発育したり数が増えたりする子宮筋腫 今では、いろんな手術の選択が増えた 3人の女性の場合は…

子宮筋腫は多くの場合、月経がある間は発育し大きくなったり数が増えたりします。それに従って月経痛や過多月経などの症状はひどくなってきます。GnRHアゴニストやGnRHアンタゴニストなどの薬を使用して月経をストップし、筋腫を縮小して上手く閉経まで逃げ込めればいいのですが閉経まで何年もある場合は薬をずっと使い続けるのも大変です。

このような場合は手術をお勧めします。手術を勧められて喜ぶ方はおりませんが、30年くらい前に比べると術式も随分改善されておりますから、自分の年齢や妊娠希望の有無などによって良い術式を選ばれればよいと思います。筋腫の手術は子宮を摘出する子宮全摘術と筋腫のみを取る筋腫核出術に分けられます。

全摘術では月経が無くなり、妊娠はできなくなりますが再発する心配もありません。核出術は術後月経があり、妊娠も可能ですが再発のリスクがあります。どちらも開腹手術だけでなく、腹腔鏡手術によって術創を小さくすることができます。子宮を摘出すると更年期になるのではないかと心配される方がいますが、女性ホルモンは卵巣からでているので卵巣を取らないかぎり更年期にはなりません。

■腹腔鏡による子宮全摘を選択

Rさんは42歳で子供さんが二人います。過多月経のため来院されました。超音波検査で10センチくらいの筋腫を筆頭に大小7~8個の筋腫がありました。手術をしてもいいくらいの大きさだったのですが彼女は手術は嫌だといいます。GnRHアンタゴニスト内服で月経を止めることにしましたが、この薬は半年しか使用できないのですぐに月経が再開します。あれこれ薬を変えて2年ほどがたち彼女は薬を服用し続けることに疲れてきました。ついに手術をすることになり病院を紹介しました。

病院の先生と相談の結果彼女は腹腔鏡による子宮全摘を選択しました。入院期間は1週間で無事退院。それから1年ほどして術後の検診に当院に来られた彼女に最近の体調を尋ねると「もうぜんぜん楽です。いつでも白いスカートがはけるし、いつでも旅行に行けるし。もっと早く手術しといたらよかった」とのことでした。

■子宮鏡手術を選んだ46歳の看護師

Aさんは46歳の看護師です。月経痛はありませんが最近急に月経量が増えてきました。立ち眩みや頭痛がするようになり検査をしてみるとひどい貧血があることが分かりました。筋腫ができたのかもと当院を受診されました。Aさんの予想どおり彼女の子宮には3センチくらいの小さな筋腫がありました。

その筋腫は子宮腔内にある粘膜下筋腫でした。粘膜下筋腫は小さくても月経量が増えて貧血になるばかりでなく、若い方の場合は不妊の原因にもなります。Aさんには子宮鏡手術をお勧めしました。子宮の入口から内視鏡を挿入し筋腫を取る手術で2~3日の入院で可能です。紹介先の先生はAさんと相談のうえ子宮鏡で筋腫を取り、加えて子宮内膜アブレーション(MEA)をやってくれました。これはマイクロ波によって子宮内膜を加熱、壊死させるもので術後月経はほとんど無くなってしまいます。もう月経は要らないと考えていたAさんには良い術式だったと思います。

■筋腫が急に大きくなったときは注意

筋腫の患者様から「筋腫を放っておくと癌になりませんか?」と質問されることがよくあります。筋腫と癌は全く別の病気なので癌になることはないのですが稀に悪性化することはあります。その場合は子宮肉腫と呼ばれるようになります。日本での1年間の子宮肉腫の発生数は300以下だそうで、筋腫の患者数からいえば悪性化の確率は低いですが、筋腫のある方は頭の片隅に肉腫のことも覚えておいてください。

Sさんは57歳で40代の頃から複数の筋腫があり毎年検診に来られていました。子宮は全体で直径10センチのボールくらいでした。Sさんは52歳で閉経を迎え、そこで安心したのか検診に来られなくなりました。そして5年後急に腹部膨満感を感じて当院を受診されました。

子宮はお臍を超えるくらい大きくなっていました。閉経後筋腫は小さくなるのが普通ですから大きくなっている場合は悪性化が疑われます。病院を紹介し開腹による子宮全摘がなされ摘出子宮の病理検査でやはり肉腫でした。その後Sさんは元気にされていますが、筋腫が急に大きくなったときは注意が必要です。 

◆川口 惠子 神戸大学医学部卒、神戸大学医学部大学院卒、医学博士。神鋼病院産婦人科部長を経て平成13年より川口レディースクリニック院長。趣味はコンピューターグラフィックスと英会話。いずれも才能も情熱もないため全く上達せず。

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