生徒のレポート出典、むかしWikipedia いまYouTuber インフルエンサーの言葉を盲信する子どもたち

“出典”の定義についての話題がSNS上で大きな盛り上がりを見せている。

きっかけになったのは漢文、世界史、小論文などを教える予備校講師の寺師貴憲さん(@tera_shi_ta)の

「学生が出典として「Wikipedia」と堂々と書くという怖い話があったけど、今は

「『滝牙氏によれば』って、これ誰?」

「滝牙(タキトゥース)先生です。歴史系YouTuberの」

「そんなの、出典にならないよ」

「チャンネル登録者数3万超えてるんすよ。フォロワー300人の無名が何イキってんすかww

かな」

という投稿。

匿名、無資格のボランティア編集者によって編集されるWikipedia記事が資料としてあてにならないことは最近ようやく知られてきたが、代わりに若者たちにとって知識の供給源となっているのが、これまた身元のわからぬYouTuberやTikTokerたち。

論文などを執筆する場合、先達の研究や専門知識について記載する際は出典を明らかにするものだが、それを大勢フォロワーがいるというだけで、本当は専門家かどうかもわからない00系インフルエンサーの投稿に依拠してしまうのはいかがなものか。

寺師さんの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「留学同期の先輩(1学年上)と、帰国後に「Wikipedia引用してるヤツがいてヤバい()」って図書館で呆れてたの思い出した。留学でかろうじてある程度のラインが保たれてる状態。」

「今までの世代も『主治医よりテレビの健康番組の内容を信じる』とかあったから人類の信頼に関するバグっぽい気がする」

「なおその出典がwikipediaを出典にしたまとめサイトとかいうオチそう」

「滝牙(タキトゥース)のセンスに嫉妬するwww」

など数々の驚きと共感の声が寄せられている。

投稿者さんに聞いた

ーー学生たちにこういった傾向が見られ始めた時期や、きっかけについてお考えをお聞かせください。

寺師:「Wikipediaを出典にする」については、もう10年以上前によく見かけたり話に聞いたりしたもので、いまは「Wikipediaを出典にできない」は常識として浸透していると認識しています。リプを見る限り院生でやる愚か者は絶滅しているようです。ただ個人ブログなどではまだ見ます。

ーーYouTube等について

寺師:ここ数年のことです。さすがに出典として書いているのを見たことはないですが、根拠として「(YouTuberの)00さんが言ってました」「YouTubeで見ました」と挙げる生徒を、ちょいちょい見るようになりました。子どもたちは、調べるときに、まずYouTubeで調べるらしいです。インフルエンサーの言うことを盲信して、同じことをまるで自分の意見のように口にし、「それ、間違ってますよ」と根拠つきで指摘すると、その生徒がかなり驚く、というケースもあります。

ーー今回の反響についてご感想をお聞かせください。

寺師:今のところ、「チャンネル登録者数が多いYouTuberの言うことが真実に決まってる」的な反論はありません。共感してくれたリプはありました。ただ以前から、インフルエンサーを盲信する子どもたちのことを心配する意見、かつインフルエンサーがわかりやすさを優先して誤りを平気で教えることを批判する意見、その誤りを指摘した結果、信者が猛反発して炎上する様子などは見てます。インフルエンサー=正しいという認識が子どもたちの間で浸透してるなとヒシヒシと感じています。

◇ ◇

論文を書く時に限らず、情報の信頼性を見極めるセンスは生活の至るところで必要になる。テレビやネットで見るから、有名人が言っていたからと無批判に情報を受け入れてしまわないよう心がけたいものだ。

なお、今回の話題を提供してくれた寺師さんは「最短10時間で9割とれる 共通テスト漢文のスゴ技」(KADOKAWA)など様々な教材、参考書を執筆。こちらは身元の明らかな専門家による正確な情報源なので、ご興味のある方はぜひチェックしていただきたい。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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