豪華な「宮型霊きゅう車」絶滅寸前!?全国に約100台 廃車の一方、800万円で高値取引も
葬儀で遺体を運ぶ霊きゅう車のうち、豪華な装飾をあしらった「宮型」が絶滅寸前となっている。現在は、洋型タイプが主流になる中、宮型の利用は減り続け、全国には約100台に。宮型の製造は既に終了しており、年々、廃車になるばかり。オークションに出品されると、数百万円で取り引きされるなど、“レア車”となっている。
■ 10キロ走って5万円超
全国霊柩自動車協会(東京都)などによると、宮型霊きゅう車は、寺院建築などに見られる唐破風をあしらった輿のあるもの。改造した大型車に、ひつぎを納める「宮」を設置。宮は木製で、彫刻を施したり、金箔で覆ったりしてきらびやかに仕上げる。平成初期には、歌手の美空ひばりさん、俳優の松田優作さんの葬儀でも使われた。ロックバンド「X JAPAN」のhideさんが洋型タイプだった。
「宮型が減った背景には、料金的な問題があります。コロナ禍で家族葬も増えて、少ない需要がさらに減りました」と担当者。遺体の運搬で10キロ走った場合、宮型では安くても5万円超。一方、安いミニバンを使うと2万円ほど。費用を抑えようと、洋型タイプの利用が増えた。「葬儀を近所の人に知られたくない」との理由で、洋型車を選択する人も。コロナ禍で葬儀への参列が減り、さらに需要が減ったという。
■ オークション、800万円で売り出し
「使用しない宮型豪華な霊柩車8台あります。欲しい方差し上げます」。3月下旬、霊きゅう車研究家の町田忍さん(72)=東京都=がツイッターに呼び掛けると、瞬く間に依頼が殺到した。霊きゅう車は20~30年前のもので、知り合いに頼まれて譲り先を探していた。廃車で動かず、ほこりもかぶっていた。それでも人気の理由を「希少価値が高いからですね。2、3年前には、オークションで、1953年製が約800万円で売りに出されていました」と話す。
現在、宮型霊きゅう車は全国に100台ほどだと思われる。製造している企業はなく、メンテナンスを行う会社が残るのみという。「宮部分は木製で日焼け防止や湿度管理も大変で、廃車が進んでいく一方です。文化を守っていきたくても、保管が難しいという問題もあります」
(まいどなニュース・山脇 未菜美)