夫が海外転勤に!「帰国子女」受験を狙って“家族帯同”したけれど…コロナで想定外の事態に 妻と娘2人の決断は

新年度から子どもが最高学年になり、受験を強く意識する家庭も増えるでしょう。受験方法もさまざまで、近年帰国子女を優遇する学校や大学も増えています。夫が海外転勤になったとき、子どもの受験を視野に入れて帯同を決める人もいるでしょう。

中学生と高校生の娘がいるY子さんも、帰国子女枠を狙って夫の海外転勤に帯同することにしました。しかし、コロナにより想定外の事態になった経験があるそうです。

■夫に中国への海外転勤の辞令

Y子さん(東京都在住、40代、専業主婦)の夫(40代、商社勤務)に4月から中国への海外転勤の辞令が下りました。当時、2人の娘は小学6年生と中学3年生。子どもがこの年齢になると、家族の転勤に帯同しない家庭も多く、夫も単身赴任のつもりだったようです。

しかし、Y子さんは違いました。夫の転勤を子どもたちの受験のチャンスだと捉えたのです。中3の娘の高校受験で帰国子女枠の存在を知ったY子さん。大学受験でも帰国子女は優遇されることが多く「娘たちの将来のために帯同するのもありなのでは?」と考えました。

■子どもの帰国子女受験を狙い家族で帯同を決意!

そこで、Y子さんは帰国子女枠がある高校や大学について調べてまとめ、娘たちに見せました。「お父さんの海外転勤についていけば、難しい学校でも帰国子女枠で受験できるよ」と説明すると、娘たちは興味津々。海外生活にも憧れがあったようで、娘たちは「帯同してもいいよ」と言います。

その言葉に1番喜んだのは夫でした。やはり、単身赴任は寂しく思っていたのでしょう。家族でじっくり話し合った結果、夫の転勤への帯同が決まりました。

■転勤後コロナで予想外の展開に…

初めての海外転勤に不安はありましたが、いざ行ってみると生活は快適でした。夫の会社が用意した高級マンションに住み、娘たちは日本人学校に通っているので、中国語が話せなくても不便さは感じません。中国語が必要なときは、夫の会社関連の人が通訳してくれます。マンションには日本人家庭が多く、子どもの学校つながりでも知り合いが増え、Y子さんも楽しく過ごしていました。

しかし、楽しい中国生活はある時期を境に一変します。中国・武漢から始まったコロナパンデミックです。武漢の街が閉鎖されたのが2020年1月。夫の会社の判断は迅速で、転勤中の日本人は帰国するように指示が出されました。しかしY子さんたちが中国に来たのは2019年4月なので、滞在期間は1年未満になってしまいます。

■1年未満では帰国子女の条件が満たされない!

Y子さんは慌てました。帰国子女の条件は海外在住1年以上がほとんどなのです。娘たちが受験を考えていた高校と大学には、海外在住2年以上を基準とするところもあります。今帰国したら、帰国子女としての受験は絶望的です。悩んだ結果、夫だけ先に帰国し、Y子さんと娘たちは中国生活2年経過するまで今のマンションで暮らすことを決意しました。

大変だったのは夫が帰国してからです。Y子さんたちは自己都合で中国に残るので家賃補助はゼロ。高級マンションなので賃貸料は高額ですし、2重生活は光熱費なども倍増します。また、中国生活で困ったことが起きても、もう夫の会社に頼れません。

■こんなはずじゃなかった…

思いがけない出費と生活の不便さ、そしてコロナの不安にY子さんは押しつぶされそうな気持ちになりました。Y子さんも娘たちも中国語はほとんど話せないため、外部とコミュニケーションをとることも一苦労です。困ったときに頼れる知人もおらず、巣篭もり生活のストレスや感染の恐怖もあり、Y子さんは一時期精神的にまいってしまったそうです。

それでも中国生活を2年間続け、娘たちは帰国子女枠で受験し無事合格。目的は果たしましたが、中国生活にかかったお金と苦労を考えると「こんなことなら日本に残っていれば良かった…」と後悔せずにはおれなかったそうです。

パンデミックを予測するのは不可能でしょう。それでもY子さんは当時のことを振り返り、「海外生活にはどんなイレギュラーが起こるかわからないリスクを念頭に入れて決めるべきだと痛感した」と話しています。

(まいどなニュース特約・わたなべ こうめ)

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