トイレ失敗を繰り返す猫、仲の良い同居猫に「指導」を頼んでみたら… 動物と意思疎通できる「アニマルコミュニケーター」の不思議

アニマルコミュニケーターというお仕事をご存じですか?

動物病院で働く獣医師のお仕事は、来院される動物の病気を治すことですが、ときに心の問題を解決しないと先に進めないという状況があります。それは、飼い主さんの…だけでなくペットである動物の心も問題となることがあるのです。

そのとき、私が本ワンや本ニャンにいろいろ質問しても、私はドリトル先生ではないので、彼らの言葉がわかりません。そこで、私はときにアニマルコミュニケーターさんに協力していただくことがあるのです。

ペットが実際どう思っているのか?どうしたいのか?アニマルコミュニケーターさんは、動物と魂レベルでコミュニケーションできるそうです。そして、ペットの代弁をしてくださいます。

我が家では、脳障害をもつ三毛猫・のりちゃんのおトイレ問題を解決するのに、アニマルコミュニケーターのAさんに相談してみたことがあります。

のりちゃんは今年で3歳になります。生後およそ5カ月のときに沖縄で保護されましたが、てんかんの大発作を何度も繰り返し、動物病院では、動物保護管理センターに持っていく(つまりは安楽死となるだろう)選択肢を提案されてしまうほどでした。保護団体がFBに掲載していたのりちゃんの経過をふとしたきっかけで見つけ、私は心配になってしまいました。

「こんな大変な子に、きっと里親など現れないだろう…そのうち保護施設でも大発作を起こして亡くなってしまうのでは?」そう思うと、居ても立っても居られなくなり、我が家で飼うことにしました。

しかし、迎え入れてわかったことは、のりちゃんはてんかんだけではなく、脳に障害があるようで、猫であれば誰でもできる「おトイレで排泄(オシッコ・ウンチ)」ができませんでした。

私は獣医師ですので、頑張って大特訓しました。そして、のりちゃんはてんかん発作も落ち着き、おトイレの失敗率も下がっていきました。当時、我が家には17歳になるじいちゃん猫・カッツがおりました。彼は、沖縄生まれののりちゃんを寒さから守り(滋賀県の冬は寒いのです)、いつもそばにいて優しくグルーミングしていました。

ところが、1年前にカッツが老衰で亡くなって以来、何故かのりちゃんはトイレの失敗率が再び上がっていきました。以前は比較的すんなりとトイレに入りそのままオシッコしていたと思うのですが…カッツ爺がトイレを教えてくれていたのだろうか?と想像しました。

実は我が家にはもうひとり、白猫のハク太郎(5歳)がいますが、他の猫と仲良くすることはあまりありません。「ハク太郎がトイレを教えてくれたらいいのに…」とは思いましたが、到底無理でした。

出来ればトイレで用をたして欲しいという願いは捨てきれませんでしたが、このままでは家中がオシッコ臭くなってしまうため、やむなくのりちゃんにオムツをしてもらうことにしました。でも、のりちゃんはあまりにちっちゃくてそして女の子であるため、少しでもオムツがずれると隙間からオシッコが漏れました(尻尾のすぐ下に肛門、そしてあまり距離を置かずにオシッコの出るアナがあります。男の子の場合は、肛門とペニスの間には距離があり、しかもペニスが出っ張っているのでオムツがおしっこをキャッチしやすいのです)。やはり、おトイレで用をたしてほしい…

のりちゃんは日を追うごとに、ますますトイレが分からなくなっているように見えました。てんかん発作が度々起こると、それに伴い脳の損傷が進んで若くても認知症のような状態が進行していくことがあります。のりちゃんも認知症が進行したのでしょうか?

ちなみに、のりちゃんの最近のオシッコルーティンはこうです。

(1)なんかせなあかん!という感じになって起き上がる

(2)興奮して背中の毛が毛羽立つ

(3)部屋中を走り回る

(4)トイレに入ってはみるが…

(5)すぐにぱあーっと走り去る

(6)何度かそれを繰り返す

(7)何回か目にやっとトイレで座り込むと、背中の立っていた毛がさぁーっと倒れる→オシッコが出た印

★もちろん、何回目かにキッチンの冷蔵庫前に座り込んでオシッコが出ちゃうこともあります。

さて、そうこうしているうちに、我が家に新しく茶トラの雄保護猫、菊之輔がやって来ました。生後5カ月になった菊之輔はサイズがちょうど、のりちゃんと同じくらい。すぐにのりちゃんと仲良しになりました。

でも、のりちゃんは相変わらずおトイレ失敗を繰り返していました。私は困り果てて、アニマルコミュニケーターのAさんに相談しました。

Aさんが言うには、やはり、以前はカッツ爺がのりちゃんにおトイレの度に場所を教えていたということでした。では、今は菊之輔がのりちゃんと仲良くしているので、菊之輔にのりちゃんのおトイレ指導をお願いして欲しいと伝えてもらうことにしました。

はたしてAさんが菊之輔に話しかけると、開口一番、

「のりちゃんって僕より赤ちゃんなの?僕より動きが遅くて…やることは僕より赤ちゃんなんだー」

だそうで(笑)。確かに、菊之輔より赤ちゃんだ!

Aさんは、

「そうだよ。だからいろんなこと教えたらなあかんな」

と諭したところ、菊之輔は元気なくこういったそうです。

「うん… のりちゃんにおトイレの場所を教えるのは、僕には難しいと思うよ。のりちゃんはすぐ忘れてしまうんだよ」

がっかりでした…。

ところがそれ以来、のりちゃんがもよおして徘徊しだすと、菊之輔はまるで牧羊犬(猫ですが…)のようにのりちゃんの前になり後ろになり、のりちゃんと一緒に走り出すようになりました。時々、のりちゃんの合図に気づかずにぐっすり寝ていることもあるけれども…。菊之輔は、あらぬ方向に走りだしたのりちゃんの前に飛び出して大の字になって通行止めしたり、後ろから追い越して先回りしてトイレ近くで待っていたりするようになりました。

おかげで、また少しずつではあるけれども、のりちゃんのおトイレ成功率が上がってきました。菊之助には感謝です! いつも顔を見ては、「ありがとう!」を言う毎日です。

(獣医師・小宮 みぎわ)

関連ニュース

ライフ最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    リアルタイムランキング

    注目トピックス