保護された母犬が産んだ4頭 唯一行き先が決まらない子犬と愛情注いだスタッフ 「引き取る資格があるのかな、私に」

殺処分寸前で保護されるワンコの中には、赤ちゃんをみごもっているケースもままあります。多くの保護団体ではこういった場合、そのお母さんワンコを引き出した後、懸命に出産の世話をし、生まれた子犬のお世話もします。

ある日、保護団体ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)が動物愛護センターで引き出したワンコもすでに妊娠しており、収容と保護をまたいで5頭のワンコを産みました。

■同じ時間を過ごした子犬と若手スタッフ

数多くのワンコたちに接してきたピースワンコのスタッフは、お母さんワンコはもちろん、新たに誕生した4頭のお世話も、適切かつ献身的に行いました。そんな中、同団体の若手女性スタッフの仁尾さんも、先輩に教わり子犬たちを世話しました。

お母さんワンコを含め、子犬たちは新しい里親さんへ譲渡されましたが、そんな中、メスのミルクだけが残ってしまいました。仁尾さんは他の子犬たちと同様、ミルクにも惜しみない愛情を注いでいたことから、「私が個人的にミルクを引き取っても良いかな」と考えるようになりました。

■スタッフが悩んだ「ワンコを飼う資格」

ここから仁尾さんは悩みます。「保護犬のお世話をする」という仕事をしながら、並行してミルクを幸せにすることができるのか、とても不安に感じていたからです。

仁尾さんは、犬舎での保護犬の世話だけではなく、レスキュードッグになった元保護犬を連れて災害現場に出向くこともあります。この間のミルクのお世話をどうすべきかなど悩みに悩んだそうです。

しかし、ミルクとの絆は日を重ねるごとに強くなっていき、個人で引き取ることを決心。当初不安だった「保護犬のお世話と、ミルクのお世話を並行して行う」ことを徹底することにし、そして、出張などでどうしてもミルクと離れないといけないときは、同団体の施設に預かってもらうようにお願いすることにしました。

■出張中、ミルクの写真を見て「がんばろう」

こういった仁尾さんの真摯な思いは、ミルクにも通じているようで、仮に出張などで留守番しないといけないときでも、いつもお利口さんに過ごしているそうです。

ピースワンコの他のスタッフが、出張中の仁尾さんにミルクの写真で送ってくれることもあります。スタッフへの感謝とともに「明日も現場でがんばろう」といった思いになるのだそうです。「保護犬とスタッフ」という関係から「家族」となったからこその力を、仁尾さんはミルクから受け取っているように思いました。

■「いつも一緒にいてくれてありがとう」

ミルクは穏やかな性格で、現場から仁尾さんが帰ってきたときも、「おかえり」といった表情で迎えてくれます。

そんなミルクにいつもホッとさせられるばかりの仁尾さんですが、気づけばミルクは8歳に、そして仁尾さんはピースワンコの犬舎スタッフとして9年目になりました。

若いころは、黒かったミルクのまつ毛や体毛も白くなってきました。ミルクもだんだんとおばあちゃんになってきたようです。仁尾さんとふたりで過ごしてきた年月が伺えます。

ただし、今日も健康そのもののミルクは、嬉しそうに尻尾を振りながら仁尾さんとお散歩を楽しんでいます。

食が細めのミルクですが、さらに歳を重ねていくことを考え、「もう少し太ってもらうこと」が仁尾さんの直近の目標だそうです。普通のドックフードだけでは食べないこともあるので、少々高級な食材を混ぜたり、水を足したりしながら「食べてくれる工夫」をしているとのこと。

隣に寝転ぶミルクを撫でながら、仁尾さんはこう語ってくれました。

「いろいろしんどいときに、ミルクが側にいてくれただけで救われたこともたくさんありました。ミルクにはこれからも長生きしてもらって、『いつも一緒にいてくれてありがとう』と伝えていきたいと思っています」

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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