灘高にマッチョ化の波 ボディビル先生が筋トレ伝授 筋肉自慢が東大京大、医学部へ
全国屈指の難関校、灘中学、高校(神戸市東灘区)にマッチョ化の波が押し寄せています。ボディビル全国大会に出場する体育教師、的場久剛(まとば・ひさたか)教諭(42)に感化された生徒たちが、筋肉美を競うコンテスト「筋肉王」を2019年から開催し、肉体を鍛えて東大や京大を目指す俊英が増えています。
しかし、筋トレを愛するあまり、受験勉強がおろそかになったりしないのでしょうか。生徒にトレーニング方法やポージングを伝授する的場教諭と、灘校筋肉王の歴代上位入賞者たちに話を聞きました。
■クイズ同好会から筋肉王、そして東大へ
2022年の筋肉王に輝いた川上大和さん(18)は東大理科二類に現役合格を果たしました。灘中学、高校時代はクイズ同好会に所属していた文化系男子です。
川上さんは高校2年生だった2021年6月、先輩たちが出場する灘校筋肉王を見て、筋肉美に魅了されました。当時はクイズ同好会の会長で、本格的な運動はしていませんでしたが、的場教諭に影響でマッチョ化した別の数学教諭からトレーニングの指導を受け、1年間でたくましい上半身を築きました。
「朝早めに登校して、始業までの30分にダンベルプレスやチンニング(懸垂)、フレンチプレス、サイドレイズ、インクラインカールなどを行いました。筋肉王が近づくと1時間半くらいトレーニングしていました」と振り返ります。
文化系が急に筋トレを始めて、支障はなかったのでしょうか。川上さんは「筋トレはストレス発散になって、気分がすっきりする。塾に行く日も疲れにくくなりました」と体力向上を実感します。また、的場教諭の鍛錬を目の当たりにし、「すごくストイックなトレーニングで、『僕も手を抜いたらあかんな』と思った」と刺激を受けたといいます。
■筋肉王から京大医学部 「勉強の息抜きに」
最難関の医学部に進んだ筋肉王出場者もいます。京都大学医学部医学科2年の大鶴健さん(21)は灘高3年だった2019年、初開催された筋肉王に出場し、3位に入りました。ラグビー少年だった大鶴さんは灘中学3年から筋力トレーニングに取り組み、「バーベルを使ったフリーウエイトも、マシンを使ったトレーニングも的場先生に教えてもらいました」と感謝します。浪人中も自宅でベンチプレス100キロを上げるなど鍛錬に励み、1浪で京大医学部に合格しました。
現役時も受験直前の1月まで筋トレをしていたという大鶴さんは「トレーニングは勉強の息抜きになりました。しんどい時にバーベルをもう1回、2回上げるのは勉強(の頑張り)にも通じる。プラスに働きました」と前向きにとらえています。鍛えた身体を生かし、京大ラグビー部では司令塔のスタンドオフとしてリーグ戦に先発出場しています。
大鶴さんは「灘は何事にもハマると熱中して、目標を持って頑張る子が多い。筋トレは結果が現れやすいから、向いているのかも」と話します。
■的場教諭に憧れ、筋肉王 筋トレで「自己管理できるように」
2022年筋肉王の川上さんが憧れた、2021年筋肉王の秋山慶一郎さん(19)は中高バレーボール部でした。ジャンプ力をつけようと学校のトレーニングルームでスクワットに励んでいた時、「いいフォームしてるやん」と声をかけてきたのが的場教諭でした。筋骨隆々のボディビルダ-に「筋肉あるって格好いいな」と感化された秋山さんは、高校1年で筋肉王に出場して予選落ち。しかし、的場教諭がステージでキレキレの筋肉を披露するのを見て、「めちゃくちゃすごかった。僕もこのステージに立って、フリーポーズをしたい」とさらに鍛錬に励み、高校3年で晴れて筋肉王に輝きました。
秋山さんは奈良県立医科大学に合格しました。「勉強する時も猫背にならず、『姿勢が良くなった』と周りから言われるようになりました。肩もこらなくなりました」と姿勢改善につながったといいます。筋肉を大きくするにはトレーニングの計画を立て、実行し、記録を付け、必要な栄養を摂取する計画性や実行力が求められます。秋山さんは「自己管理ができるようになりました」と実感しています。
そもそも、なぜ的場教諭は難関大を目指す生徒たちに筋トレを勧めたのでしょうか。「筋トレを通じて継続することの大切さが学べます。また、正しいやり方(フォーム)で続けないと成果につながりにくいことは、受験勉強にも通じていると思います」と話します。
川上さんや秋山さんによると、一緒に筋トレに励んだ同級生はそれぞれ十数人いたといいます。マッチョな俊英がじわり増えつつある灘。さあ受験生のみなさん、筋トレするのかい?しないのかい?どっちなんだい!
(まいどなニュース・伊藤 大介)