ワンコ大好き、でも人間は苦手 保護された野犬が幸せをつかむまで「過去やビビリな性格、全てを受け入れます」

殺処対象になった犬の保護、新しい里親への譲渡を通じ「殺処分ゼロ」の実現を目指すピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。同団体が保護するワンコの中で特に多いのが野犬ですが、今回紹介するスシアもまたそのうちの1頭でした。

野犬の多くはワンコ社会でのコミュニケーションには長けている一方、感情表現が個性的で、人間社会に対しては怖がりであるもの。特にスシアは、生後3~13週間までを野犬たちの群れの中で過ごしていた様子で、「人間と目を合わせない」といった野犬気質が強いワンコでした。

■人間との距離がなかなか縮まらないスシア

動物愛護センターからピースワンコのスタッフが引き出した後、スシアはまず広島県神石高原町のシェルターに入りました。不慣れな環境に加え、人間に対してとにかく怖がっている様子でカチコチに固まっていました。

そんな中、スタッフはスシアに人馴れトレーニングを実施しながら、散歩などにも積極的に連れていくようにしました。同団体のシェルター内は自然豊かで、ワンコにとってこの上なく自由度が高い環境です。

■ビビリながらもクリスマスにトナカイになってくれた

少しずつ変化を見せてくれたスシアは、神石高原シェルターから、岡山譲渡センターに移ることになりました。シェルターの環境とは違い、譲渡センターのある場所は住宅街。交通量も各段に多くなるので、怖がりさんのスシア自身のぺースに応じて、少しずつ人馴れトレーニングを続けました。

散歩そのものは大好きで、少しずつ馴れてきたスシアでしたが、ハーネスをつけられることだけは怖がります。知らない人が譲渡センターに来ればまたカチコチ。さらには、知らない人が帰って行った後、スシアが立ち上がるとウンチを漏らしていたこともありました。

しかし、それもスシアそのものです。その気質、ペースを最優先にスタッフはじっくり時間をかけてスシアが人間に馴れてくれるよう根気強く接するようにしました。

そんな気持ちがスシアに伝わったのか、クリスマスの際、オロオロとビビりながらもトナカイのカチューシャをつけさせてくれました。スシア自身もまた、少しずつ人間との距離を縮めてくれているように思い、スタッフはほっこりとした気持ちになりました。

■ついに運命の出会いが訪れた!

スシアは、スタッフ、ボランティアの方から「スーちゃん」と呼ばれ、かわいがられていました。人間にはなかなか馴れない一方、その野犬気質が他のワンコとは仲良く過ごせます。特に相手がどんなワンコでも「ワンプロ(ワンワンプロレス)」を仕掛け、楽しそうに遊びます。このことからスタッフは「譲渡先は、先住犬がいるお家がいいかも」と考えていましたが、なかなか縁に恵まれず、スシアは譲渡センターへ来て1年が経過していました。

しかし、ついに運命の出会いが訪れます。以前からホームページで紹介していたスシアの様子を見て気になっていたという里親希望者さんが現れたのです。

■亡くなった先住犬と、スシアの仕草がそっくりだった

里親希望者さんによれば、その家庭には先住犬がいたものの、少し前に虹の橋をわたり、ちょうど四十九日を終えたとのこと。ホームページでスシアの写真を見たところ、座ったときに前足を半分折った形にする「牛手」をする様子が、先住犬と同じだったことから運命を感じたと言います。

また、スシアの過去やビビリな性格も理解し、「スシアの全てを受け入れたい」と言ってくれました。

先住犬はいないものの、スシアにとってはこの上なく幸せな第2の犬生を送ることができるはずとスタッフも納得し、めでたくスシアはこの里親希望者さんの家に迎え入れられることになりました。

■「らしさ」を尊重してくれる里親さんとの幸せな生活へ

里親さんに迎え入れられてから約3カ月後、スシアは里親さんとともに、岡山譲渡センターへ里帰り的に遊びに来ました。久しぶりに会うスタッフの前では、またもビビるスシアでしたが、かつて一緒に過ごしたワンコはもちろん、初対面のワンコも一緒に遊びました。

その様子を見て里親さんもスタッフも「スシアらしいなぁ」と癒されました。

そして、その「スシアらしさ」を尊重し、そのペースを最優先に考えてくれる優しい里親さんのもとで、スシアは今日も幸せな生活をおくっています。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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