虐待で足を大けがした猫を保護 切断を迫られたが…皮膚移植手術を決断「また走り回れるようになって」

岐阜県内で虐待を受け、右後ろ足にひどいけがを負ったというハッピーちゃん(推定7、8歳・雌)。2022年5月、岐阜県の保健所に「虐待を受けている」との通報があり、職員が保護した後、猫の保護活動に取り組む非営利団体「ちーむにゃいんず」(代表・南貴浩、拠点・愛知県瀬戸市)が引き取りました。

ハッピーちゃんは、保健所からすぐに動物病院へ。診てもらうと、右後ろ足の皮膚がえぐれて肉がむき出し、既に壊死(えし)している部分があるほど大きなけがを負っていました。さらに傷口の中からきつく巻き付けられ皮膚に食い込んだひものようなものが出てきたといいます。

保護時のハッピーちゃんについて、「ちーむにゃいんず」のメンバー・南ともみさんはこう振り返ります。

「虐待により足を縛られどのくらいの期間を過ごしていたのかはわかりませんが、ハッピーの足は大腿部から足首までの皮膚がただれ、皮もめくれ、壊死した部分もかなりありました。血液検査の数値もとても悪く衰弱していて、生死をさまよう危うい状態だったんです」

■足の一部が壊死 切断するか、自己治癒力で皮膚が再生するのを待つか…

一時は危険な状態だったというハッピーちゃん。何とか一命を取り留めました。しかし、ハッピーちゃんの足について、獣医師からは「切断するか、それとも壊死した部分をはぎ取り治療を続け自己治癒力で皮膚が再生するのを待つか」と選択を迫られたとのこと。そこで、南さんたちは「右後ろ足は動かせるし使えるため、できるなら足を残してあげたい」と思い立ち、自己治癒による皮膚の再生を待つことにしたそうです。

それから9カ月ほど経ち、通院と一日2回の包帯交換を続けてきましたが経過は一進一退。皮膚の再生はほんのわずかでした。そんな中、とうとう恐れていた感染症にかかり傷口の状態が悪化。数件の病院をまわりどの病院にも切断を勧められましたが、わらにもすがる思いで外科専門病院を見つけました。

「当会では協力していただいている病院が何軒かあるのですが、ハッピーの年齢や状態(エイズキャリア)、手術などのリスクを考えると切断する方がいいと言われていたものの、皮膚の再生医療に取り組む専門医のご意見を伺いたくて探して来院したんです。こちらの先生は皮膚移植の手術を勧めてくださいました。『まずは投薬で炎症を抑えて皮膚の再生具合をみてみましょう。できるだけ皮膚を移植する範囲が狭くなればいいですね』と…一筋の光が見えました」(南ともみさん)

■皮膚移植手術を勧める専門医との出会い 一筋の光が見えた 

今年1月から皮膚移植手術を目指して再び治療を開始。徐々に投薬の効果が表れ、これまで使っていなかった右後ろ足を使って歩くほどに改善し、感染症も治まり皮膚も少しずつ再生してきました。獣医師から「移植を考えるのであれば治癒力が高まっている今が最善」と言われ、3月に入り皮膚の移植手術に踏み切ったそうです。

「驚いたことに目に見えてわかるぐらい皮膚が再生し始めたんです。今までとは比べれないぐいらの勢いで、しかも痛みも減っているのか?使っていなかった負傷している足も皮膚がつくように!!わたしもハッピーのお世話をしていただいている預かりの大野さんも本当にびっくりでした」(南ともみさん)

そして、ハッピーちゃんは3回にわたる手術を受けました。1回目の手術でお腹に後ろ足を納め縫合し、2回目は納めた足の下部を切開しお腹の皮膚と縫合。最後の3回目は納めた足の上部を切開、お腹の皮膚をはがし足全体に巻き縫合してお腹と足を分離させました。

■3回の手術は成功、ついに退院 「走り回れるようになって、『ずっとのおうち』を見つけられたら」

手術は成功して術後の経過も良く、ハッピーちゃんは3月25日に無事退院しました。今後は、皮膚の定着具合やリハビリなどを行っていくそうです。そんな虐待を受け大きなけがを乗り越え必死に生きるハッピーちゃん。どんな猫ちゃんなのでしょう? お世話をしている大野さんがこう話します。

「普段はひとりでのんびり日向ぼっこしたり、ほかの子と寄り添って寝たり、おっとりした子。以前の包帯交換でも、痛みで鳴き叫んで大暴れする日もあったけれど、包帯交換が終わればゴロゴロすりすり甘えてきました。人間からの虐待でこんな傷を負ったのに、人間を許してくれる、人間を好きだと伝えてくれる、優しい子なんです。足のけがが治って、元気に走り回れるようになったら…譲渡会デビューして、ハッピーちゃんに真のハッピーをくれる『ずっとのおうち』を見つけられたらいいなと思います」

  ◇  ◇

今回ハッピーちゃんの手術は、術例も少なくかなり難しい手術だったといいます。高額な医療費もかかることもあり、「ちーむにゃいんず」はクラウドファンディング「虐待を受け大怪我をしても必死に生きてきたハッピーを助けてあげたい!」(READYFOR)に挑戦中です。問い合わせは、メールアドレス(nekomadohouse@yahoo.co.jp)まで。

またハッピーちゃんの様子は、「ちーむにゃいんず」のメンバーで全盲の元保護猫「光(ひかり)」ちゃんと暮らす「easy_going_myway」さんのTwitter(@zs41wz3PHyRO0z)で見られます。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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