手作りし、自宅に置いてある衣装が見知らぬ通販サイトで勝手に売られていたーー。そんなウソのような話がネット上で広がっています。コスプレイヤーのりつき（@ritsu_h116）さんは自分用に手作りしたコスプレ衣装が、通販サイトで売られているのを見つけ、驚きました。

「通販サイトで私の衣装売られてた！」「部屋にあります！買っても届かないです！！」とTwitter上で通販サイトの運営会社を挙げ、買わないように注意喚起しました。運営会社はどのようにりつきさんの自作衣装の画像を無断で入手し、販売しているのでしょう。記者はりつきさんに話を聞き、運営会社を訪ねました。

■メルカリ出品写真を丸ごとコピペされた

りつきさんは人気ゲームでアニメ化された「アイドリッシュセブン」の和泉三月（いずみ・みつき）のコスプレのため、衣装を手作りしました。ミシンなどを使い、完成に約1カ月を要したといいます。

ーー自分が手作りした衣装が、なぜか見知らぬ通販サイトで売られていた。

「驚きました。自分以外のコスプレイヤーさんの和泉三月コスが見たくて、『和泉三月　コスプレ』で検索したら、私が自宅で撮った衣装の写真が出てきて、『衣装ができた』ってTwitterに上げた写真だ…と」

ーー通販サイトは定価1万円をアウトレット価格6400円に値引きしています。商品説明も詳細です。

「衣装を一度着て撮影した後、着る機会がなかったのでメルカリに1万円で出品したんです。その時、アップしたコスプレ衣装の帽子や靴の別カット写真、説明文もまるごとコピペされました。衣装のサイズ感やどんな小物が付属しているといった情報を詳しく書いていたので、パクりやすかったんだと思います」

「実際に購入ボタンを押した人に、どんな商品が届くのか、果たして本当に衣装が届くのか、怖くなってすぐにメルカリ出品を取り消しました」

そして、すぐにTwitterで自身の衣装が勝手に通販サイトに載せられていることを訴え、注意喚起しました。

■HPの住所に本社も店もなかった

この通販サイトを見てみると、会社概要には会社名や本社所在地、代表者、従業員数などが書かれています。会社は2013年設立で、従業員数は2023年2月時点で1045人（正社員639人）となかなかの規模に拡大しているようです。

店舗案内には、高級そうな腕時計を販売しているシックな店内写真がアップされています。お店は本社所在地と同じ住所で、兵庫県西宮市内でした。記者は通販会社に事情を聴こうと本社所在地とお店がある兵庫県西宮市内を訪ねました。

電車とバスを乗り継ぎ、西宮市でも山の手の閑静な住宅街にたどりつきました。しかし、住宅地図を手に訪ね歩いても、通販会社の本社やお店らしき建物は見当たりません。近くの男性にホームページに記載されたお店の写真を見せると、「こんなお店は見たことがない」。男性は通りかかった新聞配達員にお店の住所を聞いてくれましたが、新聞配達員は「この番地の建物は知らない」と言って走り去りました。番地が近い家のインターホンを押しましたが、「そんなお店は聞いたことがありません」と返答がありました。

また、ホームページに記載された古物商許可番号も、東京都公安委員会のデータベースに記載がありませんでした。

■質問に答えず、HP削除

通販会社の問い合わせ先はメールアドレスしかなく、りつきさんが被害を訴えたときと、記者が確認した3月10日で、問い合わせメールアドレスは変更されていました。この二つの問い合わせメールアドレスに対し、四つの質問を送りました。

1　御社は本当にりつきさんが手作りした衣装を販売していますか。

2　会社概要に掲載された御社所在地は正しいですか。

3　古物商許可番号を交付されていますか。

4　古物商許可申請を受けて営業する場合は、古物商プレート掲示が法律によって義務づけられています。古物商プレートを掲示していますか。

通販会社から期日までに回答はなく、3月15日、通販会社のホームページは削除されていました。

（まいどなニュース・伊藤 大介）