10トンの土「よいしょ!よいしょ!」と突き固め…力士ら手作業、相撲の「土俵」ができるまで 大阪場所に備えて稽古場づくり

大相撲三月場所、いわゆる大阪場所に備えて、大阪のあっちこっちで各相撲部屋が宿舎と稽古場を構えるべく、準備が進められている。大阪市東住吉区には3つの部屋が宿泊する。そのうちのひとつ放駒部屋の稽古場になる施設で、土俵づくりを見学した。

■稽古用の土俵…4時間ほどで完成

地域コミュニティの福祉会館に、土俵がつくられた。大相撲三月場所(大阪場所)で大阪に逗留する放駒部屋のために、大阪市東住吉区の今川地域活動協議会(地活協)が提供した施設だ。

放駒部屋は、師匠(部屋持ち親方)・放駒新さんほか親方3名、力士8名、行事2名、呼出2名、床山1名で、東京都足立区にある相撲部屋。放駒親方が大阪場所での逗留先を探していることを知った会社経営者の知人が、自身の地元今川の地活協に「協力できないだろうか?」と相談を持ちかけた。地活協では「地域活性化の一助になるのでは?」と話し合い、地元住民の了解を得て宿舎と稽古場を提供して全面協力することになったのである。

放駒部屋の稽古場所になったのは、東住吉区今川(いまがわ)にある今川福祉会館。この周囲には桜の並木があって、春には見事な桜の回廊ができる。今回は桜の季節には早かったが、梅が満開を迎えていた。

この会館の出入り口前のスペースに、稽古用の土俵がつくられる作業の一部始終を見ることができた。

2月下旬には、すでに土が運び込まれていた。土俵の土は、本場所用はすべて、埼玉県川越市で採れる荒木田土が使われる。本来なら稽古用の土俵も荒木田土でつくることが望ましいが、輸送コストを考えると今回は入手が難しかったとのこと。その代わりとして、兵庫県加古川市から、性質が荒木田土に近い土が約10トン運ばれた。

3月3日午前9時、土俵づくりの作業が始まった。土俵づくりを行うのは「呼出」で、大阪での逗留を準備するため先に大阪入りしている若手力士たちも作業を手伝った。

最初の作業は、土俵をつくる面を水平にならす。タコと呼ばれる道具を使い「よいしょ、よいしょ」と土を突き固める。

あるていど固まったら中心を取り、細いロープをコンパスのように使って、土俵の規格である直径4.55メートル(15尺)の円を描く。

次に、円の中心から外側へ向かって、鍬を使って土を寄せ、円の外側へ盛っていく。正式な土俵は俵を円形に埋めたり、東西南北の4カ所に「徳俵」と呼ばれる出っ張りを設けたりするが、この土俵では俵も徳俵も埋めずに円形に整えるという。

大きめの石はあらかじめ取り除かれているが、土を寄せている最中にも小さな石ころがよく出てくる。稽古の際には危険なので、小さな石も見逃さず取り除きながら作業が進められていく。

円を描く、土を周囲に寄せるなど、行程の区切りごとに土が突き固められ、次第に土俵の形が現れてくる。

いよいよ仕上げ段階に入ると、土俵と周囲の全体を突き固めて、最後に白ペンキでしきり線を描く。午前9時に作業を開始して、途中20分程度の休憩をはさんで午後1時頃に出来上がった。ちなみに、本場所の土俵は、3日間かけてつくられるそうだ。

土俵づくりの様子は地域の人たちに公開され、入れ代わり立ち代わり見学者が訪れていた。また、この土俵は、大阪場所が終わった後もしばらく残されるという。

地活協の上田孝会長によると、3月中は子供が参加する地域のイベントに活用し、そのあと解体するという。約10トンもある土は、どう処理するのだろう。

「土嚢袋に詰めて、来年のために保管します」

土を保管しておく土嚢はそうとうな数になりそうだが、自然災害が起こった際に活用することも視野に入れているという。

土俵づくりが行われた翌日の3月4日、午前8時からご祈祷が執り行われたあと稽古が始まった。大阪場所は3月12日から26日まで、大阪府立体育館で行われる。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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