「うちで歌手デビューしませんか？」。バーチャルYouTuber（Ｖチューバー）に届いたスカウトメールをきっかけに、怪しい電話がかかってきました。

Ｖチューバーとしても活動する漫画家の玉川ユキ（@tmgwxxxx）さんが恐怖体験を漫画にしました。夢を追う若い人を狙った悪質商法の可能性もあるといい、「少しでも被害防止につながれば」と漫画を描いた玉川さんに聞きました。

■「あなたを名前で呼びたいから」と執拗に本名尋ねる

漫画家の玉川ユキさんはVチューバー「サブカルJC Vtuber玉川くもり」（@dgmgxkmr）として活動しています。

Vチューバーは、CGキャラクターを動かして動画配信を行う配信者のことで、「サブカルJC Vtuber玉川くもり」は、漫画やアニメ、映画といったサブカルチャーが好きなJCのVチューバーとして動画を配信しています。

Vチューバーとして活動していると、Twitterに「うちの事務所に所属しませんか」「うちで配信しませんか」「うちのアプリ使いませんか」といったさまざまな勧誘メールが届くといいます。ある日、玉川くもりさん宛てにある音楽事務所から「うちで歌手デビューしませんか？」とお誘いが来ました。

LINEの連絡先を交換すると、「通話しましょう」といきなりLINE通話が掛かってきて、異様な声質の人物から「本名はなんですか？」「住所とお電話番号をお答えいただきたい」と個人情報をしつこく尋ねられました。

一方、相手は玉川くもりさんの活動について把握しておらず、不気味さを感じた玉川さんは「今回は無かったことにさせてください」と電話を切りました。

ーー本名、電話番号、住所を執拗に聞いてきたとのことですが、そのような個人情報が必要な理由については説明を受けられましたか。

「執拗に個人情報を聞く意図を尋ねましたが、『必要なことだから』『あなたのことを名前で呼びたいから』という返事しかいただくことができませんでした。

また、スカウトしてきた方が名乗らなかったため、『私もあなたの名前を知らないのですが…』と尋ねたところ、『私は………田中(仮名)です』というように、考えているような間を置いて苗字のみの回答がありました」

■ボイスチェンジャー？女性の声なのに、反響音は男の声

ーー異様な声質の通話だった。

「『ボイスチェンジャーを使っている』と感じるような悪い声質でした。

若い女性の声なのですが、反響音が男性の声でした。『よく響く部屋で、男性がボイスチェンジャー越しに通話し、女性の声に変換しているけど、同時に変換しきれなかった男性の反響音も聞こえている』という印象を受けました。

異様な声質について、相手の方は『PCでの通話だから音質が悪いのかも』と言っていました」

「一体どういう意図のスカウトだったのか疑問に思い、調べたところ、『オーディション商法』という、夢を追う若者を搾取する悪徳な商売があることを知りました。

それがあまりにも卑劣な手段で、とても許し難いと感じ、『オーディション商法という詐欺があることや手法を広めることで、一人でも被害者を減らせれば』と思い、体験談を漫画にしました。

漫画を見た方から、『私も今こういったスカウトを受けていて、契約しようと思っていたのですが…』という相談のDMもいただきました。その方も怪しいスカウトを受けていたようで、『怪しいので契約はしない』と言ってくださり、漫画を描いてよかったと思っています」

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顔や本名を明かさず活動ができるVチューバーですが、「歌手デビュー」など甘い言葉で勧誘し、お金を巻き上げる悪質商法。難を逃れた玉川さんは「少しでも、夢を追う若者への搾取被害が減ればと思っております」と話していました。

（まいどなニュース・伊藤 大介）