建築大工が20年前から半減 平均年収300万円台…待遇改善やインターン導入で若手人材確保の老舗企業も

建築の現場を支える大工が、ここ20年で半数以下に減っている。高齢化も進み65歳以上の割合が3割以上に。不安定な雇用形態が一般化していることなどが背景にある中、正社員雇用やインターン制度の導入などで若い世代を呼び込もうとする企業もある。

5年ごとに実施する総務省の国勢調査によると、2000年に全国の大工は約64万人いたが、2020年の調査では約30万人にまで減少。30歳未満が全体の7%にとどまるなど年齢分布が極端に偏っている。

建設職人を中心に構成する全国建設労働組合総連合(全建総連)は労働環境の改善の必要性を訴える。全建総連が実施した21年の調査では、建築大工全体の平均年収は、雇用主がいる労働者で約364万円、個人事業主(一人親方)でも約424万円にとどまる。電気工や空調・給排水配管工といった他業種よりも下回っている。

全建総連は「技能者の給与は日給月払い制が多いことから現場の稼働日数が収入に直結する」と指摘。能力評価に応じた賃金形態、収入を減らさず適正な工期を確保し休日を増やすといった環境改善を目指して組合運動に取り組んでいる。

■インターン導入の企業も

伝統工法を守る老舗の企業でも、大工の雇用のあり方を見直す動きが出ている。創業96年を迎える奈良市の木造住宅メーカー「イムラ」では、2012年から「社員大工」の採用を始めた。「以前は大工は棟梁に弟子入りして修行を積むというのが当たり前だった」と井村義嗣社長(69)は話す。親方や兄弟弟子たちと寝食をともにし、住み込みで働きつつ一人前になるという時代を見てきた井村社長だが、「そうした不安定な雇用が常識とされてきた業界を変えないと若い人は入ってきてくれない」とする。

同社では、大工として独立するまでにかかる6年間の「修行」期間を正社員として雇用。木材の見極めや木の性質を生かした加工技術について棟梁から学ぶ機会を与えつつ、月々の給与や社会保険などを保証する。経験を積むにつれ収入が増え、入社6年目には年収400万円を超えるという。

さらに、若者が気軽に建設の現場を体感できるようにと、昨年度からインターン制度を導入した。建築の専門学校生が主な対象で、3日間の日程で年齢が近い先輩の話を聞いたり、実際に道具を使って工法を学んだりする。例年1、2人だった入社希望者は、インターン実施後は6人に増えたという。危険を伴う作業もあり、雨の日でも仕事をしなければいけない日もあるなど体力的に厳しい仕事であることもきちんと伝えることを心掛けているという。井村社長は「現場の年齢構成を考えてもここ2、3年の採用が正念場。しっかり若い人にアプローチしたい」とする。

同社は奈良県川上村の高級木材「吉野杉」にこだわり、これまで約1100棟を手掛けてきた。井村社長は「お客さんの夢を形にできるのがこの仕事。その魅力と匠の技を引き継いでいきたい」とする。

(まいどなニュース・小森 有喜)

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