目指したのは「“物語”で味わうコーヒー」 産地からカップへ「豆の旅」を伝えるパッケージ…味わいを超えた“新しい楽しみ方”をUCC提案
みなさんがコーヒーを買うとき、どのような選び方をするだろうか。スーパーに行くと大容量のものや豆や焙煎の知識が書かれたもの、産地にこだわったものなど、さまざまなレパートリーが販売されている。だが、特に重要視するのはやはり味わいではないだろうか。
コーヒーの代表的な味覚である「苦味」と「酸味」。この2つの組み合わせはコーヒーの産地や焙煎方法、ブレンド、挽き方などで細かな味の違いが出る。しかし、コーヒーの味をこのような情報から読み取って好みのコーヒーを選ぶのは、知識がないとなかなか難しいことだろう。
そんなコーヒーの選び方に改革を起こすべく、新しい取り組みを行なっているのがUCCだ。今回はUCC上島珈琲株式会社 マーケティング本部 嗜好品マーケティング部 嗜好品ブランドフューチャーチームの赤石朋さんに、UCCがチャレンジする新たなコーヒーの価値観の創出についてお話を聞いた。
■目指したのは「"感覚"で味わうコーヒー」
コーヒー初心者にとって豆の特徴はなかなかわかりにくいもの。味の説明や解説を受けても「?」となる人も多いのでは。このような知識が、コーヒーを楽しむためのハードルを上げているといっても過言ではないかもしれない。そこでUCCがレギュラーコーヒー製品シリーズ「上島珈琲店」で注目したのが"コーヒーの持つ付加価値の提供"だ。
「このようなコーヒーへの敷居の高さに挑戦するのが私たちのミッションです。現在行っている取り組みのひとつが『ストーリーで選ぶコーヒー』というコンセプトです。コーヒーは世界各地の産地で育てられからカップに注がれるまでに長い長い旅をします。そのストーリーをぜひ味わってほしいと考えています」
UCCがユーザーに楽しんでもらいたいのは「コーヒーの持つストーリー」。映画や小説をストーリーで選ぶように、旅行を旅先の魅力で選ぶようにコーヒーを選んでもらうという、新しいコーヒーの楽しみ方を提供するのが狙いだ。
「これまでコーヒーは酸味や苦味といった”舌”で味わうものでした。ですが私たちが目指すのは『頭で味わうコーヒー』です。生産地や焙煎、抽出などの過程を思わせるようなイラストや、パッケージ裏に書かれたエピソードなどで、コーヒー豆自体が持つ魅力を掘り下げています」
■苦労したのは「19種類のストーリーの編纂」
スーパーなどの家庭用向けには5種をセレクトして販売中。そして上島珈琲店の店舗では、なんと、19種類ものストーリーを描いたコーヒーを販売している。いずれは全種類をスーパーにずらりと並べるのが目標だという。
商品開発へのこだわりは「産地とカップをつなぐ活動」であること。ユーザーに産地からカップまでの流れを伝えることが今回のコンセプトだ。そして、製品の質に力を入れるために社内での選りすぐりのプロフェッショナルを集めて開発しているという。しかし、コンセプトを立てる上で苦労も多かったのだとか。
「特に、19種類のオリジナルのストーリーの編纂にとても苦戦しました。豆ごとに紐づいたストーリーを考えるのがなかなか大変です。ちゃんと味わいや楽しみと結びつけられるかが課題ですね。コーヒーひとつひとつの産地からの流れがわかることで、より深くコーヒーを理解して、感じてもらえれば嬉しいです!」
このような取り組みに対してユーザーからの声はとても好評。「イラストで選べるから楽しい」「見て、読んで、飲んで。と全身で楽しめるのが嬉しい」と、コーヒー初心者から熱心なファンまで納得できるコンセプトになっている。
ちなみに、赤石さんのおすすめの味は、ハンドドリップで抽出する際のドリッパーにたまったコーヒーが膨らむ様子を表現した「Pool N bloom」、そして海外がより遠くに感じられていた頃から舶来品であったコーヒーの味わいを表現した「Messenger from Far East」だ。
■新しいコーヒーの選び方。「シーン」で選ぶコーヒーとは
また、UCCグループの子会社であるCOFFEE STYLE UCC株式会社(以下、COFFEE STYLE UCC)が力を入れているのが「シーンで選ぶコーヒー」の提案だ。コロナ禍でリモートワークやオンライン授業などが推奨され、外に出る機会がこれまで以上に少なくなった。2023年現在は以前に比べて外出しやすくなったとはいえ、ソーシャルディスタンスを取る生活はまだまだ続くだろう。そのような時代に、お家で楽しめるコンセプトのコーヒーを提案している。
「昨今の社会背景を受けて、コーヒーを通して『自分を大切にするひととき』を届けたいと思いました。特に家にいる時間が長くなった現在では、同じ場所にずっといるとストレスが溜まってしまいます。そのような状態で心からリラックスできるように、毎日の暮らしに新しい喜びを届けるブランド『CAFE@HOME』を提案しました」
そのなかのひとつが、家に海外旅行に行ったかのような心躍るひとときを楽しめる「Heart with Coffee」。お家でのカフェタイムをまるで旅に出かけたかのように楽しんでほしいという思いから、メルボルン、ハワイ、オスロ、パリ、そしてマイシティという、コーヒー文化が栄える世界の都市にいるかのような雰囲気を楽しめるような味わいになっている。
他にもチョコレートや果物といった食べものと相性の良いコーヒーを選ぶ「Food with Coffee」、その日の気分や、晴れの日や雨の日など天気によって選ぶことをコンセプトとした「Life with Coffee」の2つを展開。お家で過ごすシーンによって選べるという、新しいコーヒーの価値を提供している。
これまでコーヒーは酸味や苦味など舌で味わうのが当たり前だった。しかし、シーンやストーリーなどを提案し、気持ちをリフレッシュしたり遠い産地を想起したりできるのは、これまでになかったコーヒーの楽しみ方かもしれない。コロナ禍でまだまだ人との距離が離れるなか、自分の機嫌を自身でとるのは大事なこと。そのような時にUCCの提供するコーヒーのコンセプトが、安らぎを与えてくれるかもしれない。
(まいどなニュース特約・福井 求)