新元号発表の2019年春にラーメン店を予約→「ご来店の予約の順番がまいりました」と店主からメッセージ→我々調査隊は東大阪へと向かった

予約から数年待ち…。巷では「幻」「隠れすぎ」と噂され、多くのラーメン愛好家から熱い視線を送られる、完全予約制のラーメン店がある。大阪府東大阪市の「ら道本店」だ。

「大変長らくお待たせをいたしまして申し訳ございません。ようやくご来店の予約の順番がまいりましたのでご連絡をさせていただきました」

「ご来店ご予約日ですが『令和5年3月×日』はいかがでしょうか」

2月中旬。Facebookにそんなメッセージが届いた。送り主は、2019年4月に私が興味本位で予約した「ら道本店」の店主、水谷寿志さん。正直なところ予約したことすら忘れかけていたが、あれから4年弱…とうとうこの日が来てしまった。2019年4月のニュースを検索すると、1日に当時の菅官房長官が新元号「令和」を発表し、15日にはフランス・パリの世界遺産・ノートルダム大聖堂で大火災が起きている。もちろん新型コロナウイルスの流行前である。

会社の同僚やガチのラーメンマニアらに声を掛け、計5人で店を訪れたのは3月上旬の夜。「店」といってもよくある2階建ての古い文化住宅の一室である。引き戸を開けると、中は壁から天井まで布で覆われたちょっと奇妙な空間。「ネットで幻とか書かれていますが、ほら、ちゃんとあったでしょう」と朗らかに歓迎してくださった水谷さんに促され、小さなテーブルに着席した。

食事メニューは、らーめん(990円)、替え玉(155円)、ごはん(185円)のみ。あとはビールや酎ハイなどのドリンク類、持ち帰り用のスープ(700円)と麺(155円)があるだけだ。(※価格は2023年3月時点、いずれも税別)

「うちはラーメン店ではなくて、あくまでもスープ専門販売店なんです」と水谷さん。注文を取りながらも、熱いトークは途切れることがない。「ここで食べたい」という常連のためにラーメンを出すようになったことから、今の「Facebookのメッセンジャーでしか予約できない」「1日2組限定」という極めて特殊な営業形態に進化していったという。

■ごくごく飲める豚骨スープにびっくり

ら道本店のラーメンは豚骨で、トッピングはネギとチャーシューのみという一見シンプルなスタイル。決して「目が覚めるような味」というわけではないが、とことん丁寧に作られたことが伝わってくる奥行きのある味わいで、5人全員が替え玉やごはんを追加注文して、スープを“完飲”してしまった。

同行した4人の感想はこうだ。

「天下一品のこってりスープに似た味わいながら、飲み口はやわらかく、優しい味わいでクセがない。スープを完飲したのなんて、大学生以来20年ぶりだ」

「見た目や豚骨のイメージに反して、思ったよりあっさりしていた。冷めても脂が固まったりせず、最後までおいしく食べることができた」

「豚骨なのに驚くほど臭みがなく、すっきりしていた。麺に絡まる旨みがたまらず、1玉があっという間だった」

「ポタージュ仕立ての白湯に近いようなクリーミーさとまろやかさ、丁寧に仕上げられたスープは臭みが一切なく、トロッとした濃厚な一杯だった。豚骨ラーメンの定番は細麺だが、スープに合う麺を厳選してモチッと感のある中細ちぢれ麺にしているのが面白い。チャーシューは今まで食べたことがないような、八角に近い香辛料の香りがした」

1杯のラーメンを食べるために4年も待ち、壁や天井が布で覆われた文化住宅の一室という謎めいた空間で、4年分の集中力をフル稼働させながらラーメンをすする。ただ「ラーメンを食べる」という行為を、何年もかけてここまで特殊なエンタメ体験に練り上げた水谷さんの情熱と手腕に、一同脱帽してしまった。

水谷さんが「本業」とするスープの販売所は、ら道本店の味を愛する客たちに暖簾分けする形で、関西を中心に日々拡大中。大阪の堺、天六にイートインの店も新たにオープンした。

「今まで続けてきたことが、少しずつ繋がってきているのを感じます」と嬉しそうに語る水谷さん。次に行けるのは…何年後になることやら。

予約は「ら道本店」のFacebookページから。かなり細かいルールがあるので、予約方法を熟読することをお勧めする。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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