「米イモ」といっても焼酎ではありません 近ホシ、近ナラ…JR車両に書かれた妙な文字列は何?

JRの車両の端部に書かれた漢字1文字とカタカナ2文字の存在が気になっている人もいるかもしれません。鉄道ファンには周知のことなのでしょうが、一般利用客からすれば何かの暗号にも思える、この謎の文字列。実は国鉄時代からの長い歴史と変遷が込められているのです。

例えば、JR西日本の新快速電車や快速電車に使用される主力車両223系や225系には「近ホシ」、普通電車に使われている207系や321系車両には「近アカ」などと記されています。これは、その車両が配置されている基地の名称を意味しているのです。

漢字部分は本社や支社などの所属、カタカナは車両基地の電報略号。「近ホシ」とはJR西日本の近畿統括本部網干(アボシ)総合車両所を指し、「近アカ」なら網干総合車両所明石(アカシ)支所のことです。ちなみに、旧国鉄時代は大阪鉄道管理局管内にあったので「大ホシ」「大アカ」と表記されていました。

こうした電報略号は国鉄時代から使われており、ファクスやメールがなく連絡手段として電話や電報が活用されていた時代、正確に情報を伝達するための符号でした。

カタカナだけでは場所がすぐに分からないケースもあります。例えば、JR西日本の特急「やくも」(岡山~出雲市)や寝台特急「サンライズ出雲・瀬戸」(東京~出雲市、高松)の車両が所属する基地は、少し前までは「米イモ」と表記していました。なんか焼酎のジャンルみたいですが、これは米子支社出雲(イズモ)電車区の意味でした。その後、JR西日本の組織変更で米子支社が中国統括本部管轄となり、出雲電車区も後藤総合車両所出雲支所に変わったため、現在は「中イモ」となってしまったのは残念?!

ちなみに「サンライズ出雲・瀬戸」でペアを組むJR東海の車両が所属する先は「海カキ」。もちろん食べる牡蠣ではなく、東海鉄道事業本部大垣(オオガキ)車両区のことです。

ほかにも、JR西日本の「近キト」(近畿統括本部吹田総合車両所京都支所)、「近ナラ」(同奈良支所)、JR東日本では「盛モリ」(盛岡支社盛岡車両センター)、JR四国の「四カマ」(高松運転所)、JR九州の「本ミフ」(本社鉄道事業本部南福岡車両区)、「熊クマ」(熊本車両センター)などがあります。

ユニーク(?)なのは、JR東日本の「八ミツ」(八王子支社三鷹車両センター)は「ミツタカ」から。「都ハエ」(首都圏本部川越(カワゴエ)車両センター)も「?」。川越がなぜ「ハエ」なのか。「カワ」だと川崎と混同しかねないため旧仮名遣いの「カハゴエ」から「ハエ」となったそうです。また、現存しませんが、「北モセ」は旧国鉄東京北鉄道管理局下十条電車区(=シモジウゼウ)。これまた難解ですよね。

ホーム柵がある駅では見えにくいのですが、皆さんもお暇つぶしに(?)近くを走っているJR車両の文字列を探してみてはいかがでしょうか。

(まいどなニュース・神戸新聞/長沼隆之)

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