2度も飼育放棄 異臭漂う家で震えていた犬 ハワイ語の「幸せ」の名前もらい、3人目の飼い主さんの愛を一身に

■飼育放棄された犬と猫

レアくん(4歳・オス)は、飼い主の夫婦に飼育放棄された。夫婦の夫は服役し、妻は心を病み実家に帰ってしまった。もともとは、この夫婦の知り合いが4匹の犬を飼っていたのだが、「飼いきれないから保健所に連れて行く」と言うので、夫婦が4匹とも引き取ったという。

2021年5月、岐阜県で個人で保護ボランティアをしているちあきさんに、実家から電話があった。「夫婦がいなくなった家から異臭がするという苦情があり、見にいったら犬と猫がいた。このままだと殺処分になってしまう。引き取れないか」ということだった。ちあきさんは夫と一緒に現地に行ってみた。

「家の中は糞尿まみれ。締め切った家の中は暑く、水が入っていたバケツは、水が腐ってドロドロになっていました。猫は近所の人が引き取ってくれ、犬4匹は私が連れて帰りました。レアくんは一番若かったのですが、ケージの隅で震えて固まり、1週間も何も食べませんでした」

ちあきさんは既に3匹の犬を飼っていたので、グループラインを使って仲間と一緒に里親を探した。岐阜県に住む山田さんの夫は、会社で偶然、犬たちの里親を募集しているという話を聞き、山田さんにLINEしてきた。

「小型犬の里親を探している人がいるけど、興味ある?」。そう聞かれた山田さんは、「もちろんある」と即答した。

「以前飼っていた柴犬を亡くしてからもう犬は飼わないと思っていました。子どもたちが手を離れ、寂しくて柴犬を探したこともありますが、値段や維持費のことを考えると気が進まず、そのうち夫婦二人の生活にも慣れてきました。でも、ある日、黒いプードルを飼う夢を見て、それからプードルを探したのですが、ネットで検索すると値段が40万円もして、流石に手が出せないと思いました。その矢先のことでした」

■夢で見た子だ!!

山田さんは送られてきた写真を見た瞬間、「夢で見た子だ!!」だと思って鳥肌が立った。その子がレアくんだった。

「勝手に『これは運命。絶対うちの子になる』と確信したのですが、もう1匹の白い犬とレアを2匹一緒にもらってくれるという人がいたので、先にその人がトライアルをすることになりました。縁がなかったと諦めました」

しかし、トライアルに出す日の朝、2匹が大喧嘩をして、いつもはやられっぱなしだったレアくんが反撃して、白い犬に怪我をさせた。里親希望者は白い犬だけ譲渡してほしいと言った。

「そうして、私のところに再びレアの話が舞い込んできました。『他の犬に比べて人間不信が強く、扱いが難しいから合わなければ返してもらっていい』ということでした。私は、『それはかわいそう』だと思い、『公園で顔合わせをして大丈夫そうならトライアルなしで迎える、何があっても最後までうちの子として面倒をみる』と宣言しました」

6月6日、レアくんは顔合わせをして、山田さん宅に迎えられた。この時、レアくんは3歳。ガリガリに痩せ、体重は2.3kgしかなかった。

2回も飼い主が変わってからちあきさんにレスキューされて、山田家に来たレアくん。すっかり分離不安になっていた。トイレにもお風呂にもついてきて、片時も山田さんのそばを離れない。山田さんは、「まずこの家で安心してもらえるようにしよう」と思った。仕事も1週間休んで信頼関係を築いた。留守番は最初はケージで1時間半から始め、6時間くらいできるようにしたそうだ。

「今では私の姿が見えなくても、気楽に、気ままに過ごしています。偏食もひどかったのですが、いろんなフードを試したり、手作りのご飯を与えたりして、やっとドッグフードを食べてくれるようになりました」

■願いを込めて付けた名前

性格は内弁慶。家ではパパをタックルするくらいやんちゃだが、外では大人しくて、全く吠えず、存在感を消す。椅子に飛び乗るつもりが、飛びすぎて反対側に着地したり、風呂蓋が開いているのに、蓋に乗ろうとしてお湯の中にドボンと落ちたり、お茶目なところもある。テレビの「ただいま」というセリフに反応して、玄関までパパを迎えに行くこともあるなど、笑いを誘うネタにキリがない。

「レア」はハワイ語で、「楽しみ、喜び、幸福、希望」という意味がある。

「名前通りの犬生を送ってくれていますし、私たち家族もレアから幸せをもらっています。かけがえのない存在。レスキューされるまでよく生き延びて、うちの子になってくれて有難うと思います」

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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