がんと宣告され、愛猫と突然の別れ…死を受け入れられなかった飼い主が、ペットロスから立ち直った言葉とは?

「ミーちゃんのことは一生忘れられません」

8歳で虹の橋を渡った黒白猫のミーちゃん。発達障害を抱え、生きづらさを感じていたAさんの心の支えでした。

ミーちゃんの異変に気付いたのは、6年ほど前。突然ご飯を食べなくなったのです。同居していたお母さんから「ミーちゃんの様子がおかしい」と連絡が入り、出先から急いで帰宅したAさん。少し元気がなさそうなミーちゃんを、かかりつけの動物病院に連れて行ったところ、獣医師から「乳腺がんのステージ4。あと2カ月生きられるか…」と余命宣告。その突然の宣告を受け止められなかったAさん。すぐにインターネットでがんの専門医がいる動物病院を調べたといいます。

「ミーちゃんを死なせたくなかった。だから、がんの専門医がいる病院を探し、見つけたんです。貯金していた銀行の通帳を持って行って、『この金額でできる治療をしてください』とお願いしました。先生は分かりましたと、勧めてくれたのが投薬治療。『薬でがんが消えることもある』とも言われ、一縷(いちる)の望みにかけていました」

■乳腺がんで余命2カ月と宣告された愛猫 貯金をはたいて投薬治療を始めたが…

毎日、粉薬を水に溶かして注射器でミーちゃんに飲ませていたというAさん。精のつく青魚や栄養価のある猫缶を買ってきたり、必死に食べさせていました。すると再診の際に「がんの影が少し消えている」と言われ、希望の光が見えたことも。しかし、それは一時的なことでした。そのうち肺に水が溜まってしまうなど症状は悪化、がんが発覚してから4カ月後にミーちゃんは天国に行きました。

「ミーちゃんが天国に行った日は仕事に出てしまったのですが、母によると、ずっとテレビと壁の隙間に入ったまま出てこなかったので、最期を迎えると察した母が私の椅子の下に連れて行ったところ、静かに息を引き取ったそうです。仕事から戻り、ミーちゃんの亡骸を見た瞬間、たくさん涙が出ました」

その日の夜、冷たくなったミーちゃんと一緒に眠ったAさん。翌朝、先住猫のお墓の隣に穴を掘ってミーちゃんの亡骸を埋めました。そして買ってきたマリーゴールドの鉢植えの花も、そっと植えたそうです。

          ◇  ◇

■愛猫との出会いは、生後3カ月の子猫のとき ゴロスリの甘えん坊さんだった

ミーちゃんをおうちにお迎えしたのは、2009年11月。お母さんの友人から譲り受けた、生後3カ月の子猫でした。

「一度別の里親さんのところにいたのですが、先住猫たちと相性が悪かったのか、なじめなかったらしくうちにやってきたんです。お迎えしたときからゴロゴロスリスリ。私の膝に乗ったりと、とても人慣れしていました。当時、家には10歳を超えていた先住猫のハレルヤがいました。最初はシャーと威嚇していたミーちゃんでしたが、そのうちハレルヤよりも高いところに登ったりして…子猫なのにハレルヤよりも『以前からいたのよ』みたいなふるまいをしていましたね(笑)」

しかし、人慣れしていたはずのミーちゃんがお迎えして間もなく家からいなくなってしまいました。Aさんたち家族は警察や保健所に届け出たり、近所に迷い猫のポスターを貼ったりと情報を求めながら必死に探したといいます。

「近所の小山にいつも夕方になるとくる、との情報が入ったんです。そこで、その小山に餌を入れたお皿を置いたら姿を現したものの、すぐに逃げ去ってしまって…なかなか保護できませんでした。そして1カ月ほど経ったある日、ミーちゃんがいきなり自分から家に戻ってきて。鳴き声が聞こえたなと思ってドアを開いたら、喜んで私の膝に乗ってきたんです」

一時は”家出”をしてAさんたちを心配させたミーちゃんでしたが、それからはずっと家を離れることなく暮らしていました。Aさんいわく、ミーちゃんはこれまで飼っていた歴代の猫の中でもかなりの甘えん坊さんとのこと。特にAさんに懐いていたそうです。

「土日の休みの日に仕事で疲れて寝ていると、寝ているところに乗っかってきて顔の辺りを爪で軽くちょんちょんしたり。それでも起きないと、机にあるパソコンのマウスをわざと下に落として音で起こされました。私が音に驚いて起きることをいつのまにか学習しちゃったようで…とっても構ってちゃんでした。

また母と親子げんかをしたときは、自分の方にきて膝にスリスリしたりと私をかばうような仕草をしてくれたりと、いつも私の味方をしてくれましたね。それを見た母は『ミーちゃんはそっちいくの?』なんて、やきもちをやいていました」

■飼い主「死んだ後にまた会えるね」 愛猫との再会を信じてまた歩き出した

そんな愛おしかったミーちゃんと突然の病でお別れしてしまったAさん。しばらくはミーちゃんのことを考えると心が締め付けられるように痛く、辛かったそうですが、ある言葉との出会いで前向きな気持ちになったといいます。

「ミーちゃんに似た猫がいたこともあり、あるペット供養をしているお寺に足を運んだんです。そこのお寺に『倶会一処(くえいっしょ)』と書かれていて。その言葉は『死んだ後に阿弥陀仏の浄土で再会する』という意味だったと知りました。またミーちゃんと会えるのだと思い、その言葉に救われました。

今は母が住む実家から離れてグループホームで暮らしていますが、ペットが飼えないのでたまに猫カフェに行ったりして。ミーちゃんに似た黒白の猫ちゃんがいるとうれしくなりますね。そして、ミーちゃんを思い出すたびに8年間過ごした日々に感謝し、心の中で『また会おうね』とつぶやいています」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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