前足で体を引きずり、必死に逃げようとする姿に…「このまま放っておけるのか?」 車にはねられ下半身麻痺の猫を迎えて
7匹の猫と1匹の犬との賑やかな暮らしを楽しんでいるのは、Shimarisuさん。愛猫の中には交通事故で下半身麻痺となった、ポンちゃんがいる。
■車にはねられた猫を駐車場で発見
ある夜、Shimarisuさんの旦那さんは自宅の駐車場で横たわっている猫を発見。その猫は前足で体を引きずりながら、必死に逃げようとしていた。
自宅のすぐ前は車が行き交う道路。車にはねられ、後ろ足が折れた猫なのだろうと思った。当時、Shimarisuさんは保護猫4匹と犬1匹と生活中。正直、保護を迷った。
「ここで手を出したら、何があっても最後まで見なきゃいけないと主人に伝えました。でも『このまま放っておけるのか?』と聞かれ、このままにしておけるわけがないと思い、すぐ夜間診療をしている動物病院に行きました」
体から出血は見られていなかったが、ポンちゃんの容体は深刻。最初の診察で、背骨が折れていることが分かった。そこで、入院治療をすることになったが、翌日、動物病院からの連絡で内臓から出血があることも判明。このまま様子を見るか、手術をするのか選択を迫られた。
Shimarisuさん夫婦が下したのは、手術を受けてもらうという決断。破裂していた脾臓を摘出した後は10日ほど入院し、無事退院。ポンちゃんという名前を貰い、Shimarisuさん宅で暮らすようになった。
ポンちゃんは背骨が折れ、神経を損傷してしまったため、自力でトイレができず。排尿の感覚がないようで尿が垂れ流し状態になったため、Shimarisuさんはペットシーツをケージに敷き詰め、ポンちゃんが少しでも快適に暮らせるように工夫した。
だが、またもや悲劇が。ポンちゃんは頻繁に尿路結石を起こしたり尿道を詰まらせたりし、何度も入退院するように。一時は腎臓の数値が危険になり、担当医から「覚悟をしてください」と言われた。
しかし、その後、担当医からの提案により、尿の出口を女の子の形にして尿道を広げる手術を受けたところ、ポンちゃんに変化が。
「手術後は自力で排尿ができなくなり、毎日カテーテルとシリンジで尿を吸い出すことになったので、手術した意味がないのでは…と不安でしたが、2ヶ月ほど経つと段々、自力で排尿できるようになり、尿道が詰まることがなくなりました」
■前足で歩いて壁で爪とぎ!下半身不随でも“できること”はたくさんある
現在も利尿剤は服用し続けているものの、ポンちゃんは至って元気。日中は、体が痛くならないようにクッションを敷いたケージの中で過ごしてもらっている。
「部屋に出る間は、オムツをつけてもらっています。ズレて脱げないよう、介護用のオムツカバーも購入しました」
トイレでの排泄は難しいため、ケージの中に敷き詰めたペットシーツは、こまめに交換。自力でグルーミングできる範囲が少ないポンちゃんを思い、シャンプーやブラッシング、耳掃除も行っている。
だが、ポンちゃんにはできることもたくさんある。例えば、前足だけでどんどん進め、爪とぎは壁でガリガリ。
「ブラッシングが大好きです。猫じゃらしで遊ぶこともあります」
撫でられることも好きなポンちゃんは、「もっと触って」と腕にしがみついてくることも。きゅるんとした瞳で見つめられるたび、Shimarisuさんはときめいてしまう。
「ジブリのメイがトトロの顔をコショコショした時にヒゲが動くような感じで、ポンちゃんも触るとヒゲが動く。とてもかわいいです」
多頭飼い生活を送る上で、Shimarisuさんが意識しているのは「みんなを平等に構うこと」。平和な多頭飼い生活の秘訣は、他の子にヤキモチを焼かれないよう、甘えん坊さんはこっそり密室で構うことだという。
「周りの人からは、『大変そう』や『猫屋敷』など色々な言葉をいただきましたが、みんな縁があって我が家に来た子。人にそれぞれ個性があるように、猫にも個性があります。猫は私の働く原動力で、帰宅後の癒しです」
正直、金銭的には厳しいところがあるが、それは猫たちを助けた時から覚悟していたこと…。だからこそ、障害があっても、少しでも長く一緒に楽しく過ごしたい。
そう語るShimarisuさんの深い猫愛は、愛猫たちや愛犬にも届いているはず。命を紡ぐことができたポンちゃんは今日も甘え、自分らしく生き、「今」を楽しんでいる。
(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)