「冥王星に落下すると」「旅客機から落下したら」…どうなる? ”もしも科学”で大人気のYoutube『VAIENCE』 気になる「低~い声」の秘密
■話題のナレーターに直撃
科学的根拠に基づいたシミュレーションと案内役のナレーターによって、極限の状況を再現するサイエンス動画が人気を博し、現在のチャンネル登録者数は160万人を越える。
SNSでは「声」にも注目が集まっている。落ち着いた低音で、甘く魅力的なナレーションは聴いた人々を虜にしているようだ。「いったいどんな人が?」との憶測も飛び交う。
そこで、本人を取材した。
VAIENCEのメインナレーターと「Mr.バイエンス」役を務める声優・ナレーターのベルべる☆こと鈴村一也さん。VAIENCEに参加することになった経緯やプライベートの話から、時代に合わせて様々な変化を遂げる、現代の声優・ナレーター像が見えてきた。
■登録者160万人を支える「声」
ーー 「VAIENCE」の声を演じているベルべる☆さんですね!
ベルべる☆: はい、声優・ナレーターのベルべる☆こと鈴村一也です。TVCMや番組ナレーションのお仕事のほか、「バイエンス」以外のYouTubeチャンネルでは「ヒューマンバグ大学」の瓜生龍臣役を演じています。
ーー ベルべる☆という名前の由来は?
ベルべる☆: 「鈴村」の鈴=ベルからです。中学生の頃、クラスの女の子につけてもらった「ベルベル」というあだ名を、長年ネットのハンドルネームや芸名として使っています。最初は全部カタカナでしたが、「へのへのもへじ」みたいな顔文字にするために「る」だけひらがなにしました。
ーー 「VAIENCE」は動画のテーマとともにナレーションも人気ですが、ここまで伸びると思わなかったのでは?
ベルべる☆: 正直驚いています。僕はナレーターだけなのでチャンネル運営には携わっていませんが、物凄いことだと思います。
100万人を超えたあたりから、わざわざ僕のホームページやTwitterのDMから、制作会社様や企業様から直接「バイエンスの声の大ファンです!ぜひナレーションを」というご依頼をいただく機会が増えまして、まさかこんなことになるとは思いませんでした。
声の業界では「いやいや、Youtubeのナレーションなんて(笑)」というような風潮がまだ残っているんです。たしかに素人でも出来てしまうため玉石混合なのも事実ですが、引き受けて本当に良かったです。感謝しています。
ーー 2020年5月の動画投稿開始時からナレーターとして参加されていますが、どのような経緯がありましたか?
ベルべる☆: ちょうどコロナ禍に入った頃です。広告業界も自粛で、仕事が減って暇になったところで、かつて「ニコニコ動画」などに投稿していた、アニメの声マネ動画を再開したんですよ。その頃に声をかけていただいたのがバイエンスでした。
実は、僕の拠点は今も東京ではなく名古屋なんです。ナレーションは防音室を購入して、自宅で収録・整音して納品する「宅録」というスタイルを続けています。
ーー 「VAIENCE」の収録で1番印象に残っている動画は?
ベルベる☆: おバカの最高峰「光速う〇こ」・・・と言いたいところですが、実はバイエンスにおける真面目な回もかなり印象深く、宇宙実験で犠牲になった犬「ライカ」のお話は読みながら泣きそうになりました。
■はじまりは「声マネ」
ーー 声のお仕事を目指したきっかけはありますか?
ベルべる☆: 初めて声優という仕事を知った作品は、小学生の時に見た「ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー」ですね。声優さん達のアドリブ合戦が凄かった。「クレヨンしんちゃん」でひろし役を演じていた藤原啓治さんが「ダイノボット」というキャラで出演されていましたが、いきなり劇中で「みさえー!!」って叫ぶシーンがあったんですよ。しかも他局なのに(笑)。
「あれ?この声知ってるぞ?同じ人なの!?」と、世界がひっくり返って。それからはビーストウォーズに出てくるキャラの声マネをしまくりました。後に、出演していた千葉繁さんと高木渉さんにお会いする機会があって、その時はビーストウォーズ愛を熱く語ってしまいました(笑)。最近、おもちゃのPVナレーションのお仕事もいただき、感動しています。
ーー 尊敬している声優さんはいますか?
