候・回転焼が混在」といった勢力図が示されています。
記事によると、昭和31~33年ごろ、愛媛を舞台にした「大番」という小説がベストセラーになり、そこから着想を得た愛媛の松山丸三という会社が、従来よりサイズをひと回り大きくした回転焼を「大番焼」と名づけ、それを焼く機械を販売しようとしたそうです。岸江さんは「同社は小説のタイトル「大番」をそのまま使用するのでは芸がないと考え、大きなサイズ(判)という意味の「大判焼」に名称を変更。これが評判となり、(大判焼の呼び名が)日本全国に広がったのです」と解説しています。
ニチレイフーズによると、今川焼を最初に売り出したのは、江戸時代の神田今川橋付近(現在の東京都千代田区鍛冶町)にあった店といわれています。地名も今川だったため、そのまま「今川焼」となったそうです。なお今川橋は現存しませんが、現在も今川橋交差点という名称はあります。
呼び名に歴史ありドラマあり。土屋さんのツイートがユーザーの郷土愛に火をつけたのでしょうか。「待てえぇぇえい!!!(名前名前!)」「札幌に進出したら『御座候のおやき』と言われることに…」「内戦やまぬヒョーゴスラヴィアに外から新たな火種が」「東京の御座候でも、赤・白で通じるんやろうか」など熱いコメントが噴出。
土屋さんは「御座候のような和菓子をどう呼ぶか、やはり地域ごとのこだわりは強いなと感じました。ネットミームとしてSNS上で話題になっていることは知っていましたが、皆さんが興味があるのだなと感心しています」と話しています。
東京都民の皆さま、兵庫県民のソウルフード、御座候をよろしくお願いします。1個110円(税込み)。
(まいどなニュース・竹内 章)