脳梗塞と診断され寝たきりの老犬 仲間たちが起こした奇跡の回復 旺盛な食欲は「掃除機の吸引力」レベル
殺処分寸前のワンコは、生まれたばかりの子犬から老犬までさまざまです。そして一頭ごとにその背景も健康状態も違います。「高齢である」「簡単には治らない病気がある」「体に障害がある」といったワンコもいます。そうであっても、1頭でも多く保護し、殺処分ゼロを目指している団体がピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)です。
ある日、同団体に引き取られた推定4歳のメスのワンコ、アンドレアも持病がありました。
■全く立ち上がることができなかったアンドレア
保護当初のアンドレアは、全く立ち上がることができませんでした。スタッフは保護した後すぐに病院に連れていきアンドレアを診てもらうことにしました。
しかし、獣医師が様々な薬を試し、ケアを施してもやはりアンドレアは立つことができません。さらに獣医師は「脳梗塞を起こしたのではないか」と推測しました。
脳梗塞によって脳細胞を再生することが難しくなりますが、周りの細胞が失ってしまった機能を戻そうと、カバーする動きも現れます。しかし、この場合は科学的に有効な治療法があるわけではないため、とにかく栄養補給し、今存在している細胞に「元気になるお手伝い」をしてもらうことが重要です。獣医師は「今はゆっくり回復を待つのが一番の選択肢ではないかと思います」と話しました。
この助言を踏まえ、服用はビタミン剤のみとし、アンドレアの回復を希望を持って待つことにしました。そして、「いつか立ってくれるように」と願い、献身的な世話を続けました。
■寝たきりだったアンドレアが突然立ち上がった
ずっと寝たきりだったアンドレアですが、ある日のこと。突然ムクっと立ち上がり、そして歩けるようになりました。壁づたいでヨタヨタしてはいます。それでも、確かには自らの足で立ったのです。
アンドレア自身の「自分で立ちたい」「自分で歩きたい」という強い思いがそうさせたのでしょうし、そして、スタッフの強い思いが奇跡を呼び起こしたようにも思います。
これをきっかけにスタッフは慎重にリハビリテーションを行うことにしました。そのときのことをスタッフはこう振り返ります。
「最初は全然歩けなかったのですが、5~6回お散歩に出かけると、静かな場所では歩けるようになりました。回復はとても早いと感じています。もともと人なれしていなかったアンドレアなので、人間にはまだ警戒していますが、ワンコ同士ではとても仲良く過ごすようになりました。アンドレア自らから他のワンコに引っ付いて歩いていくようにもなりました」
■回復後のアンドレアは「掃除機のように食べる」
アンドレアは、ご飯の際、ビタミン薬を混ぜて服用させる必要がありますが、自ら立ち上がり、歩けるようになったあたりから特に食欲旺盛になりました。スタッフは「掃除機のように食べる」と言いますが、この食欲もアンドレアの回復の源になっているのかもしれません。
寝たきりだったアンドレアですが、専門的知識を持った獣医師、細かいケアを施してくれるスタッフ、仲間のワンコたちがいる環境で、奇跡的な回復を見せてくれました。そして、このアンドレアのケアに関わる費用などは、ピースワンコの制度「ワンだふるファミリー」の支援者の方々によるものでもありました。アンドレア自身の「立ちたい」という強い意志があったことが一番ではありますが、こういった多くの人たちからの支えや思いも、多大な力になったことは言うまでもありません。
現実的には、アンドレアのようなワンコは、新しい里親さんに譲渡することは難しいものです。しかし、そうであっても同団体では生涯にわたり施設でお世話をし続けます。このことも同団体が掲げる「殺処分ゼロを目指す」活動の一つです。
(まいどなニュース特約・松田 義人)