実家にあった「マッカラン1946」 市場価格は500万円以上? 若き日の父が買い求めた超プレミアウイスキーの物語に胸が熱くなる

実家から出てきたお宝ウイスキーがTwitter上で大きな注目が集まっている。

「ちょっと前に実家に帰ったらヤバいウイスキー出てきたんだけどヤバいってレベルじゃねーぞこれ…」と投稿したのは東京・神楽坂にあるBar PálinkaのTwitter公式アカウント(@BarPalinka)。

件のウイスキーはスコッチウイスキー「マッカラン1946」。このウイスキーが造られたのは長かった第二次世界大戦がいよいよ終わった直後の時代。蒸留時に焚く木炭が入手できず、この年の蒸留のみピート(泥炭)を使っており、"シングルモルトのロールスロイス"と言われるマッカランには通常ないスモーキーな香りに仕上がっているそうだ。

80年近く前に作られたものだという希少性のみならず、時代背景からくるドラマ性や特性もふくめウイスキーファンにはたまらないこの「マッカラン1946」がなぜ実家に…。

Bar Pálinkaの投稿に対し、SNSユーザー達からは

「マッカランのオールドってだけでもヤバいのに…この年代はショット10万超えそう」

「過去に私が飲んだ最高額のウィスキー、、、」

「く、車が買えちゃう…」

「やっば!!これは…凄いですね…漫画で見てググってそっ閉じしたやつだ…」

など数々の驚きの声が寄せられている。

■投稿者さんに聞いた

Bar Pálinka・オーナーバーテンダーの松沢さんに話を聞いた。

ーーこのウイスキーをご覧になった時の感想を。このウイスキーを所蔵されていたのはどんな経緯が。

松沢:ネットや漫画などでとんでもないマッカランが存在しているということは知っていましたがまさか実家にあるとは思いませんでした。実家は長野県飯田市の「BAR時代屋」というお店で、父親がオーナーバーテンダーを務めています。

ーーお父さまは何と。

松沢:自分自身もバーテンダーなのでこのウイスキーの希少性はもちろん、どのような背景で当時の生産者が造っていたかを知っていました。感動と驚き、そしてそれが目の前にあるという興奮は隠しきれませんでした。父は一言「当時買っただけだよ」、と。希少性と高額なことからボトル棚には並べずに奥にしまって大切に保存してありました。

ーーこのウイスキーの価値、魅力について。

松沢:現在世界中でウイスキーが非常に人気が上昇しており、その中でもこのマッカランはスコッチウイスキーの中でも非常にファンが多く、特に値段が上昇している銘柄の一つです。市場では500万円以上になっているとか…。

しかしこのウイスキーに限らず全てのお酒は飲んでこそ価値があります。飲まれないことを願って造っている生産者はいません。もちろん高額で希少なウイスキーやブランデー、その他の蒸留酒、リキュールなどは開栓するタイミングは厳選したとしても、しっかりとご自身で嗜まれる、またはお店でご提供する方が多いと思いますが、飲まずにコレクションとして保管している方も多いです。

ーーそれほどの魅力が…。

松沢:父に見せてもらった時も既に7割ほど飲んである状態で、現在は全て提供し終えています。未開封の状態よりもしっかりと多くのお客様に提供している状態のボトルを見られたことの方が嬉しかったです。

そしてこのウイスキーが造られた当時の背景、その生産者の想いを考えるととても胸が熱くなります。1946年という第二次世界大戦の混乱の最中、材料不足の中でもなんとかしてウイスキーを造ろうと努力したのでしょう。その想いの詰まった珠玉の一本。時を超えた先人の努力と情熱の結晶そのものです。

ーーもう時代屋に行っても飲めないんですね…。

松沢:既に全てお客様へ提供をしてしまったため残っておりません。空き瓶ですら数十万円で取引されていると聞きます。空き瓶のコレクターがいらっしゃるのも知っておりますが、空き瓶に偽物を詰め替えて売り捌く粗悪な業者がいることも知っています。父のことですから、大事に思い出として保管するかご常連のお客さまにプレゼントしていると思います。

ーー投稿の反響へのご感想をお聞かせください。

松沢:父は強盗が入るんじゃないかと心配していました(笑)。「もうないから来ないでね」と笑いながら言っていました。ツイートが伸び始めた当日、すぐにお客さまから「話題になっているね」と話を振られたそうです。販売当時は今ほど目玉の飛び出る金額ではなかったので所持しているバーテンダーも多いと思います。今回この投稿がたまたま多くの方の目に止まっただけです。どのバーにも素敵な思い出の詰まったお酒があります。是非多くの方にバーの扉を開いて頂き、ただ酔っ払うためにお酒を飲むのではなく、その背景にある物語と共にグラスを傾けて頂ければとても嬉しいです。

そして 35年以上バーテンダーとして生きている父の背中を見習って自分も精進したいと思います。

◇ ◇

松沢さんが言うように、ウイスキーに限らずお酒はその歴史や込められた作り手の思いも一緒に味わうもの。筆者はまだマッカラン1946を口にしたことはないが、松沢さんのお話を聞いていて、いつかその魅力に触れてみたいと思った。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)

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