40代女性の40% 月経痛や過多月経招く子宮筋腫 患者さんに合わせた最良の治療法を 

子宮筋腫は月経痛や過多月経の原因となる疾患です。子宮筋腫とは子宮にできる丸い筋肉の塊で良性の腫瘍です。悪性のこともありますが、それは非常に稀です。筋腫は小さいものを入れると30代の女性の30%、40代女性の40%にあると言われています。筋腫があってもこれといった症状のない人も多いのですが、月経痛や月経血の増加とそれによっておこる貧血、だらだらと長引く月経などに悩まされる方が多いのです。症状がなければ経過観察だけでよいのですが毎月の月経に悩まされるようになれば治療が必要です。

以前は、筋腫の症状がひどくなれば手術をして子宮を取るか筋腫を核出するしか治療法がなかったのですが、近年は症状を緩和する薬や手術以外の治療法も発達し、手術の方法も腹腔鏡や子宮鏡を用いる開腹をしない手術が増えてきました。どのような治療が良いのかは患者さんの年齢、筋腫の大きさやできている場所、妊娠の希望があるか無いかなどによって変わってきます。主治医に相談することが大切です。

■多忙な25歳の会社員

Mさんは25歳の会社員です。半年くらい前から経血が増えて痛みもひどくなり、鎮痛剤が効かなくなってきました。会社は忙しくて休みを取りづらく無理をして働いています。超音波検査で3センチくらいの筋腫が2個あることが分かりました。

彼女は低用量ピルを選択しました。ピルを服用すると2カ月で経血が減少し、痛みも服用前の30%くらいになり勤務に支障がなくなりました。Mさんは2年以上ピルを続けています。ピルには筋腫を小さくする作用はないので筋腫は少しずつ大きくなっており、いずれ筋腫を取る手術が必要になると思いますがしばらくはピルで経過をみるのが彼女の希望です。

■逃げ込み療法を選んだ51歳のYさん

51歳のYさんは喫茶店を経営しています。数年前から月経痛、過多月経に悩まされており、病院を受診し子宮筋腫が多数あると言われ、手術を勧められました。しかし入院すると店を閉めねばならず、自営業のYさんにはつらい選択でした。51歳といえば閉経までの時間はそれほど長くありません。月経を止める薬剤を使ってなんとか閉経まで持ち込めば筋腫はある程度小さくなります。

このような治療法を『逃げ込み療法』といいます。店を閉めたくないYさんは逃げ込み療法を切望しました。そこで彼女にはGnRHアゴニストという注射をすることにしました。この薬は薬剤によって女性ホルモン分泌を抑え閉経に近い状態にすることで無月経になり、筋腫を縮小します。しかし女性ホルモン低下によってホットフラッシュや肩こり、うつ状態など更年期症状が現れることがあります。更年期症状にたいしては極微量の女性ホルモンを補ってあげれば症状は緩和します。幸いYさんはそのような副作用もなく無月経になりご機嫌な毎日でした。

でも、この薬は長期に続けると骨が弱くなるため、半年しか健康保険が通っていないので一旦は中止しなくてはなりません。「楽やったのに、1年くらい続けたいわ」とYさんは残念がりました。薬を辞めると2カか月くらいで月経は戻ってきます。半年ほどして再度GnRHアゴニストを半年投与、これを繰り返してYさんは閉経まで逃げ込みました。

■漢方薬という選択も

Oさんは44歳の主婦です。半年前から月経痛がひどくなり当院を受診しました。超音波検査で5センチくらいの筋腫を認めました。Oさんは様々な選択肢のなかからとりあえず漢方薬を試してみたいとの希望でした。私は彼女に桂枝茯苓丸加薏苡仁をお勧めしました。漢方薬を服用して2カ月くらいで月経痛は半減しました。

このまま漢方薬による治療を希望しておられますが、漢方薬によって筋腫が縮小するとはいえないのでいずれ手術が必要になるかもしれません。彼女がこの薬を気に入ったのは月経痛の軽減以外に美肌効果があったからで漢方薬には他にも頭痛や冷え性の改善などおもわぬ副効用がよくみられます。

多くの選択肢の中から自分のライフスタイルに合ったものを主治医と相談してみて下さい。 

◆川口 惠子 神戸大学医学部卒、神戸大学医学部大学院卒、医学博士。神鋼病院産婦人科部長を経て平成13年より川口レディースクリニック院長。趣味はコンピューターグラフィックスと英会話。いずれも才能も情熱もないため全く上達せず。

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