河野万里奈が甲子園のマウンドで夢をかなえるまで 4年間の活動休止を経験して見えた景色
シンガー・ソングライターの河野万里奈が「歌手になって始球式をする」という幼少期からの夢を実現させた。2日、阪神・岩崎優投手の登場曲「アイキャントライ」を歌っている縁で、同選手の背番号13のユニホーム姿で登場。甲子園のマウンドから投じた1球は見事なストライク投球となった。
■4年間の活動休止を経て
2010年に開催された第4回全日本アニソングランプリで優勝し、翌年に大手レコード会社から歌手デビュー。小さな頃からの歌手になるという夢はかなえたものの、なかなか芽が出ず、事務所との契約は終了。浮上のきっかけをつかめないまま、もがき続け、気がつけば約4年の月日が経っていた。
活動休止期間はばっさりと髪を切り、わざと似合わない髪型にしたこともあった。全てを歌に捧げてきた生き方も変え、社会勉強のため、接客のアルバイトもした。
ただ、当時を振り返ると喋る技術が全くと言っていいほどなかったという。人と話をすることですらストレスを感じ、自宅のガスが故障した際、電話で修理依頼をお願いするときにどう話していいかも分からなかった。人との「コミュニケーションを克服する4年間だった」とも話す。
暗いことを考えるのが嫌いで「野球ツイート」をし続け自分を野球に投影し「ビハインドでも粘り強く投げ続けるリリーフが好き」などとツイートし自身を鼓舞し続けて来た毎日だった。
■鳥谷氏の決断が歌手活動再開のきっかけ
浮上のきっかけを見い出せず、関係者から「野球好きタレントやアイドル的な売り方だったら拾えるよ」と言われたこともあった。そんなとき、阪神を自由契約となり現役を続行するか、その去就が注目されていた鳥谷敬氏の決断が、河野の背中を押すこととなった。ロッテに移籍し、現役続行を決めた鳥谷氏を見て自分も最後まで「歌手として活動する」と決めた。のちに岩崎優の登場曲となる「アイキャントライ」ができたのは、ちょうどそのころ。鳴尾浜で汗を流す若虎たちのために作った曲だった。
クラブハウスで、対面した岩崎からアイキャントライの歌詞にある「挑み続けるあなたに栄冠を」の部分が好きだと言われ、自分の決断は間違っていなかったと自信を深めた。始球式前に、甲子園初となる球場外周ステージで行ったライブも大盛況。始球式の大役を果たした後、涙を流した河野、今後も歌詞同様、歌手人生を挑み続ける。