動物愛護センターの暗く冷たい部屋 「置いていかないで」と瞳で訴える子犬 心室中隔欠損という心臓病を抱えていた 

2022年11月、広島県内の動物愛護センターの暗く冷たい部屋で、1頭だけ尻尾をブンブン振り、人と遊びたそうにしている元気なメスのワンコがいました。推測ですが生後3カ月くらいの遊びたい盛りのかわいいワンコです。多くのワンコを保護し、新しい里親さんへとつなぐ活動を行うピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)ではこのワンコを引き上げ、「ちゃみ」と名付けました。

■心室中隔欠損という病気の疑い

スタッフによると、ちゃみはまるで自分たちを待っていたかのようで、スタッフと目が合うと、柵越しから「置いて行かないで」と言わんばかりの瞳で見つめてきたそうです。

動物愛護センターから事前に聞いたのは「心臓が悪い可能性がある」ということ。スタッフはちゃみを引き出した後、すぐに病院に連れていき、詳しい検査をしてもらいました。結果、ちゃみの心臓は、左心室が通常よりも小さく、一方で右心室が大きいことがわかりました。心臓の右側と左側を隔てる壁(中隔)に孔が開いてしまっている「心室中隔欠損」の疑いです。お医者さんによると「右心系への負荷が大きく、病気が悪化する可能性が高い」とも言います。

検査後、ちゃみは毎朝心臓の薬を飲むことになりました。しかし、ふらつきなどの副作用が出てしまう場合は、服用を休まないといけません。そのため、スタッフはちゃみの様子を念入りに観察することにしました。

■ご飯の前は「お座り」で落ち着かせてから

普段のちゃみはいつも明るく元気いっぱいのワンコです。しかし、少し動くと息切れを起こし、苦しそうなしぐさをします。また、食べることも大好きなちゃみですが、ご飯の時間になるとうれしさのあまり興奮し、結果的に心臓に負担がかかってしまうこともあります。

このため、スタッフはまずちゃみがご飯を食べる際には、まず一度「お座り」をさせ、落ち着かせるようにしました。そして、ご飯を手のひらに乗せて、ゆっくり食べさせることにしました。心臓への負担軽減のためが一番ですが、勢いよく食べすぎて、むせたりご飯が詰まったりしてしまうリスクをなくす効果も期待してのことです。また、お散歩にももちろんスタッフと一緒に行きますが、あまりのうれしさから、ちゃみが興奮しそうなときは、抱っこして歩かせないようにするなどの配慮もするようにしました。

■「待て」ができるワンコになった!

本来であれば、ワンコが過ごしたいようにさせるのが一番です。しかし、ちゃみには心臓病があるため、我慢してもらうしかありません。もちろん、スタッフにとっても、病気のないワンコよりも確実に負担は増えます。

このように、ちゃみの健康を最優先にお世話していくしかないのですが、こういったスタッフの願いはちゃみにも通じている様子。スタッフの言うことをきちんと聞き、特にご飯のときなどは、スタッフの前で、がっついたりフライングで食べようとすることはいっさいありません。少しずつ少しずつ、スタッフの手から直接ご飯を食べてくれています。

ちゃみのお世話をしているスタッフはこう語ります。

「ちゃみはちょっと動いただけで、しんどい思いをしていると思います。それでもちゃみ自身のペースを最優先に、まだまだこれからも色々なことを楽しみながら、元気に生きていって欲しいなと思っています」

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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