バイクに轢かれて亡くなった母猫の隣で、悲嘆にくれていた2匹の子猫 保護から10年…「いい子に育ってくれました」
バイクに轢かれて亡くなった母猫の隣で、ニャーニャー鳴いていた…。なっちゃん宅で暮らす2匹の兄妹猫は、そんな生い立ちを持つ。
人間でも耐えがたい悲惨な状況を乗り越えた2匹は、保護から10年経った今でも元気いっぱい。亡き母猫の分まで、生を謳歌しているようだ。
■轢死した母猫の隣で鳴いていた子猫を保護
2匹を保護したのは、なっちゃんさんの彼氏さん。2匹は近所の野良猫が産んだ子で、彼氏さんは帰宅中、母猫がバイクで轢かれるのを目撃した。
母猫は即死。近くにいた生後半年ほどの子猫2匹が、彼氏さんに着いてきた。暴れたり逃げたりせず、すんなり保護できた2匹を動物病院へ連れていくと、幸いにも外傷はなかったそう。
病院では寄生虫駆除の薬を処方してもらい、ノミ・ダニを駆除。2匹は同棲を開始した彼氏さんとなっちゃんさんのもとで育てられることになりました。
「ぶう」と「くう」と名付けられた2匹は、とにかく元気。
「ロフト付きの部屋だったのですが、はしごを駆け上がってロフトで走り回り、また、はしご降りて…と大運動していました」
2匹は、食欲も旺盛。食べ物を手に入れるのが難しい野良生活を送ってきたからか、なっちゃんさんのご飯に目をギラつかせることもあったそう。
「油断できませんでした(笑)。でも、好き嫌いしなかったので、その点では育てやすかったです。トイレも1回で覚えてくれました」
こうして始まった猫ライフの中、なっちゃんさんは不思議な経験をした。それは、ぶうくんとくっついて眠った夜のこと。夢にぶうくんとは違う、ハチワレの子が出てきたのだ。
「だから、パートナーに聞いたら、保護はできなかったけれど、もう1匹ハチワレの子いたのだと…。特徴を聞いたら、夢に出てきた子と一致していました。その子は4時間粘ったけれど、一定の距離以上近づくと逃げてしまうため、保護を諦めざるを得なかったそうです」
もしかしたら、もう1匹兄弟がいたんだよと、ぶうが教えてくれたのかも…。そう感じたなっちゃんさんは、ありがとうと思うと同時に、一緒に保護できなくてごめんねと、複雑な気持ちにもなったという。
■気持ちを察する優しいぶうくんとヤキモチ焼きなくうくんとの賑やかな日常
成長するにつれ、2匹には性格の違いが。ハチワレのぶうくんは素直でおっとりとした性格。
猫なのに、よく「ワンワン」と鳴く個性派にゃんこでもある。
対して、くうちゃんは甘えん坊で、ヤキモチ焼き。なっちゃんさんにくっついてないと落ち着かないくっつき虫で、構ってもらえないとスネて、しばらく無視を決め込むものの、30分も経たないうちに我慢できず、デレてくるのだとか。
「ぶうを撫でていると、くうが距離を置きながら、じーっと見て嫉妬します。逆に、ぶうはくうが撫でられていると、邪魔してはならないと遠慮をして離れますね」
2匹は、なっちゃんさんのお腹に乗るのが大好き。時には、くうちゃんが近くにいることに気づかず、お腹に乗ってきたぶうくんが「わ!いたんだ!」という表情を見せ、距離を置くこともある。
なお、知的なくうちゃんは自力でドアを開けた時、怒られないか確認するために、ぶうくんに先を譲る、ずる賢さも持ち合わせているそう。
「何度も、それで怒られているのにドアが開くたびに「わーい!」と飛び出してくるので、ぶうは単純なんだと思います(笑)ふたりとも、かわいい性格です」
■シニアの仲間入りをしたものの、まだまだ元気
保護から10年経ち、シニアの仲間入りをしたものの、2匹はまだまだ元気。水をよく飲み、ご飯をモリモリ食べ、飼い主である自分のことをずっと大好きでいてくれる2匹を見て、なっちゃんさんは「いい子に育ってくれた」と日々、思っている。
「父や母が遊びに来ると、2匹なりにもてなしているのか、くっついてくれます。気遣いもできるとは、本当にいい子だなと思いますね」
そう語るなっちゃんさんは、より多くの人に保護猫、保護犬を迎えるという選択肢を視野に入れてほしいと願ってもいる。
「たくさんの子との出会いで、この子だ…と思う子に出会えることが、きっとある。その出会いを大切にしてほしいです」
なお、この10年で、2匹を保護した彼氏さんの実家にも変化が起きたよう。彼氏さんの実家ではちゃすけくんという猫が暮らしており、新入り猫のリリィちゃんがやってきて来た時にはジェラシーを焼く姿がSNSで話題になった。
だが、その後、ちゃすけくんは徐々にリリィちゃんを受け入れるように。自宅では親分気分でちょっぴり背伸びをして新入り猫と遊ぶちゃすけくんと、そんな兄貴を慕うリリィちゃんの交流が見られるようになった。
残念ながら、ちゃすけくんは老衰により、2021年10月に天国へ。遊んでくれるお兄ちゃんを失ったリリィちゃんは彼氏さんのお母さんにべったりな甘えん坊に豹変。
おもちゃを近くに持ってきてポトッと落とすことで、遊んでアピールをしたり、犬のように、おもちゃを投げるととってきて、飼い主の近くに落としたりするようになった。
「指しゃぶりも増え、寂しくなると『抱っこして』と体に乗ってきて、指をしゃぶるようです。1歳超えても、まだまだ赤ちゃん猫です」
年月と共に変化し、深まってもいく、猫と人間の関係性。なっちゃんさん宅でも、この先、どんな変化や微笑ましい交流が見られるのか楽しみだ。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)