「冬休みの間だけだからな」と保護したが情が移って…通いの地域猫 幸せな「にゃん生」をつかむ 今では愛されるギャラリーの看板猫に

 鹿児島市の繁華街・天文館の端にある名山(めいざん)町は、古い建物をリノベーションした飲食店などが路地に点在し、レトロと新しさが混ざった人気のエリア。その一角にある小さなギャラリー「ポランカ」は、オーナー・ゴローさんの優しい人柄に惹かれたアーティストたちが数多く集う。ゴローさんいわく「ここはそれぞれの思いを告白する場所」。そんなギャラリーで、出入りする人たちを癒しているのが愛猫の「シャミンスキー」(オス、推定10歳、愛称シャミ)だ。元々は通いの地域猫だったシャミンスキーを保護した経緯やギャラリーのことなどについて、ゴローさんに聞いた。 

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 シャミと出会ったのは4年前の12月上旬。突然、この界隈に現れ、うちのビルの前で日向ぼっこをしていてね。成猫で、出会ったときから不妊(去勢)手術を済ませた印が耳に入っていたから、別の場所で地域猫として生きてきて、何があったかはわからないけど、ここにたどりついたんじゃないかな。

 すごく人なつこい子でね。私やお客さんと一緒に建物内に入ってきて、足元ですりすりしたりしてた。外暮らしで体は汚いし、最初は追い出していたんだけど、何度追い出してもまた入ってくる。中には膝の上に抱っこして可愛がるお客さんもいたよ。

 当時は通い猫。1日の営業が終わると、シャミをビルの外に出して帰るんだけど、車を停めている近くの駐車場まで、私の後ろをついてくるんだよ。そのたびに「また明日な」と言って別れていた。夜はどこかにねぐらがあったんだろう。で、朝出勤すると、またビルの前で待ってる。建物の中は暖かいし、優しい猫好きのお客さんも多いから、ここが居心地よかったんだろうね。

 そうして2週間ほどが過ぎ、年の暮れが近づいてきた。年末年始、ギャラリーは休み。年内最後の営業が終わって鍵を閉めたとき、シャミにこう言った。「おまえ、どうする?明日から寒いぞ」って。

 私は実家で、小さいころから猫をはじめ、いろんな動物を飼ってきたんだけど、長年可愛がっていた子が死んで別れるときがいつもすごく辛いから、大人になってからは、なかなか動物を飼う気になれずにいた。

 だけどこのとき、こんな寒いのにこの子をこのままにして帰ったら死んでしまうかもしれないと思うと、放っておけなくなって…。「冬休みの間だけだからな」と言って保護し、車に乗せて自宅に連れて帰ったんだよね。汚れた体を拭いてあげたり、病院へ連れていって検査したりしていたら、もう情が移ってしまってね(笑)。自宅でずっと一緒に暮らすようになり、時折ギャラリーにも連れてくるようになったんだ。

■「ギャラリーは自らの気持ちを告白、吐露できる場所」

 ギャラリーは展示したい人に安価で貸し出してる。たとえば「学生時代、すごくいじめられて苦しんだ体験を表現したい」とか「どうしてもこれを伝えたい、見てほしい」とか、熱い想いを持ってる人は大歓迎。ここでは有名、無名は関係なし。たとえ作品が稚拙だと周囲から言われても「これを表現したいんだ」という魂からのものであるなら、ぜひここに持ってきて、飾ってほしい。

 20代のころ、アーティスト仲間たちとよく話していたのは「町には、自分の気持ちを告白できる場所が1つくらいないとね」ということ。たとえば学校だったら好きな人に告白できるような体育館の裏とか校庭の隅の立派な大木とかがないといけないし、屋上への鍵は開いていないといけない(笑)。自分たちが暮らしている町に、1ヶ所くらい自らの気持ちを告白、吐露できる場所がほしいよねって。うちのギャラリーはそういう所なんだよね。

 朝、自宅を出るとき、シャミが来たそうにしたときだけ一緒に連れて出勤するので、毎日必ずここにいるわけじゃないけど、最近、シャミはお気に入りのカゴの中で1日中寝てることが多くなった。ご飯や寝床がちゃんといつもあるから安心なんだろう。昔みたいに自分からすりよってくることはなくなったけど、なでられると幸せそう。ここに集まってきてくれるアーティストたちに癒しや元気を与えてくれていると思う。

 私にとってシャミは、飼い猫というより、たまたま彼の「にゃん生」と私の人生が交わっていま一緒に暮らしている、互いに対等な「同居人(猫)」という表現が一番しっくりくるかな。

【施設名】ギャラリーと喫茶「ポランカ」

【住所】鹿児島県鹿児島市名山町8-8 Little Bird2~4F

(まいどなニュース特約・西松 宏)

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