5メートル下の川岸に取り残された迷子犬…消防に協力要請、地上に引き上げて保護 飼い主から届け出なし、なぜ?
2月下旬、福島県いわき市内の川に「犬が落ちている」と、近所の人からNPO法人動物愛護団体「LYSTA」(リスタ)に通報がありました。「LYSTA」の代表・鈴木理絵さんたちが現場に駆け付けると、道路から5メートル下に流れる川岸に犬を発見。
川まで高さがあり降りられそうな場所も見当たらず。鈴木さんたちだけで犬を引き上げることは困難だと判断して消防署に救助を要請したといいます。そして…消防署員の協力もあり、無事に犬は保護されました。
鈴木さんは「おそらく外飼いの子で係留チェーンの金具が経年劣化で外れ迷子になり川に落ちたのかと思います。ただ骨折など体の異常はなかったです。警察と保健所に拾得の届けは出しましたが、飼い主さんの方からの迷い犬に関する届け出はありません。今は私たちのシェルターでの生活パターンに慣れてきた様子です」と話しています。
■老犬にけがはなし 動物愛護団体「長い間シャンプーをされていなかったのか、獣臭が強かった」
保護されたのは、2月24日午前。鈴木さんたちは消防署員の協力のもと、川岸から引き上げる際に暴れて落とさないようにするため犬をバリケン(クレート)に入れて地上の道路まで持ち上げてもらったとのこと。保護された犬は、黒長毛の雌。赤い首輪をしており、係留チェーンの根元の留め具が外れていて引きずっていたとか。すぐに動物病院に連れて行ったといいます。
「年は12歳を越えているようでした。健康チェックとともに一泊動物病院に入院させてもらって、翌日シェルターで迎え入れましたが、2、3日はごはんを食べたらぐっすり寝るの繰り返しで疲れ切っていました」と、犬の様子を説明する鈴木さん。
さらに「長い間シャンプーをされていなかったのか、獣臭が強く、1回シャンプーしただけでは落ち切らず。それにあまりかまってもらうことがなくずっとつながれっぱなしで飼育されていて心が無になってしまっているのか、年齢のせいなのかわかりませんが、あまり感情を感じない子です」と話します。
今回保護された犬と飼い主の関係について、鈴木さんはこう語ります。
「外に係留しっぱなしでご飯だけあげて、お散歩にも行かない、迷子になっても探さないような関係は、お互い幸せなことなのかと思うところがあります。その子の状態によっては飼い主が名乗り出てこないほうがいい場合もあります。大切にされている方ならすぐに探しているでしょうし、探している情報がこちらの保護した情報とすぐにつながっていると思うんです。あらためて犬を飼うとは、犬と共に暮らすとはどういうことなのか…犬を飼っている人、これから犬をおうちにお迎えしたい人たちに考えてもらいたいと感じました」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)