「俺はおめえと…」東京下町で聞こえてきた高齢男性2人の粋な会話 人気料理人「そんな人生もいいもんだなあ」

 南インド料理店「エリックサウス」の総料理長、稲田俊輔(イナダシュンスケ)さんは先日、自身のツイッターに映画のワンシーンのようなエピソードを投稿しました。ユーザーからは「エモい」「いいねえ」などの声が上がっています。稲田さんに話を聞きました。

     ◇

立ち飲み屋にて。

背後の席には二人の老人。

柄本明とチバユウスケを足して2で割った感じのじいさんと、

水川かたまりと白木みのるを足して2で割った感じの爺さん。

緩い会話が続く中、唐突に柄本ユウスケ爺

「俺はおめえと飲むのは好きだぜ」

15秒ほどの沈黙の後、水川みのる爺

「俺もだ」

(稲田さんツイッターより引用)

     ◇

 稲田さんによると、東京都内のとある下町での出来事。

 「新旧織り交ぜて庶民的な飲み屋さんがたくさんある街で、そのときその2人も、そんな街のいろんなお店について話をしていました。『あのモツ焼き屋はなかなか悪くないぜ』みたいな。2人は旧知の間柄っぽくて、お一人は少しお身体に障害があるようでした。もう片方の方は毎日のようにこのあたりを飲み歩き、そして時々はその旧友を呼び出して一緒に飲む、そういう関係のように思われました」(稲田さん)

 そんな背景のもと、心にしみる会話「俺はおめえと飲むのは好きだぜ」「俺もだ」が生まれました。

 「会話が特に盛り上がるというわけでもなく、時々どちらかがぽそっと喋る。そんな様子が、かえって気心知れた仲を感じさせて、なんだかほっこりしました」(稲田さん)

 粋な2人に出会える街はどこなのか。

 「その街は僕が東京出張のときの常宿がある街、というかむしろその街の居心地があまりによくて、そこを常宿にしているという方が正しいのですが。でもそこで僕自身はやっぱりどこか『余所者』なんですね。余所者ならではの気楽さを楽しんでもいるんですが、この2人のように、そこで生まれ、育ち、そして老後をのんびり過ごす、そんな人生もいいもんだなあ、と思います。僕自身はこれまであちこちを転々としてきましたので」(稲田さん)

 野暮になるので地名は聞かず、あれこれ想像して楽しむことにしましょう。

 料理人や飲食店プロデューサーとして活躍中の稲田さん。まだまだ先の話ですが、ご自身の老後はどんな姿を思い描いていますか。

 「今住んでいる名古屋にも一軒、とても気に入ってる古い酒場があります。仕事を引退したらその近くにでも引っ越して、毎日早い時間に現れてサッと飲んで帰る、そんな『何やってんだかよくわからない謎のジジイ』になりたい、という夢があります」(稲田さん)

▽稲田俊輔(イナダシュンスケ)さん 京都大学卒業後、飲料メーカー勤務を経て、飲食店の世界へ。多くの飲食店の立ち上げやメニュー開発などに携わる。2011年、東京駅ヤエチカ(八重洲地下街)に南インド料理店「エリックサウス」開店。近著は「ミニマル料理」(柴田書店)、「スパイス完全ガイド」(西東社)、「キッチンが呼んでる!」(小学館)など。ツイッター(@inadashunsuke)

(まいどなニュース・金井 かおる)

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