もしもの際に備えて知っておきたい!銀行口座の相続手続きについて【FPが解説】

身内にもしものことがあった時、銀行口座の相続手続きはどうしたらいいのでしょうか。「口座の名義人が亡くなったら、口座が凍結される」といった話を聞いたこともあるかもしれませんが、本当なのでしょうか。いざという時のために、銀行口座の相続手続きの手順や注意点について解説します。

■口座の名義人が亡くなった場合の手続きの流れ

口座の名義人が亡くなった場合の一般的な手続きの手順は、以下の通りです。

【1】預金口座を確認する

まずは、亡くなった方がどの金融機関に口座を持っていたか確認します。

遺言書がある場合は、そこに記載されている内容から確認できますが、無い場合は預金通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物などから、どの金融機関に口座を持っているのか把握しましょう。

なお、亡くなってから慌てて金融機関の詳細を調べるのではなく、普段から「〇〇銀行を利用している」といった最低限の情報を家族間で共有しておくと手続きがスムーズです。

【2】金融機関へ連絡する

預金口座の確認が出来たら、金融機関へ口座の名義人が亡くなったことを連絡をします。

連絡手段には金融機関への来店や電話のほか、インターネットのWebフォームによる受付を行っている金融機関もあります。

相続手続きの書類には、金融機関ごとに所定の用紙があります。

用紙は、窓口へ来店するか金融機関によっては、Webサイトからダウンロードすることで入手することもできます。

店舗に来店すると手続きに必要な添付書類や疑問点をその場で確認できるため、窓口を利用すると良いでしょう。

【3】必要書類を準備する

必要書類は、市町村役場での書類の取り寄せや相続人全員の署名・捺印が必要なものもあり、書類を揃えるまでには時間を要することもあります。

また、必要な書類が多く複雑なため、必要書類を1つ1つ確認してから取り寄せに着手しましょう。

【4】金融機関で手続きを行う

全ての書類の準備ができたら、金融機関へ提出し手続きを行います。窓口の手続きのほか、郵送での手続きも可能です。

亡くなった方の口座を引き継ぐ名義変更か口座解約のどちらかが行われ、手続きは完了です。

預金残高が少額の場合、簡易的な手続きで済むことや、通常の口座解約の手続きが出来る場合もあります。

金融機関によって基準や手続き方法は異なりますので、あらかじめ確認しましょう。

■口座の凍結とは?

金融機関は、口座の名義人が亡くなったことが判明した時点で、すぐに口座を凍結します。

口座の凍結は、相続手続きが行なわれる前に勝手に引き出されることや犯罪に巻きまれるなどのトラブルを未然に防ぐために行われます。

口座の凍結を行うと、ATMでの出金・入金のほか、口座への振込や公共料金やクレジットカードなどの引き落としなど、口座からの入出金が全て停止します。

金融機関の担当者は、日々新聞のお悔やみ欄などをチェックしており、取引先の代表者などが亡くなった際には、被相続人からの連絡を待たずに口座を凍結する場合がありますが、それ以外の場合は、被相続人からの連絡により口座を凍結します。

口座の凍結が行われると、クレジットカードや公共料金などの引き落とし、振込なども全て止まるので、引き落としができなかったというケースがあるため、口座の入出金の履歴を確認する必要があります。

■必要書類は?

金融機関での手続きには以下の書類が必要です。なお、遺言書がある場合とない場合で、必要書類が変わるため、状況に応じて必要書類を確認してください。

   ◇   ◇

・相続手続の依頼書(金融機関所定のもの)

・通帳(証書)・キャッシュカード

・亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡まで)

・相続人全員の印鑑証明書

・手続きを行う人の証明書(運転免許証、マイナンバーカード等)

   ◇   ◇

▽遺言書がある場合

遺言書がある場合は、上記の必要書類に加えて以下の書類が必要です。

・遺言書

・検認調書または検認済証明書(公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言は不要)

・遺言執行者に関する書類

…遺言書がある場合、遺言執行者(遺言の内容に基づき手続きを行う人)を選出しているケースがあります。その場合は、遺言執行者の印鑑証明書や選任審判書謄本(家庭裁判所で遺言執行者を選任した場合に、その証明として発行される書類)なども提出します。

なお、遺言執行者の選出は必ずしも必要ではありません。

▽遺言書がない場合

遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割に関する話し合いを行い、その記録として遺産分割協議書を作成し、金融機関での手続きの際にも提出します。

遺産分割協議書は、法定相続分とは異なる遺産分割を行なう場合などに作成が必要なりますが、必ずしも作成が必須というわけではありません。

なお、相続人同士で遺産分割協議の話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所で調停・審判により遺産分割が決定するケースもあります。

その際は、調停調書謄本か審判書謄本を金融機関へ提出します。

■遺産分割前でも仮払いの引き出しは可能

名義人の死亡に伴って口座が凍結されると知ると、「名義人の預金を葬儀代に充当したいが、お金は引き出せないのだろうか」と不安に思われるかもしれません。

しかし、口座の名義人が亡くなってから、正式な相続手続きを行う前でも葬儀費用や入院費用などの仮払い(引き出し)が可能です。

引き出しできる金額は金融機関ごとに上限があり、①死亡時の預金残高×法定相続分×3分の1か②150万円のどちらか低い方の金額です。

仮払いを行なう際には、必要書類を準備し金融機関で手続きを行います。また、上限額を超えた仮払いを行う場合は、家庭裁判所への申し立てが必要です。

なお、遺言書の内容によっては仮払いできないケースもあります。また、仮払いを行うと、相続放棄が出来なくなる可能性もあるので注意しましょう。

■相続手続きの注意点は?

口座の名義人が亡くなってから、預金口座の相続手続きを行うまでの期限は設けられていません。

しかし、10年以上入出金などの取引のない口座は休眠口座となってしまい、その後の手続きが複雑になることや、口座管理手数料がかかってしまうこともあります。

また、相続手続きの際に提出する印鑑証明書や戸籍謄本には発行日の有効期限が設けられている場合があるので注意しましょう。

■専門家に手続きを代行してもらうことも可能

相続は、身近な人に万が一のことが起こって初めて手続きをする方が多く、詳細をご存じの方はそれほど多くありません。

しかし、銀行口座はほとんどの方が持っており、もしものことがあれば相続手続きは必要です。

いざいという時のために、流れや注意事項をあらかじめ知っておくと安心ですね。

なお、相続手続きは必要書類を揃えたりするなど、難しい場合は専門家(弁護士、司法書士、税理士)に相談したり、手続きを代行することもできますので必要に応じて依頼してみるのも良いでしょう。

(まいどなニュース/FPオフィス「あしたば」)

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