【きょうだい児って?②】筋ジストロフィーの姉に積もるイライラ 友達にからかわれ、家でうるさく…高3男子「むかついて殴った」

神戸市内に住む高校3年のコウタ(18)には、4歳年上の姉、ユウナ(21)がいます。体の筋肉が低下していく「筋ジストロフィー」という病気。コウタのように、兄弟姉妹に障害者がいる人たちは「きょうだい児」と呼ばれています。コウタが小学生の時、車いす姿の姉を見た友達からからかわれたそうです。「何かむかつく」と、姉に対してイライラが募っていたことも。何があったのか、ちょっとだけのぞいてみたいと思います。

■車いすで遊ぶ姉弟

3~4歳のコウタ。お姉ちゃんと仲良く遊んでいた。楽しかった記憶が「ヤドカリさん」という遊び。お姉ちゃんは小学校低学年で、手で動かす自走式車いすに乗っていた時期だ。でも、手に力が入りにくくなり、自分で動かすことが難しくなるように。

「息子は、車いすが格好いい乗り物だと思ったのかな。突然、車いすの足元(フットレス)に座って手でこぎ始めたんです」と母のヒロミ(44)。「あっち行って。ストップ!」。お姉ちゃんの指示に従って、コウタが車いすを動かした。

■「うるさい!」。お姉ちゃんを殴った

関係が悪くなったのは、コウタが小学4年生の時。友達の質問がきっかけだった。「お姉ちゃん、何で車いすなん?」。聞かれて、戸惑った。これが普通だと思ってきたから、何も思わなかった。「分からん。ずっと車いすやねんもん」と返すしかなかった。次に言われたのが「障害者なんやろ」。嫌みな感じ。耐えて黙る。いつしか、友達にお姉ちゃんと一緒にいるところを見られたくなくなっていた。

お姉ちゃんはそんなこと、お構いなしだ。家に帰ると、大音量の動画や音楽が流れて、それを見てけらけらと笑っていた。リビングで専用のいすに座っていて、一人でよくしゃべる。静かに過ごしたいのに…。コウタがそう思っても、自分では歩けないため「背中かいて」「あれ取って」と矢継ぎ早に頼みごとが飛んできた。

うるさい! 思った瞬間、お姉ちゃんの頭をこぶしでなぐっていた。イライラがピークだった。

■似た境遇の人との出会い

 息子が学校でからかわれている-。母のヒロミは、人づてに聞いていた。お姉ちゃんを乗せて車いすで外を歩く際、コウタを見つけると隠れた。それでも止まらぬけんか。もう家で2人にできない状況になっていた。

「きょうだい児では、あるあるですね。コウタ君も同じ立場の人と会ったら、見方が変わるかも」。お姉ちゃんが通う特別支援学校の先生に、きょうだい児が集まる宿泊イベントを紹介された。同じ立場の人と話す機会が用意されるという。

宿泊施設の大部屋。イベントに参加したコウタは数人でグループになり、家族について順番に話した。ある人は、障害のある弟は怒られず自分ばかりが怒られる理不尽さを語り、別の人は母親に何でも頼られるのが嫌だと話していた。いろんな家族があり、いろんな人がいた。コウタが話すと、周りはうなずいて、共感してくれた。「似たような悩みがある人がいて、そんなもんかって思った」

 18歳。コウタは今も、きょうだい児の集まりに顔を出す。「お姉ちゃんのことは嫌でもないし、好きでもない。何とも思ってないかな。集まりに来るのは…会わなくて済むっていうのはある」

家では自分の部屋で過ごすことが多い。それでも、忙しいお母さんを助けるため、ベッドで過ごすお姉ちゃんのお世話を手伝うこともある。来年は高校卒業。就職して、いつかは1人暮らしをしたいと考えている。「家はお姉ちゃんがしゃべるから、うるさいねんもん(笑)」 

(次回は、結婚・出産に悩むきょうだい児を紹介します)

(まいどなニュース・山脇 未菜美)

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