廃業続々…北海道の酪農がピンチ エサ代の高騰、千円台まで落ち込んだ子牛の取引価格…「プラスになる見込みなし」
子牛の取引価格下落やエサ代の高騰を受け、酪農業が盛んな北海道で、廃業を決意する動きが加速している。農林水産省の集計によると、2月1日時点で生乳を出荷する戸数は5560戸。1年間で150戸減少しているといい、今年は200戸を超えるとの見通しもある。赤字が続き、3月末に廃業したある酪農家は「祖父の代から50年続いた牧場。悔しい部分はあるけど、仕方ない」と複雑な思いを明かす。
北海道西部の真狩村。従業員の男性(18)は、両親とともに「山崎牧場」を営んでいた。生乳の出荷がメインで、ホルスタイン50頭を飼育。このほか、人工授精して子牛50頭を育てていた。また、牛のエサとなる牧草も作っていたという。
■ 子牛を売るだけで赤字の構図
運営が厳しくなってきたのは、ここ数年だ。特にロシアによるウクライナ侵攻で、エサとなるトウモロコシや大豆がウクライナから十分に供給されなくなり、価格が高騰。山崎牧場では1カ月に200万円ほどだったえさ代が2倍以上の500万~600万円にまで膨れ上がった。
追い打ちを掛けたのが、子牛の取引価格だ。同牧場では、人工授精で生まれた雄牛を年間40~50頭、競りに出してきた。これまで6万~7万円で取り引きされていたが、千円台に急落。「運賃が1頭あたり4千~5千円掛かるんですけど…。子牛を売るだけで赤字になる構図でした」と肩を落とす。
■ トラックに入っていく後ろ姿
電気代やガス代、ガソリン代の高騰などのしわ寄せもあり、牧場は赤字続き。今年1月に農協との経営会議があり、担当者にこう言われた。
「プラスになる見込みがありません」
辞めるのは今しかない、と両親は腹をくくったという。牛舎は別の酪農家に売ることにした。
牛は少し個人に売り出し、3月末には全て送り出した。トラックに入っていく後ろ姿は寂しく、「10年以上、ずっと搾乳をしてくれた牛もいたので…」と言葉を詰まらせる。今後、父親はトラックの運転手、母親はお菓子作りの工場で働くという。男性は転売先の酪農家で働かせてもらえることになった。
「やっぱり、牛が好きですし、一次産業でなくてはならないものだとも思う。何とか、北海道の力になりたいです」
(まいどなニュース・山脇 未菜美)