2人ともメガネ着用、しかも名字末尾には「井」の文字が!? 「男性ブランコ」浦井と平井・名字のルーツ

昨年末の「M1グランプリ」で決勝まで進み、惜しくも4位となってファイナルステージに進めなかった芸人「男性ブランコ」。2021年の「キングオブコント」でも準優勝している実力派のコンビだ。

ツッコミの浦井悟弘とボケの平井勝晶という、滋賀県の大学生時代に知り合ったコンビで、2人とも末尾に「井」がつく名字である。

「井」というと井戸を想像する人が多いが、今でも残っているような井戸が広く普及したのは江戸時代以降のこと。それより古い時代では、川や湖などで水を汲むのが普通だった。

そして、古い時代には「井」という言葉は生活に必要な水を得る場所全般を指していた。川などの水汲み場だけではなく、田んぼに水を引くための用水路なども「井」である。こうした場所は全国各地にあったことから、各地で多くの「井」のつく名字が生まれた。

それでは、男性ブランコ2人の名字を見てみよう。まずはツッコミの「浦井」。

『日本国語大辞典』(小学館)をみると、「浦」とは「海、湖などの湾曲して、陸地に入り込んだ所」とある。本来は地形から来た言葉で、入江や湾などを指した。ここから、平地で水田をメインとする「里」に対して、海辺や湖の周りにある漁村を「浦」というようになった。

漁村には用水路は少ないので、「浦井」とは漁村にある水汲み場であろう。日常生活では海水は使いづらい。水道のない時代、漁村では真水を得られる場所は貴重で、そこを「浦井」と呼んだに違いない。そした場所をルーツとするのが「浦井」である。

現在「浦井」という名字は関東と関西に多い。関東では茨城県に、関西では京都府と兵庫県に多く、浦井悟弘は京都市伏見区の出身。この付近には昭和初めに干拓されるまで巨椋(おぐら)池という大きな湖があり、漁が盛んに行われていた。つまり「浦」があった場所である。

一方、ボケの「平井」。「ひら」とは平らな場所のことで、水汲み場にしろ、用水路にしろ、水を引くところは平らな場所である。ただし、平地では平らなのは当たり前なので、平地でないところにある平らな場所を、「ひら」と呼んで区別したものが多そうだ。

こうした場所は全国各地にあり、現在も「平井」という名字は沖縄を除いて全国にまんべんなく分布している。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。

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