ベルベる☆: やっぱり大塚明夫さんですね。「メタルギアソリッド」シリーズが大好きで。声の重厚感はもちろんですが、大塚さん演じるスネークが叫んだ時に、周りの空気がバーンと後ろに蹴飛ばされるみたいな感覚があって、一瞬で虜になりました。
それからは大塚さんの演技を聴いてはマネをして、の繰り返し。声マネで大塚さんになりきることで体幹を意識するようになり、背筋が伸びて姿勢や考え方も変わった。ナヨナヨとしていた僕に、自信に溢れた屈強な漢の役が入り込んできたんです。
ーー どのような学生生活を送っていましたか?
ベルベる☆: 小学生の頃は運動音痴で、他の人が出来ることがなぜか出来なかった。ずっといじめられっ子でしたね。でも中学の頃に急に声が低くなって。合唱の時も僕だけ別の低いパート。それこそ、大塚さん系の低い声が出るようになったんです。それで保健委員の出し物で「ホケンジャー」っていう戦隊モノの小芝居を低音ボイスでやってみたらバカ受けして。喋るたびに笑いが起きて、声マネされたり話しかけられるようになりました。イジメが、いじりに変わったんです。
この経験は大きかったですね。高校時代は社会人劇団で大人と一緒に芝居をしました。そこでも演じたのは低い声の悪役が多くて、評判も良かった。声も含めて自分を好きになれました。
■東京を目指さなくてもいい
ーー それから声優を目指すことに?
ベルベる☆: いえ、そうはいかなかった。だって声マネしているご本人達が現役で仕事をしてらっしゃるんですから、かなうわけがない。低音域は大塚明夫さんに似ていたし、中音域は山寺宏一さんや杉田智和さんの声に近いねと言われ、「じゃあ自分は何をしたらいいんだ」という感じ。
ーー 声優としてのオリジナリティが見つからなかったんですね。
ベルべる☆: ただ声の仕事は諦めたくなかった。だから専門学校に通い、名古屋の芸能事務所でナレーターとして本格的に活動しました。逆にいろんな声が出せることは名古屋では武器だったんです。特撮ドラマ「黄金鯱伝説グランスピアー」の黒鯱役の声優や「猫企画」「シキザクラ」といったアニメの声優、外画の吹替など、今では様々なお仕事をさせていただくようになって。
バイエンスのヒットも大きかった。バイエンスは自分の1番出しやすい中音やや上くらいの地声で楽に喋っています。それが評価されて「あぁ、名古屋在住で、地声のオリジナルでもここまで勝負出来るのか」と自信になりました。
ーー 声優に限らず芸能関係者は東京・大阪に局地化しています。あえて中心を目指さない、というスタイルは面白いですね。
ベルべる☆: いまは、設備を揃えればどこに住んでいても宅録できる時代です。バイエンスも名古屋の自宅で収録しています。
「地方在住ナレーター」が認知され、評価される時代になって欲しい。僕は名古屋在住でも、声だけで食べているし、夢のリストを次々と叶えることができました。
東京進出がマストではない。それを自分自身が1つの成功例として後輩や生徒に示せる存在になりたいですね。選択の可能性を広げたいんです。
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◆鈴村一也(ベルベる☆)
名古屋在住の声優・フリーナレーター。フリーナレーターズユニオン 理事。インプロ(即興演劇)チーム・しばいぬ海賊団 共同主宰。
出演に日本テレビ「究極のスポーツ大戦 ブーストイ★スタジアム」、東海テレビ「ボイメンのギャラ100!」、テレビアニメ「シキザクラ」、特撮ドラマ「黄金鯱伝説グランスピアー」など。YouTubeチャンネル 「VAIENCE(バイエンス)」「ヒューマンバグ大学」などにも出演。
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▽アニメのお時間です!by aucfan
(まいどなニュース/BROCKメディア)