「森下」「門別」「井坪」「茨木」「戸井」「富田」…阪神・注目のルーキー、名字のルーツは

今年も間もなくプロ野球が開幕する。各球団には昨年秋のドラフト会議で指名されたルーキーたちが入団した。その中から、阪神タイガースの主な新人選手の名字をみてみよう。

まずは、ドラフト1巡目で入団した中央大学の森下翔太外野手。

「森下」は名字ランキング300位以内のメジャーな名字で、東北と沖縄を除いて全国に広く分布している。「森」とは「林」と違って、自然のままで人の手が入っていない場所のこと。古い時代ではそうした「森」は各地にあり、そのような「森」の下に住んでいた人が名乗ったものだ。現在は東北と沖縄以外に広く分布しており、比較的東海地方に多い。森下翔太は横浜の出身である。

2巡目は東海大札幌高の門別啓人投手。この「門別」はユニークな名字である。ただ珍しいというだけではなく、そのほとんどが北海道にある。しかも、数少ない北海道をルーツとする名字である。

江戸時代以前、北海道は渡島半島を除いては和人はほとんどおらず、アイヌが暮らしていた。これらのアイヌは名字を持たなかったことから、江戸時代以前には北海道をルーツとする名字はほぼなかったと言っていい。

現在北海道に住んでいる人の大多数は、屯田兵など明治以降に内地から入植した人の子孫である。こうした入植者は東北・北陸・四国の出身者が多く、そのため現在でも北海道の名字はこれらの地域の名字をミックスしたような構成となっている。

しかし、北海道を由来とする名字が全くなかったわけではなく、そのうちの1つが「門別」である。

「門別」のルーツは北海道日高地方の門別地区。平成大合併の前までは門別町という独立した自治体だったが、現在は日高町と合併して日高町の一部となっている。「門別」という名字は現在も日高町に集中しており、ここがルーツであることを示している。

3巡目の関東第一高の井坪陽生外野手の「井坪」も全国順位が10000位前後と珍しい名字だ。全国の7割ほどが長野県にあり、県内ではその大半が飯田市に集中している。井坪選手は東京の八王子市の出身だが、そのルーツは長野県飯田市にありそうだ。

そして4巡目帝京長岡高の茨木秀俊投手の「茨木」は大阪に関係する名字である。全国ランキングは2000位前後と普通の名字で、そのルーツは摂津国島下郡茨木、現在の大阪府茨木市である。室町時代、ここには有力武家である茨木氏がいた。その後各地に広がったとみられ、現在は関西と新潟県に集中している。帝京長岡高は新潟県にあるが、茨木秀俊選手は北海道の出身である。

なお、5巡目戸井零士の「戸井」と、6巡目富田蓮の「富田」はいずれも全国に広く分布する名字である。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。

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