「優先エレベーター」を若者ら占有 満員で5回乗れなかった車いすの難病女性「譲ってもらえませんか?」…返ってきたのは舌打ちと心ない言葉
車いすユーザーの女性が、健常者で混み合う優先エレベーターを譲ってもらうようお願いしたところ、「優先ってなんやねん」「みんな待っとるんじゃ」と心ない言葉で拒否されました。
国指定難病を患い、電動車いすに乗るaya(@ponpon04ponpon)さんは、JR大阪駅直結のファッションビル「ルクア大阪」で優先エレベーターを待っていました。体が不自由な人が優先利用するエレベーターは、車いすやベビーカーのマークが大きく描かれ、「お身体の不自由な方におゆずりください」と書かれていましたが、若い客はお構いなしで優先エレベーターに乗り込みます。
ayaさんは混み合う優先エレベーターを5回見送った後、勇気を振り絞って「歩ける方はエスカレーターを利用して譲ってもらえませんか?」と申し出ましたが、返ってきたのは舌打ちと心ない言葉でした。
なぜ4基並ぶエレベーターのうち、一つしかない優先エレベーターが健常者に占有されるのでしょう。ルクア大阪とayaさんに聞きました。
■勇気を振り絞って声を上げたら…「みんな待っとんじゃ」
ルクア大阪は2011年、JR大阪駅前に開業した国内最大級の駅型商業施設です。地上10階、地下2階建てで、最上階の10階と最下階の地下2階に飲食店が集まり、多くの人でにぎわっています。
ルクアのHPには「ファッションやトレンドに敏感な働く女性をメインターゲットに、『日常生活における手の届く贅沢』『高感度で洗練されたライフスタイル』を提案」「“ここにしかない価値”を提供する、梅田地区でNo.1のファッションビルを展開します」と紹介しています。
今回、問題となったのは4基並んだ御堂筋側のエレベーターです。体が不自由な人たちの利用が優先される「優先エレベーター」は右端に位置し、ピンク色のポールや黄色いベルトで存在が強調されていました。
ーーエスカレーターがあるのに、優先エレベーターを使う人が多いんですね。
ayaさん「エスカレーターはありますが、階数が多いこともあり、エレベーターを使用される方が散見されます」
「階数が多く、若者が集まる施設は、エレベーターを使う健常者が多いように感じます。特にルクアは飲食フロアが最上階と一番下の階にあるので、エレベーター利用者が多いと感じます」
ayaさんは国指定難病「エーラス・ダンロス症候群」で、関節や皮膚、血管が弱くなっています。常に疲れやすい「易疲労性」や太ももなどの傷口がすぐに開く「難治性潰瘍」に悩まされ、反復性の脱臼や関節痛、逆流性食道炎、便秘と下痢を繰り返す機能性腸障害もあり、移動には電動車いすを使っています。
ーー勇気を出して優先エレベーター利用を求めたら、拒絶されました。
「舌打ちをされた方は20代の男性の方で、お一人で乗られていました。『優先ってなんやねん』と言われた方は20代くらいの男性の方で、カップルで乗られていました。『みんな待っとるんじゃ』と言われた方は40代~50代くらいの方で家族で乗られていました」
「以前、似たようなツイートをした時に、『車いすの人が何回もエレベーターを見逃し、待っていることなんてわからない。自分から声に出して言えばいいじゃないか』というリプライが届きました。だから今回初めて声に出してみましたが、このような結果になりました。正直、怖いが1番の気持ちです。勇気を出して声にしたら、嫌味を言われる世の中に恐怖を感じました」
ーー優先エレベーターなのに、車いすや体の不自由な人が利用しにくい状況です。
「歩ける方はエスカレーターもエレベーターも利用できますが、車椅子の人にとってはエレベーター一択です。また、車椅子ユーザーは、途中階の移動もエレベーターを使わなければならないため、エレベーターを使えなければ施設を利用できません。
エレベーターが満員で乗れないと、一度なら『仕方ないな』と思いますが、何度も見逃すとなると『疲れた』『またか』と落胆する気持ちが大きくなります。
車いすユーザーのほとんどの人が声を上げずに待っていたり、近くの店員さんに声掛けをお願いしたり、目的階と反対でも空いていれば乗り、最上階や1階で折り返して、目的階まで行く方もいます」
◇ ◇
記者もルクア大阪のエレベーターに乗ってみました。10代から30代の若いカップルや家族連れが多く、優先エレベーターでもどんどん乗り込んでいきます。優先エレベーター内には「必要とされているお客様が乗られる際はお譲りください」と掲示があり、「エスカレーターもご利用ください」といったアナウンスも行われていましたが、音量は靴音にかき消されるくらい小さく、掲示に目を向ける人はいませんでした。
ルクア大阪を運営するJR西日本SC開発に二つ質問しました。
1:優先エレベーターを障害者たちが優先利用できない状況をどう思うか。
2:障害者や体が不自由な方が優先してエレベーターを利用できるよう、改善策を検討するか。
JR西日本SC開発からは「エレベーターの扉全面に優先エレベーターである旨のご案内、またエレベーター内でのアナウンス放送などできる限りのご案内をさせていただいておりますが、ご指摘いただいた状況を踏まえ、すべてのお客様が心地よくご利用いただけるよう、今後とも努めて参ります」と回答がありました。
(まいどなニュース・伊藤 大介)