有名人の写真、オンライン会議の背景に使うのはあり?なし? 弁護士「職場で利用する場合は注意が必要」

 オンライン会議中、ミーティング相手の背景の様子が気になることはありませんか。zoomなどのシステム提供元が風景やイラストなどのバーチャル背景を多数提供する中、ネットで見つけたお気に入りのアイドルの写真を使用し、あたかもツーショットで話しているように演出する人もいるようです。SNSでは「推しでzoom背景を作ってみました」などの声も。法律的に問題はないのでしょうか。専門家に教えてもらいました。

■家族とのオンライン通話では使っていいの?

 ネット上の権利侵害対応に詳しい、「弁護士法人戸田総合法律事務所」(埼玉県戸田市)の弁護士、船越雄一さんに話を聞きました。

──家族や友人などとのオンライン通話の背景に、ネット上で見つけた有名人の写真を使用することは法律違反になりますか。

 「肖像権との関係でいえば、不特定多数に公開せず、個人が私的に利用するだけであれば肖像権侵害には当たらないと考えられます。肖像権は、人がみだりに他人から撮影されたり、撮影されたものを公開、利用されることがないよう他者に求めることができる権利で、すべての人に認められている権利です」

 「例えば、家族とのオンライン・ビデオ通話などの際に、その背景画像に芸能人等の写真を用いる分には、みだりに利用されたとして損害賠償や削除を求めることができるほどに違法な行為とはいえないと思います」

 「この点、別の権利ではありますが、著作権との関係でも、私的利用の範囲内であれば、違法ではないとされており、肖像権との関係を検討するうえでも参考になると思います。なお、著作権との関係では、写真が違法にアップロードされたものであると知りながらダウンロードしてしまうと、私的利用であるか否かに関わらず違法となる可能性があります」

──有名人の背景が写った通話画面をスクリーンショットで保存し、SNSに投稿したら問題になりますか。

 「肖像権との関係でいえば、他人の容姿等が写った画像をその人の許可なく公開すれば、肖像権侵害になり得ます。勝手に画像を投稿しただけで、直ちに、削除請求が認められたり、損害賠償請求が認められるほどの違法性が生じるかといわれれば、そう簡単な話ではなく、画像の内容や投稿経緯などさまざまな事情を勘案して判断することになろうかと思います。ただ、肖像権侵害として違法となる可能性はありますので、不特定多数が閲覧できる場への投稿は許可なく行うべきではありませんし、法的な問題以前に、容姿等が写った方との関係でも勝手に投稿すべきではないでしょう」

 「なお、著作権との関係でも、他人の著作物を許可なく公開すれば、私的利用の範囲内とはいえず、著作権侵害となり得ますし、他人の著作物のスクリーンショット行為自体が場合によっては著作権侵害となる可能性もあります」

■職場での使用は?「職場はプライベート空間ではありません」

──では、無許可で取得した有名人の写真を職場のオンライン会議の背景に使用した場合は。

 「社内で利用する、さらには取引先との会議の時の背景に利用するという場合には注意が必要です。まず、取引先との会議の時の背景として利用するような場合、もはや個人的な私的な利用とはいえず、肖像権侵害になりうると考えることもできると思います。また、社内利用の場合、取引先の会議とは異なり、やや私的利用に近いようにも思われますが、職場はプライベート空間ではありませんので、やはり純粋な私的利用ではなく、肖像権侵害となりうると考えられます。なお、著作権との関係では、社内利用は私的利用の範囲内とはいえないと解されていますので、社内の会議用の背景画像などに著作物を著作権者に無断で利用すれば、他の例外規定を満たさない限り、違法となってしまいます」

──オンライン会議の背景を設定するときに、法律的に注意するべきことがあれば教えてください。

 「法的には、あくまで個人的な、私的利用の範囲内での利用であれば違法となることはほぼないと思いますので、どうしても利用したいのであればその範囲でのご利用に留めるのがよいだろうと思います。ただし、例えば、プライベートであっても、数十人に及ぶオンライン通話の際に背景画像で他人の画像を利用した際、肖像権侵害に当たらないかといわれると、当たる可能性があり、グレーになってくるようにも思います」

 「また、自分は私的利用として友人間のみでと思っていたのに、友人の一人が動画配信等で公開していた場合など、意図せず第三者に向けて画像が公開されてしまう可能性があります。この場合に、その友人の行為が問題という事ではありますが、巻き込まれてしまい、ともに責任を問われかねませんので、こういったことも注意が必要かと思います」

 「最後に、他人の画像を無断で利用するという行為自体、法的な問題はさておいて、倫理的に良いのだろうかという事を一度考えてもよいかもしれません。自分の画像が勝手に使われたら、おそらくほとんどの人が嫌なのではないでしょうか」

■公式が配布する例も「利用規約の範囲で適切に利用を」

 映画やアニメの公式サイトやテレビ局などが背景を配信する例もあります。

 前出の船越弁護士は「著作権との関係でいえば、著名なアニメ作品の画像などで背景画像として利用が許されている画像もありますので、その利用規約を確認し、公式サイトからダウンロードして利用規約の範囲で適切に利用する分には問題ありません」とします。

 例えば、NHKは公式サイト内にバーチャル背景がダウンロードできるページを用意しており、NHKのキャラクター「どーもくん」をはじめ、「ドラマ10大奥」「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」「みんなで筋肉体操」などの背景がダウンロードできます。NHKでは「お好きな画像をダウンロードし、Web会議、授業等のバーチャル背景としてご利用ください」と案内すると同時に、「本コンテンツのバーチャル背景は著作権法により保護されています。無断でのバーチャル背景配布やバーチャル背景以外でのご利用は、禁止しております」と注意しています。

(まいどなニュース・金井 かおる)

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