「エスカレーター歩行禁止」なぜ条例化? 名古屋が政令市で初の制定へ 過去のアンケートでは賛否両論
「エスカレーターでは立ち止まらなければならない」。そう義務付けた条例案が2月、名古屋市議会で提出されました。3月7日にも可決される見込みで、制定されれば埼玉県(2021年)に続いて全国2例目、政令市では全国初になります。条例化については「条例にすれば安全に利用できる」「そこまでしなければいけない話なのか」などさまざまな声があります。
名古屋市によると、2021年度にエスカレーターで利用者が転倒するなどして、市消防局救急隊が出動した件数は133件。「誤った使い方をすると危険な乗り物になることを啓発する機会にしたい」と担当者は話します。条文には「利用者は、右側か左側かを問わず、エスカレーターの階段上に立ち止まらなければならない」と明記されています。埼玉県と同様に罰則は設けておらず、周知の意味合いが強いものと言えるでしょう。
単に転倒するリスク以外にも、歩いたり走ったりすることには危険が伴います。日本エレベーター協会によると、走る際の衝撃で安全装置が作動して緊急停止するおそれも。また、急いでいる人のための「片側あけ」によって、片方の手が不自由な人が手すりにつかまれなくなるデメリットもあるといいます。
調査会社の日本トレンドリサーチは、2021年の埼玉県の事例を受けて全国の男女1400人を対象にアンケートを実施。「あなたの住んでいるところでもエスカレーターでの歩行を条例などで禁止してほしいと思いますか」という質問には、「禁止してほしい」が50.5%、「してほしくない」が49.5%と真っ二つに分かれる形となりました。公的な禁止については抵抗感を示す人も多いようです。
賛成意見には
「危険が伴うのでちゃんとした条例があった方が周知できる」
「全国的なルールがなく地域によって乗り方が違ったりする。ある程度共通化してほしい」
反対意見には
「少しでも歩いたらいけないのか、どの程度歩くのはいいのかなど決めきれるものではない。条例ではなく注意喚起で良いのではないかと思う」
「急いでいる人もいると思うし、歩いてもそこまで危険はないと思う。規制は難しいのでは」
といった声が挙がりました。条例化の動きはさらに広まっていく可能性もあります。安全な利用のためには、行政の丁寧な周知と住民側の理解が求められそうです。
(まいどなニュース・小森 有喜)