左目の光を失った保護犬 障害ゆえに恵まれなかったご縁 ある日運命の家族が現れた 「ハンデがある犬と人間、きっと仲良くなれる」

2022年3月、保護犬の譲渡活動を行うピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)のスタッフが、動物愛護センターから引き取った一頭の柴犬のワンコがいました。その名ははなまる。推定5歳の男の子です。保護当初から人間に対して警戒心がないことから、元飼い犬と思われます。

人間が大好きで、散歩も大好き。「まるちゃん」という愛称で呼びかけると、笑顔で走ってきてくれる人なっつこさがあります。しかし、こんなに明るく元気なはなまるには、重い障がいがありました。

■はなまるに「片目が見えない」という障がいが発覚

はなまるの左目は少し飛び出ており、眼球が濁っています。獣医さんに検査したもらったところ、失明していることが判明。治療法はなく、はなまるはこの障がいとずっと付き合っていかなければいけません。

ピースワンコのホームページに、はなまるの写真を載せたところ、里親希望者さんからの問い合わせも何件かあったものの、やはり「片目が見えない」ということから、なかなか縁に結びつきませんでした。

それでもスタッフは、はなまるの明るく穏やかな性格、そして、左目以外は健康であることから、根気強くはなまるをケアし続け、ふさわしい里親さんを待ち続けることにしました。

そして、ピースワンコにはなまるが来てから約8カ月後の2022年11月。ついにはなまるの元に、運命の里親希望者さんが現れました。

■新しい里親さん夫婦にも「障がい」があった

この里親希望者さんは夫婦ともに難聴でした。器官の違いはあれど、「障がいがある」という点では、はなまると同じです。

スタッフとの話し合いは、手話通訳を通して行われました。この里親希望者さん家族は、大のワンコ好きで2022年春頃まで、はままるにそっくりなワンコと一緒に暮らしていたそうです。しかし、先住犬は19年の犬生を終え虹の橋へ。あらためてワンコと一緒に暮らしたいと考え、はなまるを見つけたと言います。

当初、里親希望者さんは「保護犬を家族に迎える」ことに、不安が全くなかったわけではありませんでした。保護犬は「人に慣れない」という先入観があったからです。正直なところ、「懐いてくれるかな? 噛まれるんじゃないかな? 引きこもってしまわないかな?」といった不安があったようですが、前述の通り、はなまるはいたって人なつっこく明るく元気な性格です。

スタッフがそのことを伝えると、不安が一掃されたようで「障害を抱えた犬と人間、きっと仲良くなれる。がんばってみたい」と決断。見事はなまるは、この里親希望者さんの家庭で、第2の犬生をおくることになりました。

■当初はネックだった「障がい」こそが縁につながった

はなまるの場合、「障がい」がネックになり、当初こそ縁がつながりにくかった一方、最終的には、その「障がい」が縁を結ぶきっかけになったというわけです。

「きっと仲良くなれる。がんばってみたい」という里親さんの思いははなまるにも伝わったのでしょう。当初こそ新しいお家の中で緊張し、背を向けることもありましたが、すぐに里親さん家族になつき、一家の一員として過ごすようになりました。里親さんは、「はなまるのおかげで、家庭が笑顔でいっぱいになった」と言います。

■一頭ごとに与えられた命を大切に

ピースワンコが保護するワンコたちは、バックボーンや持病が様々です。それでもスタッフは一頭ごとに与えられた命を大切に、愛情を注ぎ信頼関係を結び、必要なケアや訓練が施しながら、新しい譲渡先を見つけ、第2の犬生をおくれることを目指します。どうしても譲渡が難しい持病を持つワンコ、高齢ワンコの場合は、多くの支援者のサポートのもとで、同団体施設で、その命を全うするまで大切にケアし続けています。

これらの試みをもって、同団体が掲げる「ワンコの殺処分ゼロ」を目指し、人間にとって一番の友達・ワンコの笑顔を引き出せるよう今日も活動を続けています。今後のピースワンコの活動にも注目していきたいです。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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