「どうする家康」で新たな明智光秀像演じる俳優・酒向芳 「さこう」の名字のルーツは

大河ドラマ「どうする家康」で、こわもての織田信長の重臣・明智光秀として登場している酒向芳。今まではちょっと違ったイメージの光秀を演じている。

明智光秀は、かつては博識で有能だが人望に欠けるというイメージで描かれることが多かった。これを覆したのが2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」で、長谷川博己の颯爽としたイメージと相まって光秀の印象は一変し、その株は一気に上昇した。

ところが、今回の「どうする家康」ではそうした光秀のイメージを根底から覆している。公式サイトにも「家康や秀吉のささいな仕草も見逃さない」「信長には媚びへつらう」と書かれており、相当嫌なヤツという設定だ。

実際、家康の言動にもいちいち絡んできており、本能寺の変後に味方する大名がほとんどいなかったことへの伏線なのだろう。

さて、「酒向」という名字は見たことがないという人が多いだろう。そして、「酒向」をどう読んでいいかわからない人も多いに違いない。「酒向」と書いて「さこう」と読むのは、初見の人にとっては難読の部類である。

実は、「酒向」は全国ランキングでは3000位あたりで「普通の名字」の範疇である。ただし、そのほとんどが岐阜県と愛知県にあり、とくに岐阜県南部から愛知県の尾張地方にかけて多い。なかでも岐阜県美濃加茂市に集中しており、美濃加茂市下米田町の諏訪神社は戦国時代に酒向与六が再建したといい、古くから同地の有力一族であったとみられる。しかし、両県以外には極めて少なく、珍しい名字となっている。酒向芳も岐阜県出身である。

また、酒向芳の64歳という年齢は光秀役としては年を取りすぎている、と思う人もいるだろう。しかし光秀の生年は、従来は享禄元年(1528)生まれとされていたが、近年は干支で一回り早い永正13年(1516)生まれではないかとみられている。

そうすると、信長よりも18歳年上となり、本能寺の変のときには67歳ということになる。今と違って当時の67歳は相当な老人で、酒向芳はむしろ若すぎるくらいの年齢ともいえる。

なお、「さこう」と読む名字は多いが、「酒向」が最多である。以下「佐光」「佐孝」「佐向」「酒勾」「佐甲」「左向」と続く。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。

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