「孫ができたから、いらない」と捨てられた猫 少しずつ心を開き…第2のおうちでは、すっかり甘えん坊にゃんこに
近年は保護猫を迎えることが当たり前になりつつあるが、世の中には身勝手な理由から動物を遺棄する人がまだまだ多い。ふくくんも、心に刺さる過去を持っている。
元飼い主は「孫ができたから」という理由で、ふくくんを遺棄。ある日、突然ふくくんは大好きなおうちを失ってしまった。
■「孫ができたからいらない」と遺棄された親子猫
ふくくんが暮らしていたのは、熊本県・阿蘇市。お父さん猫、お母さん猫と共に育ったが、1歳ほどになった頃、元飼い主さんは「孫ができたから、もういらない」と言い、親猫とふくくんを家から追い出したそう。
その後、母猫は誰かに連れ去られ、行方不明に。父猫はふくくんと共に約2年間、外猫生活を送り、2019年9月、親子で保護された。
現在の飼い主・ゆりかさんとは2019年12月、道の駅で開催されていた譲渡会で出会ったそう。ふくくんに心奪われたゆりかさんは家族みんなで話し合い、2020年1月からふくくんとトライアル生活を送ることに。
トライアル開始後、ふくくんは慣れない環境であることから、ビクっとしたり隠れたりしていたが、数日後には家族に慣れてくれたそう。その姿を嬉しく思い、より愛しさが募ったゆりかさんは1週間後、ふくくんと正式な家族になった。
家族になった後も、ふくくんはしばらく、こたつの中やゆりかさんのお母さんの部屋にある押入れに隠れるなどし、警戒心が強かったそう。その姿を受けたゆりかさんは、無理に家や人に慣れさせようとはしなかった。
「ふくくんからしたら、知らないとこにきた怖さがあると思ったので、あまりしつこく接触せず、家の中を自由に探検してもらい、近づいてきてくれたら軽く撫でていました」
■警戒心の強い愛猫がストーカーにゃんこに!
そうした猫心に配慮した慣らし方を心がけたからか、ふくくんは次第に心を開いてくれ、今ではすっかり甘えん坊にゃんこに。
特に大好きなのは、一緒にいる時間が多いゆりかさんのお母さん。まるで、ストーカーのように後をついて歩く姿が微笑ましいのだそう。
「猫じゃらしで遊ぶのも、大好き。後ろや横からの抱っこは、あまり嫌がりませんが、正面からは苦手。もしかしたら、連れ出された時の記憶があるのかもしれません」
のんびりと外を眺めるのが好きなふくくんは、テラスで日向ぼっこを楽しむことも。リラックスしている、その姿を見るたび、ゆりかさんの目尻は下がる。
「あと、お昼に『ちゅーる』をあげる際、声をかけても反応がない時に『食べないなら〇〇くんにあげるよ!』と言うと、言葉が分かっているかのように起き上がり、近寄ってくるところもかわいいです(笑)」
そんな愛猫のかわいさを毎日、目にしているからこそ、ゆりかさんは身勝手な理由で動物を遺棄する人に対して、強い憤りを感じている。
「どんな理由であれ、遺棄することは犯罪になるということを理解していただきたいです。もし、やむを得ない事情で手放さなければならないのであれば、責任持って新たな飼い主さん探したり、保護活動されている方とかに相談したりしてほしいと思います」
小さな命が守られる社会であるためにも、動物に関する刑罰ももっと厳しくなってほしい…。そう願うゆりかさん宅で、ふくくんは繋がれた命をキラキラと輝かせている。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)