すべて猫が登場する「すべらニャイ話」!?…猫好き落語家らが「猫の日落語会」 みんな大笑いニャン

上方の猫好き噺家さんとお囃子さんが、2月22日の「猫の日」に合わせて、猫が登場する演目を披露する「猫の日落語会」が天満天神繁昌亭で行われた。

■この日のためにつくられた新作あり、古典落語の改作もあり

2月22日はニャンニャンニャンの語呂合わせで「猫の日」。猫好きのためのイベントが日本中で行われている中、大阪の天満天神繁昌亭に、猫好きの噺家さんとお囃子さんが集合。落語好きのお客さんはもちろん猫好きのお客さんも集まって、猫が登場する落語を楽しんだ。

天満天神繁昌亭は、大阪の企業や一般市民からの寄付で建設され、上方で唯一の落語の定席として2006年9月にオープンした。

参加した噺家さんは、出演順に月亭天使さん、笑福亭飛梅さん、桂しん吉さん、桂米紫さん、桂佐ん吉さん、月亭遊方さん。そして、お囃子の勝正子さん、はやしや香穂さん、はやしや福さんの3人。

演目は猫が主役か、必ず猫が登場する。飛梅さんの「縄張り」はオリジナル、しん吉さんの「親子猫」は古典落語の「親子茶屋」をモチーフに猫が登場するストーリーに改作、遊方さんの「くっしゃみロッカー」も同じく「くっしゃみ講釈」の改作だ。天使さんの「ねこ盗人」も初めは「子盗人」を改作するつもりで書き始めたそうだが、天使さん曰く「時代背景を現代に置き換えないと喋りにくいかなと思ったんですけど、最近は強盗事件のニュースが多いでしょ。笑いに来てくださるお客様に、いやなことを連想させてしまうと思って、オリジナルでつくりました」。

猫落語とは、どんな内容なんだろう。すべてを再現することはできないため、天使さんが演じた「ねこ盗人」のあらすじをご紹介する(主催者許可済)。

   ◇   ◇

【ねこ盗人(月亭天使)】

彼氏と婚約中の女性が「彼氏が浮気して、部屋に女を連れ込んでいるみたい」と、後輩の女性に相談している。

彼氏に電話をかけたとき、電話の向こうで物音がして、彼氏が「まるこ」と女の名前を呼ぶのを聞いてしまったというのだ。

後輩は「別れたほうがいいですよ」というが、とにかく彼氏に貸しているものを返してもらおうと、彼氏から預かっている合鍵で部屋に入る。

そこで最初に目に入ったのは、フリルのついたピンクのクッション。そしてピンクのブラシ。ほかにも独り暮らしの男性には不自然で、女性の存在を匂わせるものを次々に見つけていくと、押し入れから物音が…。

「もしかして、ゆうべからこの部屋にいて、私が入ってきたから慌てて隠れた? 出ておいで!」と押し入れの扉を開けると、猫が「にゃ~」と出てくる。

そこへ帰ってきた彼氏。猫を「まるこ」と呼んで、浮気の疑いは晴れた。猫なで声で「まるこ」をかわいがる彼氏。2人で行く約束をしていた旅行をやめようという。

「この子をひとりで留守番させられへん」

さらに、猫を置いておけないから、新婚旅行も結婚式もやめようといい出す。

「俺、この子に恋心を盗まれたみたい」

あまりの溺愛ぶりを見て、

「別の女がいたわけじゃないけど、失恋した気分やわ。このドロボウ猫め」

というオチ。

   ◇    ◇

天使さんは、これを「昨日1日で書いた」という。つまり、猫の日落語会の前日に出来上がったばかり。

「稽古をする暇がなかったでしょう」と尋ねたら「自分で書いたから、頭に入っています」とのこと。それでも「今日初めてやるし…」とやや不安そう。だが演じ始めると、やはりプロの噺家さん。ほぼ満席に近い客席は、終始笑いの渦に包まれていた。

■猫好きばかりを集めて、猫愛にあふれた会を

第1回として開催された前年に、上方落語協会が主催する「天神寄席」の一環として、猫が登場する古典落語を集めた落語会が開催された。

「そのとき出演した月亭遊方兄さんが、無類の猫好きなんです。猫好きばかりを集めて、もっと猫愛にあふれた会を自分たちで開催したいとの思いから、自らリーダーになって猫好きの噺家に声をかけて、今の形になりました」

こう話してくださったのは、出演者のひとり桂米紫(べいし)さん。

「出演者はもちろん、お囃子さんもお茶子さんも全員、猫を飼っているか、以前飼っていたメンバーで構成されています。演目も毎回、古典を猫落語にアレンジした改作か新作をつくるかして、新しい演目をお届けするよう心がけています」

改作も新作も基本的に、演じる噺家さん自身の創作だという。それが定着して、持ちネタになることもあるそうだ。

今年は、猫グッズを製造販売する「neuneko(ねうねこ)」とコラボして、噺家さんたちが飼っている猫をプリントした組み立て式のキャットボックスが高座に置かれたり、お客さん全員に猫グッズがプレゼントされたりして満足度もアップ。

「過去には横浜にぎわい座に2回、去年の2月は神戸新開地喜楽館で『猫ウィーク』として1週間の昼席興行をさせていただいて、今年も2月27日までやっています。11月には名古屋の大須演芸場で行われた『勤労にゃんこの日』に遊方兄さんと私(米紫)が参加しました」

米紫さんによると、猫の日落語会は、来年以降も続けるつもりだという。さらに、繁昌亭での公演をベースに、猫落語で全国を回るのがこの落語会メンバーの夢だそうだ。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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