多頭飼育崩壊から救出された下半身まひの猫 排せつができずおむつ姿だったが…治療し歩けるように!
2021年10月、個人で活動していた猫の保護ボランティアたちが立ち上げたNPO法人「けだ・まも」(代表・中山亜子さん、東京都足立区)。結成当時、埼玉県内の高齢者夫婦の自宅で「多頭飼育崩壊が起きている」と保護依頼が入りました。この夫婦は数日後に引っ越すとのことで、緊急のレスキューに。「けだ・まも」のメンバーが崩壊現場に足を運ぶと、排せつ物などが散乱した部屋に19匹の猫たちがいました。
その中の1匹におむつをした猫が…夫婦から「10歳くらいで、足が悪いよ」と言われ、渡されました。名前は、ちぃちゃん。とっても体が小さく、下半身がまひして後ろ足は立たず、自力排せつもできない状態でした。
「ご夫婦は不妊手術をせずに猫を飼育したため増えてしまったようです。引っ越し期限が迫り、緊急レスキューとなりました。猫の中で特に体調が良くなかったのがちぃちゃん。ご夫婦に聞くも詳細は不明で、いつから、何がきっかけで下半身にまひが出たのか分からず。年も10歳くらいと言っていたのですが、獣医師さんに診てもらって口の中の状態から保護時は5歳くらいだと言われました。おしっこやうんちがお腹にたまって溢れてくるため、おむつをしていたみたいです」(「けだ・まも」メンバー・福岡さん)
■風邪とけがの治療で通院、しだいに歩けるようになったが…
レスキュー後、風邪や足先のけがの治療を受けたという、ちぃちゃん。下半身のまひは「神経からだろう」とのことで、細かい検査は受けませんでした。またお腹を押すなど圧迫して排尿、排便させることで、おむつを外すことができたといいます。そして、何回か通院しているうちにだんだんと歩けるようになり、トイレも自分で行けるようになったのです。
「治療を続けていたところ、みるみる歩けるようになって驚きました。神経からくるまひの症状だと思ったので、もしかすると今後歩けることは難しいのかなと、諦めていたんですが…」(福岡さん)
■3カ月後に再び歩けなくなった保護猫 検査で「椎間板脊椎炎」と診断
ところが、3カ月後、風邪を引いてしまったちぃちゃんは、また歩けなくなってしまいました。そこで、病院で細かい検査を受けることに。レントゲン撮影と画像解析をしてもらったところ、椎間板に細菌が感染して起こる「椎間板脊椎炎」と診断されました。
「椎間板に細菌などが感染して炎症を起こす病気でワンちゃんに多く、猫では珍しいそうです。脊椎炎の治療は、脊椎炎に効く抗生物質を長期間服用すること。急に歩けるようになったのは、保護当時、風邪や足先のけがの治療で抗生剤を使ったことから一時的に良くなったみたいです。病院に連れて行っていれば早く治ったはず…でも、薬を頑張ってしっかり飲んで、今ではすっかり元気に跳んで走って、もちろんトイレも自分でできてます」(福岡さん)
さらに詳しい検査で、ちぃちゃんは腰椎と肋骨が1本ずつ足りないことが分かりましたが、普段の生活には支障がないとのこと。このほか、膀胱炎の状態だったためか腎臓の一部が石灰化していることも判明。こちらも特にトイレが近いなど不自由なことはないそうです。
■小柄で人懐っこい! かわいがってくれる里親さんを見つけたい
体重は2.5キロと小柄なちぃちゃん。人懐っこくて、自分よりもひとまわり大きな猫が目の前にたちはだかっても物怖じしない性格だとか。病気を乗り越えて、保護された仲間の猫たちと楽しく過ごしています。
「季節の変わり目に風邪を引くなど体調を崩すことが多く、悪化する前に早めに薬を飲ませるようにしています。今後は、できればちぃちゃんだけをたくさんかわいがってくれる里親さんを見つけてあげたいと思っています」(福岡さん)
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「けだ・まも」は、東京都足立区を中心に、野良猫の不妊去勢手術の推進(TNR活動)や地域猫活動のサポート、動物の保護育成、保護動物の譲渡などに取り組むボランティア団体です。ちぃちゃんに関する質問は、団体のメールアドレスまで。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)