オリックス森の新応援歌が「かっこいい」と話題…どのように作詞作曲? ”リサーチ力がすごい”応援団員に聞いた
プロ野球オリックスにFAで加入し、活躍を続ける森友哉選手(27)。打席に立つ際にファンが口ずさむ応援歌が「かっこいい」「渋い」と話題になっている。作詞作曲を担当した私設応援団・大阪紅牛會(こうぎゅうかい)の初代会長で応援統括プロデューサーの和田益典さんに、詞やメロディーに込めた思いを聞いた。
"RED"版と"WHITE"版という2パターンがあるが、まず演奏機会が多い前者の歌詞は次の通りだ。
【前奏:友哉 友哉 豪! 豪! 森友哉! 】
(奇数回)見果てぬ先を追い求め 豪胆に 豪傑に いざ快哉(かいさい)の時へ
(偶数回)見果てぬ先を追い求め 豪胆に【構え】豪傑に【放て】快哉の時へ
※【 】内はシャウト
森選手は入団会見で「中嶋監督がキャッチャー出身なので自分もレベルアップできると思った」と、移籍を決めた理由を明かしている。和田さんは「森選手ほどの超一流プレイヤーが、さらなる高みを目指すべくオリックスに来てくれたという背景をふまえて曲作りを始めた」とする。冒頭の「見果てぬ先を追い求め」というフレーズにその思いを込めた。見果てぬ、の後に来る単語としては「夢」が一般的だが、より先へと突き進んでいくイメージを持たせようと「見果てぬ先」としたという。
■オリ応援歌の歌詞は団員の徹底リサーチから生まれる!
オリックスの応援歌の歌詞は、応援団員がおのおの、選手についてつぶさに調べて関連・連想する単語のアイデアを持ち寄って作り上げる。例えば沖縄選手・大城滉二選手の「ハバチューバー(凜々しき強者)」や群馬出身・安達了一選手の「張っ飛ばせ」のような地元の方言も、こうした作業を経て歌詞に取り入れられたものだ。今回の詞を考える際も、和田さんが団員がまとめたフレーズ集を参考にし、メロディーとの兼ね合いを見ながら言葉を紡いでいった。
そんな中で採用されたワードの一つが「豪胆」。あまり聞きなじみはないが「度胸が座っている」「大胆に物事を処する態度」といった意味だ。「度胸満点の森選手にピッタリの言葉だと思った」と和田さん。キャッチャーとしてどっしりと座り構える、という意味も含めている。シャウト部分の「構え」もバッターとキャッチャー二つの意味を掛けた。最後の「快哉」(愉快だと思うこと、胸がすくこと)も、選手の名前にちなんで取り入れている。
メロディーについては、後半で高音になったり輪唱したりするケースも検討したというが、結果的に現行案を選んだ。森選手は大阪府堺市出身。どことなく「いてまえ魂」も感じる勇ましい旋律に乗って、豪打を放つ姿に期待したい。
一方、"WHITE"版は「とにかくシンプルさを重視し明るく弾む痛快なメロディーや晴れやかなイメージで作った」と和田さん。歌詞はこうだ。
見果てぬ先へと行く強靭な様
豪胆に 豪傑に さぁ快哉叫べ
さらに、これ以外にも"RED"版のキーを上げ太鼓を4連打にした"DEEP RED"版もある。試合展開によって使い分けていくというが、どういった場合にどのバージョンを演奏するのかはあえて発表していない。和田さんは「球場に足を運んでもらいながら理解していってもらうのも面白いかなと思う」と話している。
■「歌いやすさ」を徹底的に追求
ことほど左様に、オリックスの応援歌は一人の選手でもさまざまなパターンがあることが多く、複雑なことで有名だ。AメロやBメロがあるのは当たり前で、「勝鬨(かちどき)」「気魄(きはく)」など難読漢字も少なくない。それは「応援歌を覚えて歌う楽しさを感じてほしい」という意図からあえてそうしているという。難しいからこそ努力して覚えて、みんなで声を合わせて歌う楽しさがあるというわけだ。
覚えるのは難しい一方で「歌いやすさ」には細部までこだわって作詞作曲している。森選手の応援歌であれば「見果てぬ先を追い求め」の「を追い」の部分。母音が3連続で重なるため注意が必要な箇所だという。「い」でぐっと下がる音階にすることで、会話中での「追う」と同じ感覚で自然に発音できるようにした。
■3年ぶりに戻ってきた声出し応援
新型コロナウイルスの感染拡大以降、禁止されていた声を出したり楽器を使ったりした応援が今シーズンから解禁された。オリックスの本拠地京セラドーム大阪にも、連日トランペットの音色や歓声が響く。
大阪紅牛會の谷口一雄会長は「とにかくお客さんが楽しそうで、それが何よりです」と笑顔を見せる。「皆さん応援歌が歌えることを待ち望んでいたんだなと感じる。見ている僕らもうれしい気持ちになります」。応援団歴21年目になるという谷口さんだが「にぎやかな球場が当たり前じゃないんやなと。かみしめながら毎日応援しています」と話す。
声が出せなかったコロナ禍では、手拍子の応援パターンを制作するなどしてファンの思いをいかに選手に届けるか模索してきた。手拍子応援の一部は、今シーズンからも使えるよう、手拍子の箇所を掛け声を変えるアレンジを施して引き続き活用している。谷口さんは「3連覇に向け、全力の応援で選手を後押ししたい」と話している。
(まいどなニュース・小森 有喜)